第6話:メルバの糸切り歯。
「あのさ・・・真面目な話なんだけど・・・週一で俺の血を吸いたいって
言ったけど・・・それじゃこの首の傷はずっと傷口が塞がらないまま
だよな・・・ 」
「それって、よくなくないか?」
「傷口からバイ菌が入って化膿するとか・・・」
「そうだね、傷口は塞がらないね・・なるべく同じ箇所から血を吸うから・・・
他に穴、開けないようにするから・・・ 」
「けど、化膿はしないよ・・・私の唾液は殺菌作用あるから・・・」
「分かんないぞ・・・穴だらけにされて腐っちゃうかもな・・・」
「黙れ・・・バカピーチ」
「そんなことしないわ・・・」
「ってか、血、吸うって・・・それって俺が寝てる時じゃないとダメなのか?」
「そんなことないよ、起きてる時でも大丈夫だよ」
「最初の時はケイスケに内緒だったから・・・それで寝込みを襲ったの」
「それにしても血、吸われてるのによく俺起きなかったな・・・」
「寝る前にスイーツ食べたでしょ・・・あの時飲んだオレンジ・・・
ケイスケのだけ睡眠薬を入れておいたの・・・ 」
「だから、熟睡してたんだよ 」
「そうなのか・・・油断してたわ・・・」
「俺って、つくづくバカだよな・・・メルバに気に入られようと会社辞めて
きたり・・・妙に気をつかったり・・・ 」
「友好関係結べないと、惑星どうしのトラブルにもなりまけないって思って・・・」
「なんで、こんな企画に応募なんかしたんだろ・・・」
「落ち込むことないってば・・・友好関係結べてるじゃん」
「現に私たち、もう恋人同士でしょ・・・」
「地球初、バニラ星初の大スヤンダルだよ・・・ワイドショーのトップニュースだよ・・・これって・・・」
「大げさな・・・たぶん他にも異星人どうしで結ばれたカップルいると思う
けどな・・・」
「まあ・・・おち込んでてもしょうがないか・・・」
「メルバはボジティブなよな・・・悩んだりしたことないだろ?」
「そんなことないけど、年頃の女はそれなりにナイーブなんだよ」
「デリカシーのない男には女の気持ちなんか分かんないんだよ」
「俺は、そんなことないから・・・メルバのことちゃんと考えてるから」
「ケイスケは優しいね・・・」
「まあ・・・私は基本的には陽気な方だけどね」
「それにノ〜天気だし・・・天然だし・・・ボケてるし、ウザいしな・・・」
「黙れって言ってるでしょ・・・アホピーチ、マヨネーズつけて食っちゃうぞ」
「ところで、メルバ・・・イーしてみ?・・・クチを横に開いて・・・イーって」
「なんで?」
「いいから、イーしてみ?」
そう言うとメルバは、俺の言う通りクチを横にして
「イーーーーーーー」って言った。
「あ〜、てっきり糸切り歯、トガってるのかと思ってたら、普通だな」
「あたり前でしょ・・・トガったままだったら口の中血だらけになっちゃうよ」
「普段は、普通の歯だよ・・・血、吸う時だけ糸切り歯が伸びるようになってるの」
「へ〜合理的にできてるんだ、便利だな・・・でも虫歯にはなれないよな・・・
血、吸えなくなっちゃうだろ・・・」
「大丈夫だよ、もしそんなことになっても、直接飲めばいいだけの話だもん・・・」
「あ、そうか・・・その手があったか・・・俺、バカだな」
「吸うことばかり考えてたけど、飲むって手があるな・・・なるほど・・・」
「その時はケイスケ・・・採血させてね・・・大きめのペットボトル3本分くらいでいいから・・・」
「そんなに抜いたら、まじで、死んじゃうだろ・・・」
「冗談だよ・・・本気で真に受けて・・・ケイスケ可愛い♡・・・」
「からかうなって・・・」
「ケッ・・・イチャイチャしやがって・・・」
「ピーチは黙れ・・・」
「採血って・・・血、吸われるより、なんか嫌だな・・・」
「病院で検査されてるみたいで・・・」
「・・・あのさ・・・血、吸ってもいいって言ったけど・・・」
「まじで定期的に、俺の血、吸わないとダメなのか?」
「ケイスケにダメって言われたら、他の誰かの血、吸うしかないからね」
「あ〜そうか・・・その手もあったか・・・それはダメだな」
「よその誰かの血を吸うってのはダメだ・・・下手したらメルバは殺人者に
なっちゃう恐れがあるからな・・・ 」
「とりあえず昨夜、血、吸ってるから、あと六日は吸わなくても我慢できる
よな・・・ 」
「血を作る食いもんってなんだ?・・・肉か?・・・そうだよな」
「それまで俺は焼肉でも食って、貧血なんかにならにようにしとくか・・・ 」
「鳥のレバーなんかもいいかもな・・・」
「メルバ、焼肉好きか?」
「なにそれ・・・・?」
「肉だよ・・・・ピーチに教えてもらえよ」
「肉は肉だよ」
ピーチは面倒くさそうに言った。
「ピーチ・・・お前、冷たいな・・・」
「ふん、人の彼女になんかなった女に教えることなんかないよ」
「なんだよ・・・ピーチおまえヤキモチ焼いてんのか?」
「そんなもの焼くか・・・おまえらこそイチャイチャしながら肉でも
焼いとけ・・・」
「まあいいわ・・・メルバ、さっそく明日の夜は焼肉だ・・・昼間、肉買い
に行こう・・・肉」
「うん・・・にく・・・」
「美味いぞ〜 食ったら分かるから・・たぶんメルバは特別好きだと思うぜ・・・」
実は俺にはもうひとつ考えがあった。
うまいくかどうかは分かんないけど・・・もしかしたらイケるかもな・・・。
人間、思い込みってやつがあるからな・・・それは異星人でも同じだろ?
つづく。
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