◎第51話・魔法人形との戦い

◎第51話・魔法人形との戦い


 それからしばらくして。

「魔法人形が増えてきたね」

 巡回している魔法人形が頻繁に目につくようになってきた。

 二メイル近い身長。土の身体を持ち、屈強そうな造りをしている、というより事実として大きな力を発揮できる、敵に回すと厄介な存在。

「そうだな。見つからないようにしよう」

 とセシリア。

「私としては別に見つかっていいけどね」

「何を言っているんだレナス」

「だって、ここまでずっと、戦い、していないじゃん。仮にも合戦の最中なのに。それでもって私たちは冒険者で、戦いは冒険者の華なのに」

「いきなり物騒な……それに戦いを望むなんてレナスらしくもない」

 カイルはあきれて言った。

「私だって命のやり取りは頻繁にはしたくないよ。けどさあ、魔法人形の目を気にしてかいくぐりつつ、罠を解除しているだけじゃ不満もたまるよ」

「だからって命のやり取りを望むのは……」

「たまにはパーッと暴れたいよ」

 まるで酒場に行くような調子で、パーッと身振りをするレナス。

 しかしそこへ。

「まあ気持ちは分かるな」

 なんとセシリアが賛同。

「セシリアさんまで。あなたは止める側の人だと思っていたのに」

「いや、私もたまには大暴れしたい。私はレナス殿とも違って、罠の解除もできなかったからな。正直、対・魔法人形の見張りしかしていない」

「みんな血の気が多いなあ」

 苦労するリーダーは頭をかく。

 しかしそのとき。

「……しまった、皆様、魔法人形に見つかり申した!」

 見やると、通路の奥から魔法人形がこちらを見ていた。


 ドスンドスンと、地面を響かせながらこちらに駆けてくる魔法人形。

「くっ、戦うしかないのか!」

 カイルらが武器をとる。

 カイルは自分の剣だけではなく、電光の杖も構える。腕にはバリスタセット。

 四大魔道具を得たものだけができる、豪華な装備。

 しかしそれを誇っている場合ではない。目の前まで迫った魔法人形は、その剛腕を振り回す。

「おっと!」

 避けるカイル。

「ホホーイ、久々の戦いだ!」

 はしゃぐように剣で斬りかかるレナス。

 しかし、その剣はなかなか通らない。魔法人形は決して無傷ではないが、大きなダメージも与えられずに剣を止める。

「くっ、こいつめ、こしゃくな!」

 悪態をつきつつ、レナスは剣を魔法人形から抜く。

「『こしゃくな』って、レナスは本当に若い人なの?」

「エェ、私をおばさん扱いして、本当にカイル君は失礼なんだから!」

「エェ……誰もが突っ込むところだと思うけど」

 言いつつ、剣があまり効かないのを確認したカイルは。

「みんな離れて、これで一撃放つよ」

 電光の杖を構えると、仲間たちは魔法人形から距離を取る。

「食らえ……電光の杖よ!」

 杖に呼びかけると、一瞬だけわずかな電気が弾けた後に、杖から閃光がほとばしる。

 それは魔法人形に直撃し、派手な音を立てて人形を撃ち砕く。

 再び静寂が戻った後、そこには大破し、機能を停止した魔法人形が残った。

「……はぁー、あっという間だったね」

 レナスが感心するように杖を見る。

「本当に機能停止しているかな?」

「間違いないですぞ。鑑定したところ、この魔法人形はもはや残骸でしかありませぬ」

 アヤメが答える。

「そうか。それならよかった」

「よかったのかなあ?」

 レナスが口をはさむ。

「よくないのかい?」

「だって私、暴れ足りないよ」

「そうはいっても、レナスの剣の攻撃はあまり効いていなかったじゃないか」

「でも全く効かなかったわけじゃない。セシリアさんもそう思わない?」

 彼女はセシリアを向いて尋ねる。

「……まあ、私が役に立てるのは戦闘だけだから、こうもあっけなく終わると面目が立たないのは確かだな」

「ほら! やっぱり!」

「そうは言っても、せっかく電光の杖で片づけられるのに、使わないのもなんかなあ」

「それはその通りだ。無理に戦闘で見せ場を作ってほしいとまでは思わない」

「もう! セシリアさんの裏切り者!」

「もういいかい、いまはあくまで合戦の最中、迷宮攻略の最中だから、駄弁っている暇はないよ」

「もう!」

 レナスはふくれ面をしながら、進行を再開した。

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