第31話 絶対的な理論

ガトリングドラゴンの攻撃で確実に戦況は変わった。フロイのエースモンスターのパラドックスを破壊できて奴の場はがら空き。そして俺の場にはまだ2体のモンスターがいる。


「《七星の首飾り》・・・そいつはお前が1ターン目から伏せていたカード。そのカードをオーバー・ザ・レインボーを守るために使うこともできた。お前は最初からガトリングドラゴンを守るためにそのカードを温存していたのか?」

「まぁ、あの時はダークナイトで決着をつけることだけ考えていたから・・・。だが結果的にガトリングドラゴンを守ることができた。ヘヴィメタさんから託されたこのカードだけは最後まで守り抜く!」

「俺にはわからないな。確かにそいつのおかげで《背徳の血統》の効果に阻害されずに攻撃することができたが、そのカードはお前のデッキと別段相性がいい訳でもない。デッキコンセプトを崩してまで入れるべきカードなのか?」

「デッキに入れるカードは一概いちがいに強さや相性だけを考えればいいという訳でもないだろ。そのカードを使って戦いたい、そんな素朴な理由も十分デッキに入れる理由になると思うがな」

「そんなに大事か?仲間とか絆というものが」

「俺は誰かに自分の考えを強要したりはしないけど、何よりも大事なものだ。ヘヴィメタさんにもそう教わったし、俺自身も骨身にみてる」

「それがお前の答えか」


「フロイの場のモンスターはいなくなり、ユーグの場のダークナイトとオーバー・ザ・レインボーはまだ攻撃可能です!《背徳の血統》はモンスターと戦闘する場合にダメージを0にできますが、直接攻撃ダイレクトアタックのダメージは無効にできません!2体の攻撃力の合計は4500!すべての攻撃が通ればユーグの勝利が決定します!」


「バトル再開!オーバー・ザ・レインボーで直接攻撃ダイレクトアタック!」

トラップ発動!《月影の秘文》!このカードはデッキからレベル1の《月影賢者げつえいけんじゃ》モンスター一体を特殊召喚する!《月影賢者―リザルト》を特殊召喚!」

場に新たなモンスターが出現してしまった。これで《背徳の血統》の効果が有効になり戦士族モンスターでは攻撃しても無意味。

「バトルは中断。カードを1枚伏せてターンエンド」

「この瞬間 《月影の秘文》の効果で特殊召喚されていたリザルトは手札に加わる」

リザルトが手札に・・・これはまずい。

「俺のターンドロー!リザルトの効果発動!自分フィールドにモンスターがいない時手札から特殊召喚できる!この方法で特殊召喚した時、墓地から《月影賢者》モンスターを一体手札に加える!これで《月影賢者―プルーフ》を手札に加える!

そしてプルーフの効果発動!場に《月影賢者》がいる時、手札から特殊召喚できる!この方法で特殊召喚に成功した時、デッキからレベル7の《月影賢者》を手札に加える!これで《月影賢者―ゴッドアナライズ》を手札に加える!

そしてリザルトとプルーフをリリースしてゴッドアナライズをアドバンス召喚!」

2体の賢者の魂を供物に白のローブを纏った神々しい姿の女神が顕現する。神の威光とも言えるまばゆい光であらゆる真実を照らし出す。表情は笑みをたたえているが、一切の不正を許さない厳格さが滲む。攻撃力は2500とまあまあな数値だが、こいつには恐るべき効果がある。


「ゴッドアナライズの効果発動!アドバンス召喚に成功した時、全ての相手モンスターをデッキに戻す!」

「くそっ!綺麗な顔してやってることエグいな!」

ガトリングドラゴンは《七星の首飾り》に守られてモンスター効果を受けないが、俺のダークナイトとオーバー・ザ・レインボーは強烈な光を浴びせられてフィールドから姿が消えてゆく。

ダークナイトもオーバー・ザ・レインボーも墓地にいれば復活することができるが、デッキに戻ってしまうと再び召喚するのに手間がかかる。俺のエース達は封じられたも同然。

「そしてゴッドアナライズはこの効果でデッキに戻ったモンスター一体につき攻撃力を300上げる!戻ったモンスターは2体!よって攻撃力は600上がり3100になる!

バトル!ゴッドアナライズでガトリングドラゴンに攻撃!」

「《七星の首飾り》の効果発動!レベル5以上のモンスターと戦闘する時攻撃力を700アップする!ガトリングドラゴンの攻撃力は3500!攻撃力3100で攻撃してきても返り討ちだ!」

「そんなことはわかっている!リバースカードオープン!《運命のことわり》!ライフを半分支払い、相手の墓地から魔法、トラップカードを一枚選択して発動する!俺が選択するのは《孤高の烈火》!」

「何っ!?」

「こいつの効果はお前が一番よくわかっているはずだ。相手モンスターの攻撃力がカード効果で上がった時、その数値を自分のモンスターに加える。これでゴッドアナライズの攻撃力は700加算されて3800!さらにデッキからカードを一枚ドローする!」


フロイLP2900→1450


「フロイは《七星の首飾り》でガトリングドラゴンの攻撃力が上がるのを見越して手を打っていたようです!相手の墓地のカードを利用して危機回避するタクティクスは見事としか言えません!」


「バトル続行!ゴッドアナライズでガトリングドラゴンを攻撃!アブソリュートロジック!」

トラップカード 《孤高の意志》発動!これでガトリングドラゴンはこのターン戦闘では破壊されない!」

「だがダメージは受けてもらう!」

「くっ!・・・」

ガトリングドラゴンの攻撃力は3500でゴッドアナライズは3800。その差の300が俺のライフから削られる。


ユーグLP1600→1300


「バトルフェイズ終了。これで《七星の首飾り》の効果が切れてガトリングドラゴンの攻撃力は2800に戻る。さらにカードを一枚伏せてターンエンドだ」


「ユーグとフロイのライフは1300と1450でほぼ同じですが、フロイのフィールドのゴッドアナライズは次のターン確実にガトリングドラゴンを破壊してきます!このターンに何らかの手を打たなければユーグに勝機はありません!」


確かにこのターンが勝負の分かれ目。俺はまだデステニードローを使っていない。このドローで起死回生のカードを引き当てることはできるが、ゴッドアナライズにはドローフェイズに相手がドローしたカードを確認できる効果がある。せっかくの逆転のカードを知られてしまうのはしゃくだが仕方ない。

全身に力を込める。金色こんじきのオーラを纏い、全神経を一枚のカードに集中させる。

「俺のターン、デステニードロー!!!」

引いたのは《孤高のプライド》。こいつを使えば勝てる・・・

「永続 トラップ 《フューチャーデリート》発動!このカードはカード名を言い当てることで相手がドローフェイズにドローしたカードを除外できる!俺は《孤高のプライド》を宣言!」

「すでに《フューチャーデリート》をセットしていたのか・・・」

奴の宣言は的中している。引いたカードを確認できるんだから外す訳がない。

せっかくデステニードローで引いたカードも除外されてしまった。


「フロイの必殺コンボが炸裂!ゴッドアナライズと《フューチャーデリート》が揃ってしまうと相手はドローしたカードを使うことができません!ユーグの手札は一枚!果たして逆転する手段はあるのか!?」


「ははは・・・フロイは本当に強いな」

「世辞を言ったところで当然手加減はしない。負けが見えてるなら降参サレンダーしたらどうだ?」


ああ・・・今度ばっかりは勝てないかもな・・・・・










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