第22話

会いたい。


そんな恋人同士が使うセリフを、最悪な気分で訴えていた。彼はどこで会いたい?と優しく聞いてきた。私は沈黙する。どこで会いたいのかいつもみたいに浮かばない。


ファミレスは?


ぜったい嫌。


ぜったい嫌、と彼氏が電話口で繰り返す。

でも会いたいんだね?

会いたいけれど、今日じゃ、なくても、いい。

大学で明日会えるよ。

話したくない。

二人して沈黙する。


一回電話は切るよ。

うん。

切ってほしくなかった気もする。でもつなげておきたくもない。繋がると言う言葉に幻想と、嫌悪が弾ける。


LINEにするから、なんでも送って、思ってること。


私はLINEという響きに絶望した。あれを、言葉にするの?メッセージで?

じゃあ会う。


じゃあ、そういえば今どこ?


家の最寄駅。


嘘をついた。本当は、待ち合わせにしたいと思っていたカラオケボックスの前。かなり歩いた。


じゃあ、安心かな。帰るまで電話つないどく?


ううん、いまは。なにもつないでいたくない。


・・・・・・体調とか、気持ちの問題かもだけど、わかった


通話を切った。怒ったかもしれない。途中のスーパーで安く買った1・5リットル、ポカリスエットを吐き気がするたびちょこちょこ飲みながら、熱中症対策に飲んでいる。


思い出して吐き気がする。自分はこんなに潔癖だったなんて。カラオケボックスまで歩いたのは、あの、擦れた感触を歩行とジーンズの衣擦れで忘れたかったから。でも余計に、嗚呼、真中が嫌いだ。


次の日のバイトを私は熱射病ということで休んだ。店の人には心配された。え?大丈夫?「友達と一緒だったから大丈夫です」。そう店の人に告げた。ピンチヒッターで真中に電話が行く。真中も「熱射病じゃなくて、室内の熱中症で休みます」と返事をしたらしい。え、大丈夫?店の人は聞く。「友達と一緒だったから平気です」。


熱射病と熱中症と友達と、

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