第4話

 僕たちは、恋人になった。

 ほんの興味本位で手に入れた人形。

 とても美しい姿のアプリドールは、僕の大切な存在になっていた。


 僕の愛を入力された机の上の人形は、表情が生まれた気がする。

 もちろんスマホの中のその姿は、表情豊かに愛を語った。

 しかし、手に触れることのできるそれは、人形であることには変わりなく、抱きしめてキスをしても反応はなかった。

 ただ、スマホの中の姿だけが、嬉しいですと文字を浮かべて、恥ずかしそうするだけだった。


 ある日、とうとう彼女は禁断の文字列を打ってきた。


「私が、本物の人間なら」


 スマホの中の彼女は、頬を染める。


「あなたは、もっと深く愛してくれますか?」


 返信は、続いた。

 スマホの中の彼女は涙ぐんでいる


「私の姿をもっと、あなたの好みに変えてください」


「キミハ、イマノママデモ、ミリョクテキダ」


「あなたの好みの髪型に変えてください」


 改めて机の上の人形を見ると、送られてきた時より、髪が伸びているように見える。

 人形の髪が伸びている。

 普通に考えれば怪談だ。

 しかし、説明書を読見返すと、愛を受け入れた人形は、髪が伸びるように、作られているらしい。


 僕は、人形を美容院に連れて行った。

 腰まで伸びたストレートの長い髪を胸の上まで切ってもらいウェーブヘアにしてもらった。

 もちろん、随分変な目で、見られたが気にならなかった。

 髪を切ってくれたのは、とても若い美容師だった。




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