社畜はいねえが〜? 白馬に乗った武将様。

秋雨千尋

自分を大切にしないと、武将が来る!

 それは白馬に乗ってやってきた。


 誰がって?

 ゴツイ鎧を着て日本刀を構えた、戦国武将だ。


 タイムカードを切って、厚いカーテンをひいて、上着をパソコンにかけて、残業なんてないフリをしながら作業をしていた時。

 突然ゴミ箱アイコンの後ろから現れた。

 呆気にとられていたら一言。


はよう寝んしゃい!」


 日本刀で斬られたような気がして、後ろ向きにぶっ倒れて意識を失った。


 目を覚ましたのは病院。

 ノー残業デーに部下に仕事をさせていた。しかも偽装工作までさせていた事が明るみになり、上司は責任を取らされた。


 ざっと三日は寝ていたらしい。すごく頭がスッキリしている。

 きっとあの武将はご先祖様に違いない。

 ありがとうございます!


 母さんがお見舞いに来てくれた。

 これを機に家業を継がないかと言われた。

 確かにそれもいいかも。


「母さん、うちのご先祖様って誰?」


「さあ、ウチは代々農家だからねえ、戦国時代もコメを沢山作っていたらしいし」


 それを聞いてゾッとした。

 じゃあ、あの戦国武将は誰なんだよ!?



 やってみると農家もなかなかブラック労働だ。

 タイムカードの概念があった頃が懐かしい。けど額に汗して働くのは楽しい。手をかけた分だけ返して貰えるのは嬉しい。


「よしよし、美味そうに実ったな」


 黄金の稲の中に、白馬の武将がまた現れた。

 今度は何だ、夜はちゃんと寝てるぞ。


「きみの先祖、太兵衛の作るコメは格別だった。手紙を何通も送った。跡を継いでくれて嬉しく思う。体に気をつけてな」


 武将はフッと霧のように消えた。

 ああ、そういうことか。あの人はうちのご先祖様のことが……。


 子孫を見守り続けるとは、一途な人だ。





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社畜はいねえが〜? 白馬に乗った武将様。 秋雨千尋 @akisamechihiro

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