第9話 あれ?俺って嫌われてる?




 レーウィンは俺がまだ聖剣を集めている時に出会った魔族だ。


 どうやら魔界のお偉いさんに頼まれ聖剣を手に入れにきた彼女と交渉の末に決裂し戦った。


 普段ならトドメを刺すところだが温和な魔族だったので見逃してやったのだが。


「なんだ? この変態は? お前の知り合いか?」


 コイツはもう少し言葉を選べないのかな?


「へ、変態って!?」


「ああ、この露出狂とは顔見知りだ、珍しく温和で話しができる魔族だったから見逃してやったことがある」


「露出……狂……〜〜っ!! 相変わらず人のことをおちょくりやがって! そこら辺の冒険者だったら見逃してやろうと思ったがお前なら話しは別だ!!」


 変態や露出狂と言われて顔を真っ赤にしたレーウィンは自分の格好が恥ずかしくなったのか、胸や太ももを隠しながら怒ってしまった。


 俺はただ事実を言っているだけなのに……。


「お前のせいで私はっ……!! 死ねぇ!!」


「おい!!! どこが温和な魔族なんだよ!!? 死ねとか言って襲いかかってきたぞ!!? 親の仇みたいな顔してるし!! お前一体なにしたんだ!?」


 まったく心当たりがない、常日頃から善行しか積んでいない俺が恨みなんて買うはずがないのに。


 レーウィンの攻撃を全て受け流しながら原因を考えてみたが分からない……これは本人に直接聞いたほうがいいか。


「いや、お前が煽ったから怒ってるんだよきっと……俺は普段から言動には気を付けているからな」


「そこの魔族! そのクソ野郎は遠慮なくぶっ殺していいぞ! そいつは乙女の敵だ!!」


 俺が必死に攻撃を受け流しているのに、敵を応援し出すセレナ。


 攻撃が当たらずにイラつくレーウィンを“縛鎖の聖剣”で束縛すると涙目になりながらこちらを睨み。


「チッ!!」


 セレナは盛大な舌打ちをする……俺たち一応パーティーだよな?。


「くそ! 何だこの鎖はっ!! 絡みついて離れない、この男だけは絶対に殺してやる! 動けっ! 私の身体!! この男が殺せるなら私はどうなったっていい!!」


「まあ、落ち着けよ……とりあえずお話しようじゃないか?」


 レーウィンは歯を剥き出しにしてこちらを威嚇するが、拘束が解けないことが分かると涙をポロポロと流し始めた。


「くうぅ……っ、なんで私がこんなことに……ヒック……こんなゲスな男の慰みモノになるなんて……」


「人聞きが悪い事を言うなよ……俺がいつそんなことしようとしたんだよ!? セレナ、お前も何とか言って…………」


「最低だな……お前……」


 どうやらこの場に味方はいないらしい、というかセレナは昨日から俺に冷たくないだろうか。


 昔、聖剣ダンジョンで俺がレーウィンを撃退したあと領地に帰ったらそこいらの人間に負けるなど情けないと。


 お偉いさんの怒りを買ってしまい魔界から追放されたらしい。


 魔界に帰るわけにはいかず、かといって人間に見つかればタダでは済まないが、遺跡なら雨風を凌げて森の生き物を狩ればしばらくは生きつなげる。


 だがしばらく森に住み着いたことで魔族特有の魔力が森に染み付いてしまい。


 生き物が周りに寄り付かなくなってしまった、そこに俺たちが来て散々な目に遭わされたと言うわけだ。


「グスッ……私はこれからどうしたらいいんだ…………うぅ……ヒック……」


「……お前、冒険者になる気はあるか?」


「なに? 私は魔族だ、冒険者になれるわけないだろ! 褐色の肌に大きな角、瞳孔が開いた赤い瞳……幻惑魔法にも限界がある! 誤魔化すのはムリだ!」


 確かに普通に考えれば魔族が人間に紛れて冒険者など正気ではないが、こっちにはとっておきの切り札がある。


 普通に解決してハイ終わりじゃつまらんし本当に珍しい、話が通じる魔族だ……。


「じゃあ、誤魔化せたら冒険者になるか? ん?」


「フン! 誤魔化せたらお前の奴隷にだってなってやるさ! 私にはもう後がない……宿があってまともな飯が食えるならなんだってやってやろうじゃないか!」


 よし、言質を取ったぞ……どうしてやろうか。


「言ったな? 気安くなんでもするなんて言ったらどうなるか教えてやる……!」


 ドン引きしている上にゴミを見る目でこちらを見ているセレナ。


 そんなことを気にしない俺は“擬態の聖剣”の能力でレーウィンの魔族的な特徴をすべて消し、見た目を人間の女性に変化させると。


「きゃっ! な、なにをするつもりだ!? 」


 見た目の変化に気づいていないレーウィンは、突然手を突き出した俺が胸でも揉むと思ったのか顔を背け目を固くつむっていた。


 一体俺のことを何だと思っているんだろうか、確かに女体に興味があるのは認めるが手を出す勇気はない!!


「なっ!! ノエル、お前、なにしたんだ!?」


「な、何だ急に、私になにしたんだよ!?」


 驚くセレナをなだめ“次元の聖剣”の能力で鏡を取り出しレーウィンに手渡すと困惑した顔から一変し、驚いた表情へと変わった。


「な、何だこれは!? これ、私か? お前、聖剣を使ったのか!?」


「そうだ、驚いたか? それよりお前……誤魔化せたら奴隷になって何でもするって言ったよな?」


 俺は口角を上げニヤリと笑みを浮かべるとレーウィンの顔は徐々に青ざめていく、さてなにをしてもらおうかな?。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る