medu4映像講義:私がmedu4を選んだ理由

 2023年現在は日本の大学の医学部医学科において大学の授業だけで医学を勉強している学生はほとんどおらず、医学生のほぼ100%は「Q-Assist」「medu4」「MEC」「TECOM」といった国試予備校の映像講義を中心として医学を勉強しています。


 当然大学においても循環器内科や消化器外科といった各診療科の先生方が対面の講義を行って学生に医学を教えているのですが残念ながら大学における大半の授業のクオリティは国試予備校の映像講義に遠く及ばず、特に初学者は大学の授業を聞いても内容をほとんど理解できないことが多いです。


 これに関しては決して大学の先生方の能力や意欲に問題がある訳ではなく、学生への教育(その中でも一方通行で知識を教える系統講義)が本業である国試予備校の先生方と異なり大学の先生方は医療現場での診療や医学研究と並行して教育を行っており、教材準備の時間も教育法改善の時間も十分に取れない以上は国試予備校ほど分かりやすい授業を行うことは不可能です。


 この現状を受けて最近では教養科目・基礎医学・社会医学を除いて大学での系統講義を廃止し臨床医学の系統講義は国試予備校に任せてはどうかとの検討も一部の大学で行われていますが、現時点では医学生は大学の講義を受けながら自学自習時間に国試予備校の映像講義を受講する必要があります。


 大学側も現代日本の医学生に国試予備校の映像講義が必須であることは理解しており、私が在籍していた大学では大学が「Q-Assist」を一括で契約しているため学生はQ-Assistの映像講義を無料で受講することができました。


 無料で受講できたこともあって私の大学ではQ-Assistの映像講義を受講している学生が最も多く、後輩たちも同様と思われますが私は比較検討の上で映像講義はmedu4を受講することに決め、自費で映像講義を購入して受講し続けました。



 私がmedu4を選んだ理由を以下に示します。


 ①medu4の教育理念


 国試予備校の先生には現役の臨床医として働きながら映像講義を担当している方も多く、中でも「Q-Assist」や「MEC」は臨床経験が豊富な先生方の講義を受けられることをセールスポイントとしています。


 その一方でmedu4の塾長であり唯一の講師である穂澄先生は異なる価値観を持っており、2022年度時点でのmedu4の教育理念を簡潔に要約すると「一口に医学生といっても将来臨床医になりたい人、研究医になりたい人、起業したい人とそれぞれ様々な目標を持っている。全員が医療現場で働く臨床医を目指す訳ではない以上、臨床医の視点は必要以上に重視せず国試過去問の理解をベースとした学習により最短経路での国試合格を目指すべきであり、臨床医の視点等は国試に合格してから身につければよい」となります。


 私自身医師としては臨床よりも研究をメインにしていきたいと考えていたこともあり穂澄先生のこの教育理念には大いに賛同し、medu4の映像講義の内容も実際に「最短経路での国試合格」を主眼とするものでした。


 比較検討の際に見た他社の映像講義では臨床医である先生が現場で経験した症例や出会ったことのある患者さんの話を匿名化した上で語ることが多かったですがmedu4ではそのような話はほとんど登場せず、それぞれの診療科の疾患・病態についていかにスムーズに理解するかに重点が置かれていました。


 後述するコンパクトな構成のテキストと相まってmedu4の映像講義は学生研究で忙しい時期でも受講を進めることができ、私に最も合っていた国試予備校であったと感じます。


 ②コンパクトな構成のテキスト


 国試予備校のテキストの形式は予備校によってそれぞれ異なり、ほとんど真っ白なテキストに講師の板書を写していく昔ながらの形式があれば図だけが印刷されたテキストに文字を書き込んでいく形式もあります。


 それではmedu4のテキストはどうなっているかというと、一言で言えば穴埋め形式です。医学の参考書の文章をさらに簡潔にまとめた解説文と図が原則として1疾患につき1ページ(+例題として実際の国試過去問が掲載された1ページ)印刷されており、解説文の中で国試で出題のポイントとなる部分は空欄になっています。


 穂澄先生の解説を聞きながら空欄に文字を書き込んでいくのが主な受講スタイルとなり、欄外に解説文を書き加えることも多いですが重要なポイントが穴埋め部分に集約されていることによりどこが重要なポイントなのかが非常に分かりやすくなっています。


 大量の板書が必要となる他の予備校のテキストはそもそも受講のための労力が大きい上に復習時にどこがポイントなのかを忘れてしまうことがあり、medu4の穴埋め形式のコンパクトなテキストはアルバイトや学生研究など勉強以外で忙しい受験生にとっては非常に助かります。


 先述した「Anki」のカードを作る際もmedu4のテキストは穴埋め部分をそのままAnkiカードの穴埋め部分とすればよいため大変便利であり、「Anki」との相性という点で言えばmedu4は随一と言ってよいでしょう。


 ③穂澄先生の人柄


 これについては正直言って好みが分かれる部分であり、臨床の現場で医師として働いている経験を熱く語る他の国試予備校の講師と比べてmedu4の穂澄先生は良くも悪くもビジネスライクな語り口で、受験生によっては医師としての熱意や思いやりを感じないと思う人もいると思います。


 ただ、常識的に考えれば臨床医として日本国内で名を馳せている医師はそもそも本業が多忙のため国試予備校の講師をやっている暇などあるはずがなく、私自身は国試予備校で積極的に働いている医師が臨床経験を自慢げに語る姿勢にはかなり懐疑的です。


 例えば大学受験における河合塾や駿台、東進といった大手予備校では英語・数学・国語といった各科目の優秀な講師が働いていますが「東京大学で英語を研究している国際的語学研究者」「学生時代から数学オリンピックに何度も出場して現在は新たな数学理論を確立しようとしている数学研究者」「過去に大手出版社で文芸誌の編集長を務め、現在は一橋大学の客員教授として学生を教えている国語学者」のような卓越した人々は予備校で働いていませんしそれで何の問題もありません。大手予備校の優秀な講師はその事実をよくわきまえているため、その予備校で人気No.1の講師であっても「私は本業が上手くいかなかったから予備校講師をやっています」というような謙虚な姿勢を貫きます。


 一方で国試予備校の講師は医師免許を持っており臨床医として患者さんを救ったことがあるという自負もあってか臨床医としての経験を受験生に熱く語る、悪く言えば臨床経験でマウントを取りたがる傾向にありますが穂澄先生はそのような講師とは一線を画し、medu4はあくまで受験生を「医師国家試験に合格させる」ためのサービスという認識を一貫しています。


 国試予備校の講師が臨床経験を熱く語る姿に「そんな優秀な臨床医が何で予備校で働いてるんだ」という身も蓋もない感想を持ってしまう私のようなひねくれた受験生にとっては穂澄先生のビジネスライクな語り口こそ好感が持てるので、やはり身も蓋もない言い方をすると医学生にもなってウェブ小説を読んでいるようなひねくれた受験生には積極的にmedu4をお勧めしたいと思います。

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