第7話 ・入学式。1


入学式の前日に荷物を寮に部屋に入れた。

庶民寮は4人相部屋で二段ベッド。

グランドと同室で在ったのはうれしかった。

オキノ領内のグエルチーノ村出身のゴードン。

亜麻色髪刈上げ、14歳だと名乗った。

軍人を目指しているらしい。


エンテゾンフ町出身のトライバー。

髪の毛は灰色で細身の未だ若い、14歳ぐらいだろうか?

若いのに顔色が悪い。

錬金術師の家で魔法学校に錬金術を学びに来たそうだ。

グラントと同郷なので顔見知りらしい。

王都の錬金術師は顔色が悪い…。

そんな感じがする。

もっとも、ご領主様も錬金術を極めているので顔色が悪いと錬金術師を目指すのか。

錬金術士になると顔色が悪くなるのか不明だ…。


朝起きて同室の4人が朝食に向かい、混雑する食堂で簡単な食事。

それにバルマーさんが加わる。

並んで皿とカトラリーを取ってスープにパンと梨。

「庶民寮の朝は毎朝これだからな。うんざりするかもしれんが慣れろ。エバールの奴はコレが嫌だから卒業したのかもしれん。今は下宿から通いだ。」

「それは無いだろう、教会でもコレで十分じゃないかな?ホランドは?」

そうかな…。

大き目の丸いパンは全粒粉で硬めに焼いてある。

スープは野菜が細かい…。

根野菜も混じっているが…。

肉が少ないような…。

「ホランドは校庭で鍛錬だ。何時も遅れてくる。」

「鍛錬?」

ゴードンが尋ねる。

「ああ、アイツは教会の祈りもソコソコに剣の鍛錬だ。トーナメントにのめり込んでいる。」

「トーナメントか…。」

悩むゴードン。

「ほら此処にもソコにも剣の道を進む若者がいるぞw」

グランドが茶化す。

指す先に未だ髪の乾いていないホランドさんが食堂に入ってきた。

「おはよう、諸君、神の教えを忘れなければ剣を握っても神は許してくれるさ。」

ホランドさんが皿とパンを持って加わった。

「おはようホランド。冒険者にでも成る心算か?」

「悪くないな…。まあ、何とかなるさ。」

「ホランドさん、僕も剣の道を志しています。軍人を目指してます。」

ゴードンが席を立つ。

「おう、ゴードン君、良いね。一緒に朝の鍛錬に加わろう。意外と多いぞ魔法使いなのに剣の鍛錬する奴。正し貴族には近づくなよ?」

「はい!」

「ああそれから、学園の食堂ここの食事は肉が足りないから何処かで食料を調達しろ。肉だ肉。筋肉が付かないからな。」

やはりそうか、邦国の料理は肉肉しい。

「え?肉?」

困惑顔のゴードン。

違和感の理由はわかった。

楽しくなる。

「ははは、そう言えば我がご領主様は嘗てこう仰られた。兵隊だったら肉を喰って太くなれ。だそうです。」

確かに言った。

「はははは、そりゃいい。」

「噂通りビゴーニュ辺境伯の言いそうな事だな。」

全員が笑う。

「だそうだ、トライバーどうした?」

スプーンが止まっているトライバー、栄養足りてない顔だ。

「いえ…。嫌いな野菜が…。」

「「「お前はしっかり食べろ!」」」

雑談で朝が終わると…。

校庭に集まり、入学式が始まる。

生徒が多いので一般新入生は校庭だそうだ…。

貴族は何処かの講堂で入学式だそうだ。

教壇に上がる校長…。

教授に指導生徒…。

「う!」

壇上の見覚えのある女子生徒と目が合った!

微妙に視線を逸らすが…。

檀上の紹介でハイソクラスの代表生徒だと名乗った。

エリザヴェータ=フランチェスカ。

ご領主様の王都の本妻の子だ…。

こっちを見て薄ら笑いで見下ろしてる…。

母が情婦であっちに取って腹違いの妹がいるなんて軽蔑の対象だろう。

式典が終わると…。

そのまま校舎の教室に戻る。

関わり合いになりたくない。

だが、どうしよう?本は返してほしい。

自分の席の机に顔を伏せていると…。

「バリエンテくんどうしたの顔色悪いわよ?」

「ああ、リリーさん。ちょっと…。心配事を思い出した。叫びだしたい気分だ…。」

「あ、解るわ。」『黒歴史ね?』

「どうしてバリエンテは沈んでるんだ?」

グランドが訪ねてくるが…。

そっとしておいてくれ。

「嫌な事を思い出して勝手に沈んでるのよ。あ、先生が来た、その内、浮かんで来るから。」

リリーさんの言葉が結構助かる。

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