脱落者朋美【アイズシーカー】
得体の知れないドリンクがある部屋に無事辿り着いたプレイヤーもいれば、脱落者もいた。
四十代の朋美は、アイズシーカーの恐怖に怯え、身震いしながら慄然としていた。
拳銃を握り締める手が小刻みに震えている。
腹に悍ましい口を持つ化け物は、手探りで生きた獲物を探し出そうと長い腕を揺らし、前進する。
目から溢れる涙に頬を濡らすが、ここから抜け出せる術はない。
迫りくる恐怖に気持ちが焦った朋美は、絶対にしてはならない行動に出てしまう。産まれて初めて手にする拳銃をアイズシーカーに向かって発砲したのだ。放った銃弾は狙った敵に掠りもせず、見当違いな方向に飛んでいった。
心の中で夫に助けを求めるかのように結婚指輪に触れ、号泣する。
「助けてぇ……」
賞金目当てでこのゲームにログインしたことを深く後悔した。
けたたましい音だけを響かせる結果になってしまったその直後、アイズシーカーは腹の口を大きく開け、一斉に朋美に襲い掛かった。
だが、朋美の肉体ではなく、眼球一点を狙って長い腕を突き出す。
「グルルルル……」
「いや―――――! 来ないでぇぇぇぇ!」
一匹のアイズシーカーが細く長い指先を朋美の双眸に喰い込ませ、眼球を抉り出した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
朋美は今まで感じたことのない激痛に悶え、のたうち回る。
眼球を手に入れたアイズシーカーは満足そうに目の窪に嵌め込み、室内をきょろきょろと見回していた。
暗黒の世界に生きる光を知らない彼らはどうしても眼球が欲しかったのだ。お目当ての眼球を手に入れ損ねたアイズシーカーは、床で苦悶する朋美に群がり、生きたまま新鮮な肉体を貪り喰い荒らし始めた。
薄っすらと脂肪がのった肉を引き裂き、腹の口に運ぶ。大腿部の太い骨もバリバリと噛み砕く、強靭な力。青白い体が真っ赤に染まっていく。
断末魔を上げた朋美は、激痛によるショック死で命にピリオッドを打ったのだった―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます