第4話 コータに食べてほしい

「あとさ、おばさんたちは元気?」

「えーと……元気だよ!」


一瞬、間があった。

おばさんたちと何かあったのかな?

おばさん——アイちゃんの母さんは優しい人だ。

自分の子じゃない俺にも、本当の母親みたいに接してくれた。


「それより、ご飯作るから待っててね!」

「悪いよ。アイちゃんはお客さんだから俺が作るね」

「だから違うってば!あたしはコータの許嫁なの!だからご飯作らせて!」


うーん……許嫁っていうのが慣れない。

アイちゃんとは幼馴染だし、好きなんだけど、あの爺さんが決めたことなのが納得できない。

そんなイマイチ納得できない俺をよそに、アイちゃんは台所で料理を始める。


「コータの家族はどうなの?みんな元気?」

「元気だよ。特に神楽はね」

「神楽ちゃんにもまた会いたいなー」

「ああ。また3人で遊びたいな」


俺とアイちゃんと神楽、昔はよく3人で遊んだ。

アイちゃんはよその子とは遊べなかったから、何をするにもいつも3人だった。


「おじい様はどう?相変わらず?」

「あいつは変わらないよ」

「怖かったもんね」


アイちゃんと神楽との思い出は、大切なものだ。

だけど、思い出したくないこともある。

特にあの爺さんとのことは……


「ほら!できたよ!座って座って!」

「すげえ……」


テーブルに豪華な料理が並んでいる。

しかも、全部俺の好物だ。


「おばさまを質問攻めにしてね、コータの好物を聞き出していたの!たっくさん練習したんだよ召し上がれ!」

「いただきます!」


俺はアツアツのからあげを食べる。


「めっちゃくちゃうまい!」

「わあ!ありがとう!コータ大好き♡」


アイちゃんが俺に抱きついた。

エプロン越しに柔らかいものが俺の肩に当たる。


「どんどん食べて!コータが食べてるところ見るの好きだから」

「ありがと。アイちゃんも食べなよ」

「うーん……ごめん。あたしは食べられない」

「なんで?」

「ほら、あたしモデルやってるから……」

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