七日/米太郎 への簡単な感想

 応募作品について、主催者フィンディルから簡単な感想を置いています。全ての作品に必ず感想を書くというわけではありませんのでご注意ください。

 指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。

 そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。


 またネタバレへの配慮はしていませんのでご了承ください。




七日/米太郎

https://kakuyomu.jp/works/16817330653847523391


フィンディルの解釈では、本作の方角は真北です。


主人公の心の変化・成長を描いた王道のエンタメ小説だと思います。

「甲子園に臨む、レギュラーではない高校球児」という基本設定から期待・想像できるとおりの心情表現が展開されているように思います。こういうことで葛藤するんだろうな、こういう気持ちに変化・成長するんだろうな、思い浮かぶとおりだったと思います。それは読者の期待を裏切らないという意味では、決して悪いことではありません。

主人公の変化・成長を描いていますし、その心情もエンタメ的に想像できるものですので、真北はおよそ間違いないと思います。


真北エンタメとして考えると、変化前と変化後の心情描写が厚すぎるのが気になりました。

「俺」が野球(部)に対して負の感情を抱いている変化前の心情描写と、「俺」が野球(部)に対して正の感情を抱いている変化後の心情描写が、多すぎる。しかも同じような内容を繰りかえしているので、既に受けとっている内容を何度も読むという読書体験になっているように思います。西や南なら大いにアリな描写アプローチなのですが、真北となると描写のダブつきは野暮ったさが悪目立ちしてしまうかなと思います。北以外を目指して意図的に描写を重ねているのかもしれませんけどね。

その一方、変化の描写は薄すぎる。変化前の心情も変化後の心情も十分すぎるほどわかるのですが、ではどうしてそのような変化をしたのか、どのように変化していったのか、と問われると急にピンとこなくなります。試合前の整列のところからいつの間にか「俺」の心情が変わっていったな、くらいの認識しか残りませんでした。これも西なら「何となく変化した」という見せ方もアリなのですが、ことエンタメとなると「何が主人公を変化・成長させたのか」を捉えて描くことが満足度ある読書体験に重要だろうと考えます。

変化前・変化後の心情描写は今より薄くする、変化・変化中の心情描写は今より厚くする。これをするだけで本作のエンタメ小説としての読み応えはぐっと向上するだろうと期待します。

と簡単に言いますが、そんな簡単な作業ではありませんけどね。一般的に変化前・変化後の心情描写よりも、変化・変化中の心情描写のほうが繊細で難易度が高いので。ただ、そこに挑戦してみるとひとつ上のレベルに行けるんじゃないかなと思います。

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