童貞とカリスマ

さてと敵をぶっ殺したらやることがある。そう、略奪だ。


「ポポン、この集落にある物は南の集落のものになる。そうなったら女は全部ボスのものだ。後悔したくなかったら、今のうちにやっときな」


俺はまだ尻餅をついたまま動かないポポンに対してケツを蹴り上げた。


「痛て…て…いいんですか!?」


ポポンはケツを擦りながら、ガバっと顔を上げて俺の方を見つめた。


「おう、俺は武器庫と食料庫を見とくからな」


「やったあぁあぁぁ!!童貞卒業だああ!!」


ビビって腰が引けていたポポンも女を抱けるとなった途端、女が捕まっている収容所に向かって走り出していった。


俺は集落の東側にあるボスの屋敷の方を見る。あそこにも女が二人捕まっていると聞いた。そして屋敷の隣には食料庫と武器庫になっている小屋がある。


俺は武器庫の小屋の扉を吹き飛ばすと、中を物色していく。


「期待はしてなかったけど…予想以下だな」


武器庫の中にはおそらく人間から奪ったと思われる装備が乱雑に置かれていた。


手入れもされなくなった武器の多くは錆びてしまっている。だか一つだけ気になるものがあった。


「これがダリアが言っていた銃か」


俺はよく年長者のダリアから色んな話を聞いていたのだが、その話の中で人間が銃らしき武器を使っていると思われる話を聞いたことがあった。


たしかダリアから聞いた話は、雷のような音を鳴らし,小さい石礫を飛ばす武器と言っていた。おそらくは銃のような武器を使っていると予想はしていたか、やはりそうだったか。


俺は地面に捨て置かれていたピストルを拾う。海賊映画に出てくるような前装式の火縄銃だ。弾も火薬もないが、いつか使える時が来るかもしれない。


これは俺が貰っておこう。腰に巻いてある小さな麻袋にピストルをしまった俺は、他の武器も確認していく。大体錆びてるか刃がかけているな。


「錆びてなくて…刃がかけてない奴……は…ない…か…」


しっ…渋いぃ。

ゴミしかねぇよこれ。

まぁしょうがない。ゴブリンが持っている武器なんぞはこんなもんか。今の身体能力なら素手でも戦えるだろうし、問題ない。


俺は武器庫から出ると、女がいる収容所に向かった。収容所の中に入るよ女と男がまじりあった後特有の匂いが蔓延していた。


「あぁあぁぁぁ⁉でっ…でっ…出ちゃうぅぅぅうよぉぉぉおおお⁉⁉」


ポポンってそんなこと言うんだね。そんなに童貞卒業がうれしいのか…そりゃ嬉しいか。


「………おーい」


俺はポポンの後ろから声をかけた。だがポポンは女の足を持ちあげて、無残に腰を打ち付けていく。肉と肉が弾ける音にかき消され、俺の声は野獣とかしたポポンには届かなかった。


「ふー…ふー…このメス豚があぁ!!さあっ…見せてみろぉ!!俺の性奴隷になる…お前の本当の姿ぉぉぉおおお⁉⁉」


「あちゃ~」


訳の分からないことを言いながら、腰を打ち付けるポポンに俺は手をオデコにあてるしかなかった。なんで俺が女の弄ばれた◯門と、ポポンの汚いケツを見てなくちゃいけないんだ。


「あっ…ぅ?……あぅ…うぅうぅ………よ、良い……」


どうやらフィニッシュしたようだ。力尽きてそのまま女の体に倒れそうになったポポンの肩を俺は掴む。


「そんなに良かったか?」


肩を掴まれ俺の声が聞こえたポポンは、ハッと目が覚めたように俺の方を振り向いた。


「うっ?…うわぁ⁉いきなりなん…ですか…」


「はっ、すっかり後輩口調だな。ポポンの兄貴」


俺がニヤつきながら嫌味ったらしく名前を呼ぶと、ポポンはムスっと顔をゆがめながらも、恥ずかしそうにして、巨大な陰〇を手で隠した。


いや、隠しきれてねぇよ。


最後まで引っかかっていたプックリ膨れた亀◯がスポンと抜けると、女から小さなうめき声が聞こえた。


「…ぁ…ぅ……」


「卒業おめでとさん」


俺が嬉しそうに拍手をすると、緑色のポポンの顏は真っ赤な亀頭〇と同じ色に染まっていった。


「見てたんですか…酷いですよダムさん」


「俺はガルクだよ。ダムは偽名だ」


「え?そうなの?」


俺は本名を名乗ると、ポカンとアホ面を浮かべるポポンを置いて収容所を後にした。


「あっ待ってくださいよガルクの兄貴!」


「おいおい、もう後輩が板についてきたか?」


ポポンは俺の軽口に乗らず、不安そうな表情を浮かべた。


「これからどうするんですか?里に戻るんですか?」


「ん?そうだけど…まぁ北のボスの頭と心臓以外は持っていかないけどな。二人だけじゃそんな大した物資も運べないだろうし。みんなとボスに報告して、全軍でこの集落の物資を運べばいいさ」


取りあえずは里に戻ろうぜ。そう言いながら俺は死んだボスのもとまで駆け寄ると、首を切り落とし、心臓をえぐって取り出した。


そして里の門の方へ向かおうとしたが、ポポンの足音が聞こえない。後ろを振り向くと、ポポンは迷うようなそぶりを見せている。


「どうした?」


「俺はぁ…俺はぁ…何年もあの里に居たから分かりますけど、マリクリは一度里を出ていった者は許しませんよ。俺たち下っ端の命なんざなんとも思ってないくせに…自分を裏切った者は絶対に許しません」


ポポンの話しを聞いて俺は否定はできなかった。俺が生きてきた中で里を出ていった者は見たことはなかったが、あのマリクリの性格ならポポンの言う通りかもしれない。それにポポンは俺より5年も年上だ。きっと俺が知らないマリクリの話しも知っているだろう。


「そうなったら俺が守ってやるよ。俺は結構ボスに気に入られてるからな。流石にこの集落を潰した俺の願いの一つや二つぐらいは聞いてくれるさ」


「そう…ですかね?」


それでもポポンは不安そうだ。


「まぁそんなに嫌なら置いてくけど」


俺はそう言い残して集落の門をくぐった。


「あっ!待ってくださいよ!俺一人じゃこんな森生きてけないっす!」


「だったら俺について来るんだな」


俺がそう言うとポポンは耳をたらしながら俺の後ろをついて行く。北のボスの頭と心臓を失いたくないため、俺たちは木の上を伝いながらゴブリンの優れた嗅覚で敵を避けて南の集落にまでたどり着いた。


木から地面に降りると、里の近くで芋の手入れをしていたゴブリンと目が合った。


「あっ!おい!!皆あぁ!!リーダーが帰って来たぞ!!」


俺の帰還を知らせるゴブリンの声に、静かだった里は急にあわただしく物音が聞こえ始めた。わらわらと声を上げながらゴブリンたちが里の門をくぐって俺の所にまで駆け寄っていく。


そして俺は一瞬で里のみんなに取り囲まれた。ボムやバロ、ダリアも驚いた表情を浮かべながら俺に話しかけて来た。


「リーダー!生きてたんですか!!」


「北の奴ら倒したんですか⁉」


ボムとバロの質問に俺は握っていた頭と心臓をみんなの前に見せびらかした。


「じゃーん!北のボスの首と心臓だ!!」


おれがそう言うと俺を取り囲んでいたゴブリンたちが一斉に後ずさりしながら叫び声をあげた。


「「「えええええええ⁉⁉北のボス⁉⁉」」」


「おう、とりまぶっ殺してきた」


俺が何ともなさそうに言うと、ゴブリンたちは目を輝かせながらまた俺を囲み始めた。


「かっカリスマだ!」

「すげえよリーダー!」

「もうアンタがボスになってくれ!」


ゴブリンたちは思い思いに俺を称賛しながら、俺の腕や肩、足を掴み始めた。


「ん?え?なに?」


こいつら何しようとしてんだ。そう思った時には俺は宙に浮いていた。


「わっしょい!わっしょい!」


ゴブリンたちは落ちてきた俺の体を手を伸ばして支えると、また俺を持ちあげて上に投げ飛ばした。


なんか急に胴上げ始まった。


困惑しながら乱高下する集落の門を見つめていると、聞いたことのある声が聞こえた。


「返ってきたかガルク」


その声を聴いたとたん、俺は地面に投げ出された。胴上げしといて急に放り出すとはどういうことだコイツら。


むかつきながら俺を囲っていたゴブリンたちを見渡すと、ゴブリンたちは気まずそうな顔を浮かべながら、一点に門の方を見つめている。


俺もそちらの方に頭を上げると、そこにはこの集落のボスであるマリクリの姿があった。


「ボっボス⁉」


俺は急いでボスの元に駆け寄り地面に膝を折り曲げた。


「うむ、お前のその忠義は良いことだ。だが約束の三日から一日経っている…てっきり俺を裏切って、北の里に寝返ったのかと思ったぞ」


なぞに核心めいた発言をしたマリクリに俺はすこしたじろいてしまったが、すぐに平常を取り繕い、手に持っていた頭と心臓を差し出した。


「これは?」


頭と心臓を受け取ったマリクリは俺にその所在を問いかける。


「北の里のボスのものです。難癖をつけられて襲われたのでぶっ殺しました」


俺の返事にマリクリは目を見開いて、左足が後ろに下がった。


「まさかっ…お前がやったのか?」


あれ?俺今そう言ったよね?


「え?…えぇ」


俺が困惑しながら返事を返すと、マリクリはもっと困惑しながら頭を持ち上げてマジマジと見つめていた。


「顔面が潰れて分からんが……忘れるはずがない…確かにこの臭いはアイツのものだ」


どうやらマリクリと北のボスは知り合いらしい。確かに北のボスもマリクリの名前を知っていたし、マリクリの言い方的に両者には何かしらの因縁がありそうだ。


「裏切りの果てに俺の配下に殺されるとは…なんと情けない奴だ」


マリクリはそう呟くと、北のボスの頭と心臓を一口で飲み込んだ。


「でかしたぞガルク。お前にはなにか褒美を与えねばな……」


どうやら北のボスはマリクリを裏切ってあの里を作ったようだ。俺が生まれてくる前に北からこの里に襲撃があったのも、マリクリと北のボスとの間に因縁がったからか。


マリクリは北のボスの頭と心臓を食って満足したのか、笑みを浮かべながら顎をさすり、俺への褒美を考え始めた。


「俺は忠義に厚い部下には報いる男だ…なにが…お前にふさわしいか……」


マリクリは顎をさすりながら考えに耽り始めた。そして数分後、ついにマリクリが口を開く。


「よし…お前にふさわしい褒美を思い付いた」


「はっ!ボスからの褒美であればなんでも有りがたく頂戴したします」


「うむ、謙虚なお前には恐れ多いことだろうが…お前には土地を授けよう。この里から北と西の森をお前が治めるのだ」


てっきり下らない役職名か女でも与えられるかと思ったが、予想外の答えに俺はもう一度聞き返してしまった。


「北と西の森でございますか?」


「うむ、この里から北と西にはまだ我に服従しない同族の集落がいくつもある。奴を討ち取ったお前の力なら、それらも討ち取れるだろう。北と西の里を侵略し、お前は俺の外臣としてそこの土地を治めるのだ」


なるほどね。こいつ意外と頭回るな。

要は北のボスを簡単に殺した俺に恐れているんだ。もしくは警戒しているかその両方か。残酷なマリクリより、里を豊かにして温和な俺の方をみんなが担ぎ上げているのも知っているだろうし、俺が里に居れば自分の立場が危うくなると思ったか。


あっそう……怖いんだ!?この俺がっ。


それで莫大な土地を与えるという名目で、俺をこの里から追い出すと…。ていうかまだお前のモノでもない土地なんだがな。ものは言いようか。


「はっ!畏れながらその大命受けさせていただきます。必ずや、ボスに仇名す者たちの首を討ち取って見せます」


俺の返答にマリクリは笑みを浮かべ、満足そうに大きく頷いた。


「よくぞ言った!流石は我らの英雄よ!!…それでガルク、話はそれるが北の里には人間の女は居たか?」


たっく性欲お化けが。どうせ半分寄越せとか言い出すぞ糞が。俺は内心舌打ちしながら、ただ地面を見つめながらマリクリの質問に答えていく。


「はっ!四人います」


「ほう…四人もか」


予想よりも多かったのか、マリクリは俺の方を見つめながらまた考えるようなそぶりを見せた。


「……なら…半分はこちらによこせ」


「はっ!」


俺がすぐに返事をすると、マリクリは余程うれしかったのか口から笑みが漏れだしていく。


「ふふふ……それと…俺がそうした様に、お前も一人で里を侵略し、大きくしていくのだ。この里の仲間を連れていくことは許さん」


引き抜き禁止か。いつもは食いもんと女の事ばかりなのに。こういう時だけよくよくと頭が回るもんだ。


「はっ!必ず俺の手一つで里を治めて見せます」


俺が返事を返すと、満足そうにうなずいたマリクリは、今度はこの様子をなんともいえない表情で浮かべていた仲間たちの方へ向いた。


「ふふふっ。なんと勇敢な男よ…皆の者!!英雄の凱旋だ!!今夜は宴だぞ!!女も自由に抱いていい!!さっさと準備に取り掛かれ!!」


そのマリクリの声にゴブリンたちは嬉しそうにお互いの顔を見つめ、一斉に歓声の声を上げながら里の方へ走っていく。


なんて現金な奴らだ。


俺は里の方へ戻っていくみんなとボスの背中を見つめていた。するとボスやみんながすぐに俺の方を振り返る。


「どうした我らの英雄よ。お前を祝う宴だぞ」


黙って動かない俺を見て、マリクリが訝し気に俺の方を見つめてきた。周りのゴブリンたちも不思議そうに俺を見つめる。


「ボスの言う通り、リーダーが来なくちゃ始まらないですよー!!」

「早く一緒にシャブして女抱きましょうぜ!」

「早く早く!!」


仲間たちが俺の方に手招きしながら騒ぎ始めると、黙って俺の方を見つめていたマリクリがゴブリンたちを制止した。


「まてお前たち……ガルク…その後ろにいつ奴は誰だ…?」


「あっ確かに…」

「見ない顔だ」

「よそ者か?」


マリクリもみんなもやっとポポンの存在に気付いたらしい。みんなに訝し気に見つめられたポポンはすぐに俺の背中に隠れた。


「ひぃぃ…殺される…」


「まて…大丈夫だ……」


俺の背中の後ろで必死に震えるポポンを俺は宥める。前を向いて、俺はマリクリに向かって説明した。


「こいつは北の里で出会ったポポンってやつですよ。話がよく合うんでコイツだけ生かして連れて来たんです」


俺が誤魔化してポポンの素性を説明すると、ダリアが俺の方を指さしながら「あっ」と声を上げた。


「ポポンってあのポポンか⁉食糧庫からボスの食いもん盗んで…殺されそうになったヤツ……どっかに逃げ出しての垂れ死んだのかと思ったが…そうか……それで北の里に逃げたのか…」


するとダリアの話しを聞いたマリクリが俺の方へと歩き出した。


あ、終わったわ。

悲報、ポポン処刑確定です。


「ボス、待ってください。こいつがいなかったら俺は北の里に入れなかったんです。俺がボスを裏切った北の里のボスを殺せたのも、こいつのおかげです」


俺が両手を前に出してマリクリを制止しようと声をかけると、マリクリは黙って俺の方へ進み続けた。


「なんだガルク…俺に歯向かう気か?」


「いえ…そんなことは……」


「膝が高いぞ。さっさとそこをどいて地面に頭を下げていろ」


どうやらマリクリは俺の声に耳を傾けるつもりはないらしい


「言ったはずだ。俺は忠義に厚いやつには報いると。だが裏切者は絶対に許さん」


どうしてそんなに裏切者が許せないんだ?過去になにかトラウマでも抱えているのか?


「どうした?早くそこをどけ…誰もお前を裏切者として死ぬ姿は見たくないはずだ。我らの英雄よ」


マリクリの脅しとも取れる勧告に俺は黙って地面を見つめる。後ろでポポンの呻き声がどんどん大きくなっていった。


そんなに怖いなら俺を盾にしてさっさと逃げればいいものを。そんなに俺の背中が信用できるのか?ポポン。


「……三秒以内にそこをどけ…じゃなければお前も殺す……三…二…一……」


マリクリの巨大な腕が数字を数えるごとに上に上がっていく。そして振り上げた拳が俺の頭上にまで落ちる寸前――俺はやっと溜まっていた息を吐き出した。


「はぁー………弱えくせに調子乗んなよ木偶の棒」


「んん?なんだと…?」


思いもしなかった俺の発言に、マリクリはポカンと口を開けながら振りかぶった拳を止めた。


「ゴブリンは序列社会なんだろ!だったら俺より弱いお前が調子乗んなよ!」


俺がそう叫ぶと、ついにマリクリが笑い出した。


「……ふっ…ふふ…ふははははははっ!!狂ったか!ガルク!!」


マリクリの拳が俺めがけて飛んできた。俺はすぐに後ろに居たポポンを突き飛ばすと、飛んできた拳を左に避ける。


「ゴブリン部族法第一条!!」


受け身を取りながら立ち上がり、そう呟いた俺の言葉にマリクリの体がまた止まった。


「お前…まさか……」


「集団を率いる主導者は、その座をかけた決闘を申し込まれた際、それを拒むことはできない。この決闘を拒む者はその座を挑戦者に譲らなくてはならない」


俺が今説明したゴブリン部族法とは、ゴブリン族に古くから伝わる民族普遍の法律の事だ。言い伝えではゴブリン族の始祖である鬼神が人間に子を孕ませ、そこで生まれた三つ子たちに授けた教えだと言われている。


この話は俺を含めて、生まれてきたゴブリンたちが一番最初に先人たちから教わる話の一つだ。


「アンタもこれで前のボスから権力を奪ったんだろ?」


「……ふっ…生まれて半年のガキに舐められたもんだ…いいだろう……その決闘受けてやる」


マリクリは笑みを浮かべながら体を丸め始めた。すると周囲の地面が突如揺れていく。そしてマリクリを中心に周囲に地割れが起こり、宙に浮きあがった土や石がマリクリの体に集まっていった。


土や石が腕や脚に巻き付き、全身を覆っていく。


「ゴブリンなんぞ簡単に滅ぼせるモンスターが跋扈するこの森で、どうして俺が20年も生き残って――」


石のかけらがマリクリの顔面を覆いはじめた瞬間、俺は一瞬で飛び上がり、上からマリクリの顔面を殴りつけた。


「ぶっ⁉」


鼻と前の牙が折れたマリクリは地面に尻もちをついて倒れた。すぐに俺はマリクリの胸に座ると、その顔面を何度も殴りつけていく。


「戦いの、最中に、おしゃべりは、禁物だぜ!!」


「が⁉」


「っ⁉」


「ぐ⁉」


なんとか体を起き上がろうとしても、俺の首を掴んでも、地面に足を突き刺してマリクリの首を固定した俺を持ちあげることは出来ない。


「27、28、29、30!!」


何十発も顔面を殴りつけ、両目を潰し、全ての歯を吹き飛ばし、顎を粉砕していく。


「っ…ぅ……うぅ…」


そしてついに俺の首を掴んでいたマリクリの両腕は地面に伏した。立ち上がり、首を押さえつけるのをやめた後も、マリクリは立ち上がれず、もう呻き声を上げることしかできない。


そんな俺はマリクリを徹底的に痛めつけていく。


「うぎゅっ⁉っっっっぅぅぅ…⁉⁉」


地面に倒れた右腕の肘を俺は思いっきり踏みつけた。熟れた果実が潰れるような音と共に、マリクリの右肘はぺちゃんこになり、関節は粉々に粉砕された。


次は左ひじだ。


「っっっぎぃ⁉」


そして右ひざ。


「だっっっっ⁉」


最後に左ひざ。


「ぁ⁉……ぅ……」


「もう叫ぶこともできないか」


全ての四肢を粉砕した俺は、最後に頭を踏みしめる。


「これでも手加減してやったんだ。お前にはまだ利用価値があるからな」


俺のレベルじゃまだマリクリとは融合できない。レベルを上げて融合し、こいつの持っている土魔法を継承したいんだ。それまでは生かしておく必要がある。


「こんな手足に牙もなくなれば自殺も出来ん。せいぜい準備が出来るまで生きながらえてくれよ?


俺はそう言うと、マリクリの上顎を掴み、呆然とこちらを見つめるみんなの方まで歩いて行く。


「みんな、驚かせて澄まなかったな」


近づいて来る俺に困惑した表情を浮かべるみんなを宥めるべく、俺は優しく声をかけた。門の方へ進んでいく俺を見て、みんなは左右にずれていく。


「そうだぁ…それでいぃ…道を開けろぉ?…こっからは俺の時代だぜ?」



俺たちの本当の闘いはこれからだ!!

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