第5話 お父さん

 やがて建物の崩壊が収まり、辺りは静かさを取り戻した。

「……リンカ、大丈夫か?」

「私は大丈夫。でも、レックスが……」

「俺? ああ、こんなのへっちゃらさ。……にしても今の俺、凄い身体だな……w」

 改めて今のレックスの身体を見てみると、全身が筋肉でバッキバキに割れていて、太い血管も浮き出ている。また、筋肉の盛り上がりも凄まじく、特に胸筋に至っては自身の顔よりも前に突き出ている。

「俺、何でこうなったんだ?」

「分からない。でも、今のレックス、とってもかっこいいよ」

「へへ、そうか?ありがとよ」

 レックスは照れくさそうに笑った。

「それより、ここから出ないとな。ふんっ!」

 レックスは両手をついて力を入れる。


 メキメキメキ……。


 両腕の筋肉が大きく隆起していき、身体全体が一回り大きくなった。

「どりゃああっ!!」

 レックスは力任せに瓦礫を持ち上げた。


 ボゴォ!!ガラガラガラ……。


 レックスが瓦礫を持ち上げる直前、レックスの腕がまた膨張した。

「すごい……」

「さあ、行こうぜ」

「うん!」

 レックスはリンカの手を引いて歩き始めた。


 二人は無事に外へ出ることが出来た。外は既に暗くなっていた。

「やっと出られたね」

「そうだな。あー疲れた……」

 レックスがそう言うと、ムキムキだった身体が小さくなっていき、いつものレックスの姿に戻っていった。

「あれ、戻っちまった……。まぁ、さっきの姿じゃ家に帰れないな」

「私はさっきのレックスも大好きだよ。お父さんみたいで」

「お、お父さん!?」

「うん、レックスが大人になったら、あんな感じになるのかなって思ったの。嫌かな?」

「大人になったらかぁ……」

 レックスはさっきの姿を思い浮かべていた。

「確かに、あんな風にカッコ良くなれたら良いかもな」

「えっ、ほんと?」

「おう!」

「やった!約束だからね!」

「分かった、約束する!」

 レックスとリンは笑顔を交わし合った。

「そろそろ帰ろう。もう夜遅いからな」

「だね。それじゃレックス、また明日学校でね」

「おう!」

 こうしてレックスは自宅へと帰って行った。

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レックス ちゃむ @BulkieCharge

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