もうすぐ、

 スマホ越しに聞こえる亜黒の声は、今まで僕を安心させてきた、優しく芯の通ったような音として僕の耳に伝わった。

 僕は、その声色から亜黒の体調が良くなったのだと察した。

 僕は亜黒から体調が良くなったことや、僕に会っても大丈夫だということを聞いた。

「ねえ、僕、あっくんに言わなきゃいけないことがあるんだ」

 そして、僕は本題を切り出した。

「なに?」

 亜黒は訊く。

「電話越しじゃあ話せないんだ。ちゃんと、面と向かって話したいんだ」

「わかった。俺の家に来るの?」

「いや、あっくんの家の近くに、小さい公園があるでしょ? Y字路に挟まってるとこ。そこに集合しよう」

 その公園は、初めて亮二に亜黒が好きだと伝えた場所。

「ああ、あの場所ね」

「ちょっと外暗くなっちゃうけど、ごめんね」

「全然大丈夫だよ」

 亜黒の声が聞こえ、じゃあ、そこで待っててねと伝え、電話を切った。スマホはもう要らない。

 僕はスマホを机の上に置いて、マフラーを巻く。


 もうすぐ、もうすぐ全てが終わる。

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