第10話

東京で就活していたという、男子高出身の真中と出会ったのは、百均で働き始めて三ヶ月くらいか。


フリーター女は、どうやら私に憧れと、焦りを抱いている様だったが。仕事をなんとか一生懸命教えようと努力していた。年齢を聞いたらやはり三つ上。一流企業の正社員は無理でも、努力すれば望みはある年だ。私は、フリーター女を憐れみ始めていた。

貸した本はなんと四日で戻ってきた。丁寧に一巻からつまれた状態で。フルタイムの仕事終わりに、一日一冊ずつ読んだのだろう。


認めることにした。彼女は、どうやら話に聞くと大変困った人間ではあったらしいが。

この店の貴重な労働力。

雇える数にも限りがあって、当たり外れのハズレを踏むとそれがデカい!店長補佐の言葉だった。


私は、自分はアタリだと信じている。


ある日の飲み会というか、未成年もいたので食事会で、会の終了後。

奥様方と学生で会話のグループが分かれた。

フリーター女は困惑していた。

困った様に、悲しそうに、学生たる私たちから離れ、主婦達のお料理や旦那の愚痴の輪に合流して行った。

私達はお互い知っているお店の感想、狙っている就職先への意欲、通っている専門学校の試験、全員の進路が決まったらディズニーランドかロープウェイの紅葉や日帰り温泉。どこかに行こう!一緒に。

大学について話の最後を締め括った。


フリーター、小林彩美は黙って主婦の人たちのお食事会の感想を聞き、不器用に手を振って、歩きで夜の町を帰って行った。


私は気づいていた。この食事会には出席していなかったが、フリーター女、二十五歳。

小林彩美は真中のことを好いている。

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