第19話
とある女系の家系があった。そこでは女の子しか生まれない。しかし、どの子も美しい。誰にでも愛想良く、誰にでも見守られ、みんなみんな強かに、賢く、凛として生きる。
女の子ばかりだっていいじゃない。嫁に行かない子がいたっていいじゃない。ずっとウチにいてもいいのよ。
誰かが生まれ、誰かが育て、誰かが倒れ、誰かが世話をし、看取り。ほんとはみんなで協力していた。
少し遠い昔の、恐ろしい事実は、家長だけが柔らかな表現で伝えられる。
そして、もしも次。
男の子が生まれたら。
と、口伝えされた次の家長は、震えながら聞く。
うんと、やさしく育てましょう。動物に触れさせ、男児女児問わず遊ばせ、普通の子として。たとえどんな子であっても教え導き、虐げず、虐げられずを心情に、時代の機器と節度を学んでもらい、いつかは、自然と家から旅立つ。
生きることは、呪いであってはならない。
亡くなることは、悲しいだけではない。
恐怖はそこかしこにある。勇気は時に、あるいは常に必要とされる。
終わらない。
終わらない。
罪も罰も、善も悪も、ひとも。
生きていていい。
夜は優しい夢を見て、昼は明るい光の中を。
生まれてきたくて生まれてきたんじゃあない。
ならば、死なないように生きるだけ。
あんたなんか産まなきゃよかった!
ならば、心の根を腐らせないよう育つだけ。
この世は、多くの歴史を得て新しいホラーへと向かう。
桜貝のような、さくらの花びらのような。 明鏡止水 @miuraharuma30
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