長髪論

(※からぷり時代に書いた「なんなら貴方の髪の毛を煎じて飲みたい」の改稿版になります)


 私は長髪が好きだ。二次元・三次元・性別問わず、髪の長い人が好きだ。どれくらい好きかというと、たとえその人が無職で、ギャンブル狂で借金まみれで、恋愛関係にだらしがなく、人として最低と呼べる性格であっても、めちゃくちゃ綺麗な髪をお持ちならすべて許せてしまう、それくらい長髪が好きだ。


 だから私は綺麗な長髪をお持ちの方を見かけるために、心の中で思わずにはいられない。――なんなら貴方のその髪を煎じて飲みたい、と。


 長髪のすばらしさは、何と言ってもその長さにある。腰より上の長さが理想的だ。髪の色は何でも良い。ただ、清楚系の黒髪より、金髪でギャルギャルして、いかにも遊んでますよーって子の方が好きかもしれない。陰キャに金髪ギャルは永遠の憧れなのだ。


 髪型も特にこだわりはない。下ろしていても、結んでいても、その艶やかなキューティクルに変わりはないからだ。しかし、普段下ろしている子がイベントなどで髪をくくっているときのギャップはまた破壊力がある。


 私の友達にAちゃんという、それはもう惚れ惚れするくらい綺麗な髪をお持ちの子がいるのだが、彼女が良い例である。いつもは下の方でゆるく結んでいる彼女だが、運動会だとポニテにしている。そして、その髪が短距離走で揺れる揺れる。ああ、その軌跡が美しい。拝まずにはいられない。私も昔は髪が長かったのだが、永遠にその、完璧に手入れされた艶やかな長髪にはかなわないと思う。Aちゃんの髪は撫でたらすべすべなのだ。まるでシルクのように。


 Aちゃんの話をもう一つ。去年だったか、一昨年だったか。私たちは夏休み、コロナが落ち着いている間を狙って(と、いうか偶然コロナの波が収まっていたのだが)合宿たる物へ行った。感染拡大防止のためか、4人部屋を2人で使うと言う贅沢をさせてもらった。部屋はもちろんAちゃんと一緒だ。


 温泉もあったのだが、私たちは部屋風呂派なのでそうした。そして、私は冗談:本気=4:6でAちゃんに「(君の)髪乾かしていい?」と言った。彼女は不思議そうだったが、許可をいただいた。控えめに言って神だと思う。そういうところが好きなのだが。


 そういうわけで私はあこがれの髪を乾かすシチュエーションを、しかもAちゃんとできたのだ! そして、気づく。「美しい髪の人は、濡れていてもなお素晴らしい!」。濡れた髪特有のしっとり感はもちろん。少し儚さが加わって、さらに長髪の美しさに磨きがかかっているのでは??? うーん、素晴らしい。この愛すべき長髪よ。


 あ、私と彼女は同じベッドで寝たのだが(ダブルベッドがふたつもあるのに!)シーツにばさっと広がった髪もまた良いものだった。


 ところで、日本には短髪の男性が多いと思う。長髪男子に皆さんはどんなイメージをお持ちなのだろうか。別にイケメンやイケボでもなくていいのだ。清潔感がない? なんかチャラそう? うるせえ、ちゃんと手入れをしていて、それなりの長さがあれば私は幸せなんだ。なのに、日本では滅多に髪の長い男性を見かけない。私が引きこもりで、女だらけの環境――小中高どれも女が七割以上を占めている――で生きてきたからかもしれない。が、本当に見かけないのだ。知ってるとすれば、昔お世話になった男の娘のお兄さんと近所のスーパーのバイトのお兄さんくらいだ。


 と、いうかそもそも二次元にも、時代劇や中華ファンタジーを除いて長髪キャラが少ない気がする。しかも主人公格だと尚更。ぱっと思いつくのはハガレンのエドとテイルズオブヴェスペリアのユーリくらいだ。あと、長髪かどうかは微妙なラインだが、最近の作品でいえばすずめの戸締りの草太さん。ギリ結べそうだから、長髪とも言えなくはない……。


 これはなぜだろう?長髪キャラには短髪キャラには持ちえない利点がごまんとあるのに。


 例えば、差別化。まず、この短髪キャラあふれる時代に長髪の主人公というだけで、シルエットで「あ、彼は!」と思えるのではないだろうか。


 また、物書きさんにはわかるかもしれないが、長髪は文字数稼ぎに使える。髪が揺れる・髪をかき上げる・髪を耳にかける・髪がなびく・髪を一つにまとめる/ゴムを咥える・髪が踊る・宙を薙ぐ、などなど。日常のほのぼのシーンから手汗握る戦闘シーンまで。汎用性が高いから本当に便利である。


 あと、その美しい髪が短くなってしまうのは大変残念だが、何か大きな決断を下すときに髪をバッサリ切るのもまた良い。覚悟を感じられる。


 流行らないかなあ、長髪男子。もっと増えないかな、長髪女子。


 短髪も短髪でイケメン・美少女だったらそれでよいのだが、それでも私は長髪が好きだ。だから、私は美しい髪の毛をお持ちの方にはもう一度言いたい。


「なんなら貴方の髪の毛を煎じて飲みたい」。


 次回予告『女子校とバレンタイン論』。女子校にバレンタインは関係ない?いいえ、文化祭より盛り上がる一大イベントです。

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