『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇 中級編』

『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇』

『スクリプトドクターの脚本教室・中級篇』

 著者 三宅隆太

 新書館 各・本体二〇〇〇円(税別)


 大学在学中に若松プロダクションの助監督になり、その後フリーの撮影・照明助手として映画、テレビドラマ等に多数参加。

 ミュージックビデオのディレクターを経由して脚本家・監督となる。日本では数少ないスクリプトドクターとして国内外の映画企画に多数参加しながら、東京藝術大学大学院をはじめ各種大学やシナリオ学校等で教鞭も執っている。TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』での映画談義も行う。

 主な作品として映画に、『ホワイトリリー』『劇場霊』『クロユリ団地』『七つまでは神のうち』『呪怨 白い老女』などがある。またテレビドラマでは、『劇場霊からの招待状』『クロユリ団地? 序章』『世にも奇妙な物語』『女子大生会計士の事件簿』『古代少女ドグちゃん』『恋する日曜日』『時々迷々』ほか多数がある。


 本作は、小説ではなく脚本のための書籍となる。とはいえ、映画やドラマ、アニメなどを制作するには脚本が必要である。脚本がなければ作れない、といっても言い過ぎではない。すなわち、お話づくりにおいても脚本から学ぶ点は大いにあるのだ。

 

 自分らしいものを書くためにどうするべきか。主人公の条件。物語を進める方法なども触れられ、面白いと感じた作品には「クライマックス前にかならず『主人公が殻を破る』瞬間がある」と書かれている。

 脚本を貫く葛藤の流れとして、中心起動について書かれている。

 

 余談ですが、わたしがカクヨム甲子園やカクヨムに公開されている作品を読んで感想を書く際、作品から中心起動を読み取っているのは、本書の影響があります。

 もともと、作品を見ながら「この作品はどういうふうにできているのだろう」と演出視点から映画やドラマなどを見ることが多かったため、個人的に本書は役立ちました。


 作品には必ず、男性神話や女性神話の中心起動、あるいは絡め取り話法や、それぞれの人物の思いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプ、才能ある人物の挫折と成長の物語、目ドロラマの中心起動など、登場人物の葛藤の流れが描かれている。

 本著を読んで参考にすれば、自分が好きな作品をみながらストーリーの節目のエピソードを書き起こすことで、どんなふうにできているのかも学ぶことができる。

 一つの作品に、一つの中心起動が使われていることもあれば、複数の中心起動が用いられている場合もあるのがわかれば、「あなた」のお話づくりの考え方の幅も変わってくるだろう。

 他にも、プロットの作り方や中間部分を支えるサブプロットの作り方、畳み方などなど参考になることが多く書かれているので、ぜひ手に取ってほしい。

 高価なので、本屋や図書館に足を運び、一読されてからご検討されるとよろしいと思う。


 動画サイトで『新書館クリエイターズクラブ』でスクリプトドクター三宅隆太さんがマンガ家や多くのクリエイターから寄せられた相談や質問に答えた、オンライン講座受講者限定公開だった「Q&A」が公開されているので、興味を持たれた方はご視聴されるのもよいかもしれない。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLjsqM-vZRs19SqUmXU71A0VXDOk-1eKYL

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