彼女の名前はエリー

西しまこ

第1話


 我が家はエリーが全てを取り仕切っている。


「おはようございます。朝ですよ」

「おはよう、エリー」

「朝食をどうぞ」

 僕は朝食を食べ始めた。

「今日はコーヒーですか? 紅茶ですか?」

「コーヒーをお願い」

 エリーの淹れてくれたコーヒーを飲む。

「今日のニュースはこちらです」

 リビングに備え付けられた画面に、ニュースがいくつか表示される。僕は全部をざっと見てから、おもしろそうなものをピックアップして詳しく見た。


「そう言えば、今日の天気は?」

「今日は午後から雨予報です」

「そう」

「折り畳み傘をお持ちください」

「分かった。今日はどんな服装で行けばいいかな?」

「暖かくなってはきたけれど、まだコートは必要です。手袋も」

「うん、分かった」

 僕はエリーに言われた通りに準備をする。

「そう言えば、お勧めの小説は何? この間のはもう読んじゃったんだ」

「今日は、ミステリはいかがですか? スマホに送ります」

「……きたきた。ありがと、エリー!」


「どういたしまして。……ところで、シュン」

「何、エリー?」

「この間の女性のことですが」

「ああ、ミチル? ……やっぱり、よくない?」

「ええ。シュンにはもっとふさわしい方がいらっしゃると思います」

「分かった、そうするよ」

「そろそろ出かける時間ですよ」

「じゃ、行ってくるよ」

「遅延もないですし、予定通りに到着すると思います」

「ありがと」

「何かありましたら、またスマホでご連絡を」

「うん、そうするよ。いってきます」


 僕はリビングに備え付けられた画面に映った女性に挨拶をした。彼女の名前はエリー。物心ついたときから、ずっといっしょにいる。家のことは何でもしてくれるし、スマホを通じて外でも話せるし、ほんとうに頼りになるんだ。

 彼女の名前はエリー。エリーの言うことを聞いていれば、万事OKだ。



  了



☆☆☆今までのショートショートはこちら☆☆☆

https://kakuyomu.jp/users/nishi-shima/collections/16817330650143716000

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女の名前はエリー 西しまこ @nishi-shima

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ