第2話:ようこそ我が家へ。
ってことで、編集社の人や、総理大臣、ホテルのボーイさんや他のお客さんに見送られながら、デカいリムジンで俺の家まで送ってもらった。
「では、私どもは退散しますから、あとは是田様にお任せします」
「一ヶ月後メルバ様をお迎えに伺いますので・・・ではそれまでさようなら」
そう言って編集社の谷川さんは帰って行った。
「ほら、ここが俺の家・・・遠慮しないでいいからね」
「入って、入って・・・」
「お邪魔しますう〜」
「地球人ってこういうところに住んでるんだ」
メルバの頭についてる桃がそう言った。
「あのさ、メルバちゃん・・・来ていきなりだけど、その頭の桃の実
みたいの・・・」
「なにそれ?」
「ピーチ・・・」
「え?ピーチ・・・桃?・・・それは見たら分かるんだけど・・・」
「だから〜ピーチだって・・・」
メルバは面倒くさそうにそう言った。
「あのね、この人は私が生まれた時から、頭にいて、私の教育係をしてくれてるの」
「この人がピーチで、私がメルバだから、ふたり合わせてピーチメルバが私の本名」
「分かった?・・・え〜とコレダさん?」
「あ〜俺にことは圭介・・・け・い・す・け・・・ケイスケでいいよ
「じゃ〜ケイスケ・・・今日からお世話になるらよ・・・」
「なるらよ?・・・日本語おかしいけど・・・」
「この子はメルバは時々、言葉がおかしくなるんだよ、いろんな星の影響受けてる
からね」
ピーチが言った。
「あ〜分かるわ・・・地方出身者が変な大阪弁使うって、人間でもあるからな」
「宇宙から来た、雷娘が高知弁つかってたりするしね」
「まあ、いいや、ぼつぼつ行こうか・・・」
「とりあえずソファーにでも座っててよ・・・メルバちゃん」
「メルバでいいよケイスケ・・・」
「そう、じゃメルバで・・・」
「なにか飲む?・・・喉乾いてない?」
「めっちゃ乾いてる・・・震えるくらい・・・」
「何がいい?オレンジジュースでいいかな?」
「なにそれ?」
「だからオレンンジの実を絞った・・・果汁100%の飲み物・・・」
「よく分かんない・・・」
「じゃ〜桃のジュースは?」
「桃の果汁絞ったやつ・・・」
「なにを〜桃を絞っただと・・・・けしからん」
ピーチが文句を言った。
メルバが笑った・・・。
「面白い・・・ピーチも絞ってもらえば?」
「あ、いや悪かった・・・デリカシーなかったわ・・・ついさ」
「ピーチが、桃だって忘れそうになるんだよ」
「あのな、怒ったけど、正式には俺は桃じゃないからな、似てるってだけで・・・」
「あ。そうなんだ・・・でもやっぱり、そのへんは異星人なんだ・・・」
「頭に桃に似た何かが、くっついてるなんて地球じゃありえないからね」
「ところでピーチって男子?女子?どっちなの?」
「俺に性別なんかないよ・・・どっちでもないから」
「だって、俺って言ってるんだから、男だろ?」
「便宜上そう言ってるだけだよ・・・俺のほうが俺にはしっくりくるんだよ」
「そうなんだ・・・トランスジェンダー?」
「なんだそれ?・・・俺のことはアンドロギュヌスって言うんだよ」
「アンドロ?・・・そっちのほうが難しいわ・・・」
「あのさ、私をほったらかしてないで、とりあえずオレンジジュース?とやらでいいから・・・飲ませて・・・喉が渇いて・・・ 」
「あの・・・この家、俺一人しかいないから、遠慮しないでいいからね」
そこから、なんで俺が一人暮らしをしてるかってことをメルバに説明した。
「だからね、好きにしていいよ・・・
俺は土日以外は日中、仕事にでるからその間はテレビでもオーディオでもなんでも
楽しんでくれていいから・・・ 」
「しごと?・・・ってなに?」
「人間は働かなきゃ生きていけない生き物なの?」
「働きもしないで、チンタラしてたら、すぐにホームレスだよ」
「ほ〜むれすって?」
「そうか・・・知らないことばかりなんだな・・・ピーチなんとかならないの? 」
「俺の知らないことはどうにもならないね・・・お前が教えたらいいだろ?」
「一緒に苦楽を共にしてるのに、冷たいんだな」
「甘い顔してたら、つけあがるからな、厳しくいかないと・・・」
「ね、こいつたまに引きちぎりたくなるんだよ」
メルバが憎たらしそうにそう言った。
俺は、この凸凹コンビが、おかしくてしかたがなかった。
つづく。
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