国試が終わったら:とにかく遊ぼう!

 私の第117回医師国家試験の受験記録は前項まででほとんど全て書き終わりました。国試終了後は先述の通り学友と飲みに行ったり焼肉を食べたりカラオケに行ったりする日々が続き、休止していた学生研究をフルスロットルで再開しつつ研修医生活に向けた引っ越しの準備を行いました。


 2023年3月16日(木)の合格発表では自己採点結果からの予想通り問題なく合格となり、2023年9月現在の私は近畿圏内の某病院で初期研修医として勤務しています。


 国試終了後の医学生の中には国試が終わってからもこまめに勉強し、初期研修医向けの指南本を読むなどして4月から始まる初期研修に備えている人もいます。私自身は数少ない最後のモラトリアム期間に勉強など死んでもしたくなかったので研修医生活が始まるまでは一つも勉強をしませんでしたが、研修医生活が始まって約半年となる現時点での感想としては「国試後の勉強なんてするだけ無駄、研修医生活が始まるまではひたすら遊ぶべき」と結論づけています。


 研修医生活には医学の知識は当然重要になりますが、今の国試は10年以上前と比べて極めてハイレベルになっているので合格点スレスレでも合格できていれば医学の知識はそれで十分です。また、医学生に求められる医学の知識と研修医に求められる「医療」の知識は微妙に異なり、例えば「救急外来で主に使われる輸液はソルアセトF」「当日緊急CTをオーダーした際は放射線検査室に電話連絡する必要がある」「一般的な体格の成人への輸液の量(何mL/hか)」といった医療知識は研修医にとっては常識ですが普通の医学生はまず知りませんし国試合格には知る必要もありません。


 臨床現場に即した指南本を読んでおけば多少は仕事がやりやすいですがそれでも現場で指導医や看護師さんをはじめとする医療スタッフから教わることに比べれば遥かに効率が悪いので、国試終了後は研修医生活が始まるまでひたすら遊んでおくのが一番です。どのみち研修医になってからは遊ぶことだけ考えていられる時期など仕事を引退するまで来ないので、ここで学生時代の最後のモラトリアムを満喫しなければ間違いなく後で後悔します。


 ただし例外として麻酔科だけは業務内容の他の診療科からの独立性が極めて高く、麻酔科研修医は麻酔科以外ではあまり行わない手技を多数覚える必要があります。一方で麻酔科の知識は2023年時点では国試にほとんど出題されない(例年1問~数問程度)ので研修医は他の診療科と異なり麻酔科だけは手技・知識ともに素人同然の状態で手術室に放り込まれることになります。


 上記の点から初期研修のローテーションが麻酔科から始まるという人は3月の間に予習をしておいた方がよいと思います。麻酔科の業務は書籍で学ぶよりも動画で学んだ方が遥かに効率がよく、Youtubeの無料の動画として現場で働く医療スタッフが作った解説映像(輸液ラインの組み立て方、静脈路確保のやり方、Aラインからの採血法等)が公開されているので一通り見ておくと後が楽です。といっても長くて10分程度の短い動画がいくつかあるだけなので全て見ても大した手間にはなりません。


 私の第117回医師国家試験の受験記録は本項をもって全て書き終わりましたので、次項からは国試に限らず医学生の勉強でよく言われる定説に関する私の考えと医学生生活全体を通して考えた後輩へのアドバイスについて書いていこうと思います。

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