第8話 ハッカー


取調室でサイバー課の捜査官にひと通りの説明をしたリョウガが最後に梶山警部と話したいと言い出した、捜査官は了解すると梶山を呼びに部屋を出る…しばらくして取調室に梶山が戻って来た。


「貴重な情報をありがとうございます…犯人を必ず捕まえて見せますよ」


「…やっぱりドラッグマンが犯人何ですか?」


「重要参考人です…」


「それと…こんな事考えたくないんですけど…」


捜査では、どんな些細な事でも重要な証拠に繋がる事があるためリョウガが話しやすくなる様に促す…


「今は、少しでも情報が必要ですどんな些細な事でも話して下さい…」


「はい…あきらはホストなんかしてたけど、世間からしたら悪い奴かも知れないけど… あたしにとっては大事な友達だったの…こんな事になったのもきっとあの女のせい何です……」


リョウガが口にした〝あの女〟に警部はふと、こずえがハッカーを紹介しようとした事を思い出した。


「詳しく…聞かせて貰えるかな」


「あきらにはこずえって彼女が居るんですけど…」


思った通り、こずえとハッカーが結びつく。


「何かつかみどころが無いって言うか本心が分からない女で、前に三人で飲んだ時にあいつあきらにクスリの売人やれば儲かるなんて煽ってたんです」


「…彼女が彼氏に言うセリフじゃないですね」


「そう思いますよね… 売人の彼氏にそんな仕事止めてって言うなら分かるけど…勧めるなんて」


こずえは梶山警部には坂下あきらは友達の1人と言っていたが、あきら本人やリョウガの前では彼女として振る舞っていた。


「あきらはこずえに唆されてドラッグマンに殺された……あたしにはあいつが何か関わっているとしか思えなくて」


「なるほど……ですがドラッグマンの居場所を特定した事やこずえさんを疑っていることなどは警察以外には絶対に言わないで下さいよ」


「…やっぱり警察もこずえを疑っているんですね」


「警察は疑うのが仕事ですが…あなたがこずえを疑えば事件に巻き込まれる可能性があります」


「かまわないわ、あきらの仇がとれるなら」


「そんな考えは捨てなさい…あなたが事件に巻き込まれたら死んだ坂下が浮かばれませんよ」


「警部さんは、優しいですね…こんなオカマの事…あきらは気にしないわ」


「そうかな…貴女の気持ちは伝わってたと思いますよ」


「警部さん、ありがとうございます」



リョウガは梶山の言うことを聞いて警察署を後にしたが、こずえがあきら殺しに関わっていたらあきらを愛した1人の人間として…あきらの命を奪った元凶の女…こずえからケジメを取るつもりでいた。



事件に関わるなと釘を刺した警部だが、リョウガが単独で動くと読んで見張りの刑事を付ける事にした。




翌日


リョウガの見張りを頼んだ刑事から警部に電話が掛かって来た。


「何かあったか?」


「城山リョウガが森高こずえのマンションに入りました」


「わかった、そのまま張り込んでくれ」



梶山警部が森高こずえのマンションに向かう。

 リョウガは完全にこずえを疑っているが証拠は何もない…

 今、こずえを問い詰めたところでリョウガの嫉妬心から来る憎悪で単なる言い掛かりだと片付けられてしまうだろう…

 だが、頭の良いリョウガがそんな事をするだろうか…もしかしたらこずえを自供させるだけの材料を持っているのかも知れないそうなればマンションの密室で何が起きても不思議ではない…

 梶山はこずえのマンションに向かう足を早めた。




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