第30話 託されし希望

「《背徳の血統》の効果で戦士族主体のユーグのモンスターの攻撃は封じられてしまいました!果たして突破する手段はあるんでしょうか!?」


「戦士族モンスターの攻撃力を上げて勝利を狙うお前におあつらえ向きのカードを用意しておいた。パラドックスでモンスターを破壊しつつ《背徳の血統》で防衛線を張る。これがお前を破る為の結論だ」

「ああ、こいつは簡単にはいかないな・・・」

「どうした?さんざん息巻いておいて怖気づいたか?」

「怖いって言われたらそのとおりだけど・・・それ以上に嬉しいぜ!俺に勝つためにフロイがしっかり対策を練っていたとはな!」

「勝つためにあらかじめ戦略を練るのは当然のことだ。お前だってそうだろ?」

「その通りだ!この程度じゃ俺のデッキを攻略したとは言わせないぜ!

俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」


「パラドックスは温存されたままフロイにターンが移りました!このままではユーグが圧倒的に不利です!」


「俺のターンドロー!パラドックスの効果発動!1ターンに一度相手モンスター一体を破壊する!今度はダークナイトに消えてもらう!」

パラドックスの呪文でダークナイトまで破壊された。これで俺の場はがら空き。

「バトル!パラドックスで直接攻撃ダイレクトアタック!ヴィクトリーロジック!」

パラドックスが持っている杖から魔力が解放されて俺に放射される。パラドックスの攻撃力2400が俺のライフから削られる。


ユーグLP4000→1600


「ユーグのライフが大きく削られてしまいました!このままワンサイドゲームになってしまうんでしょうか!?」


「・・・俺はこの瞬間を待っていた!トラップカード《反撃のジャスティス》を発動!直接攻撃ダイレクトアタックでダメージを受けた時受けたダメージ以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから特殊召喚できる!ダメージは2400。来い!《虹彩騎士こうさいきし―クリアナイト》!こいつの攻撃力は1500だ。

クリアナイトの効果発動!特殊召喚に成功した時デッキから《虹彩騎士》モンスター一体を墓地に送る!これで《虹彩騎士―バイオレットナイト》を墓地に送る」

「なるほど・・・《反撃のジャスティス》の効果を使うためにあえてパラドックスの攻撃を受けたのか。前のターン、オーバー・ザ・レインボーを蘇生していればパラドックスの直接攻撃ダイレクトアタックを受けずに済んだ」

「お前に勝つためならどんなリスクも覚悟するぜ!」


「まさに背水の陣!ユーグは大きなダメージを受けましたがクリアナイトを召喚し、次のターンに繋ぎました!」


「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ。

ユーグ、このデュエルを通して感じたことを言ってもいいか?」

「どうした勿体もったいぶって。言いたいことがあるなら遠慮なく言えよ」

「お前は口ではデュエルに勝ちたい、全力でデュエルを楽しむと言っているが本当にそうなのか?お前からはこのデュエルの決着を先延ばしにしようという思惑が見える。現にデュエルの最中何の意味のない会話でデュエルを遅延していた。お前は無意識に結果を出すことを恐れている。デュエルに勝利して勝者の責任を果たすことも敗者の苦しみを背負うことからも逃げようとしている」

「ほんとに・・・痛いとこついてくるなぁ・・・。

確かに一理あるかもしれないな。今日の俺は無駄話が多いと自分でも自覚してる。でも、それは決着を望まないからじゃない。うまく言えないけど・・・」

「お前はまだまだ甘い。そんなことではプロの世界では勝ち抜けない。

デュエルにどんな思想を持とうが自由だが、プロの世界は結果が全てだ。さっきのヘヴィメタとの試合のように敗者に情けをかける余裕なんてない。お前の感情論は枷になる」

「ああ、わかってる・・・」

「俺も無駄話が過ぎてしまった。デュエルを続けよう」

わかってるさ・・・プロになったからには勝たなきゃいけないことくらい・・・。

でも俺はやっぱり求めてしまうんだよ、勝利だけじゃない何かを。

「俺のターンドロー!

お前に見せてやるよ、ヘヴィメタさんへの想いは決して枷なんかじゃないってことを

墓地の《虹彩騎士―バイオレットナイト》の効果発動!このカードは自分の場に《虹彩騎士》がいる時墓地から特殊召喚できる!

そしてクリアナイトとバイオレットナイトをリリースしてこのモンスターをアドバンス召喚!行きますよヘヴィメタさん!《重機装甲ヘヴィメタル―ガトリングドラゴン》!」

だと!?」

フィールドに5つのシリンダーを携えた異形の兵器が現れる。これがヘヴィメタさんから受け取った希望カード。俺の最強の切り札!

「さらに墓地のオーバー・ザ・レインボーの効果発動!墓地から《虹彩騎士―マリンナイト》、《削りゆくさだめ》、《反撃のジャスティス》をゲームから除外して墓地から特殊召喚!

さらにダークナイトの効果発動!墓地から《虹彩騎士―バイオレットナイト》、《虹彩騎士―クリアナイト》を除外して墓地から特殊召喚!」


「これはすごい!ガトリングドラゴンと二体のモンスターをいっきに召喚しました!ガトリングドラゴンはヘヴィメタが使っていたカード!これは二人の絆を象徴する盤面です!」


「《背徳の血統》で戦士族は戦闘できないがガトリングドラゴンは機械族のモンスターだから戦闘可能だ!バトル!ガトリングドラゴンでパラドックスに攻撃!」

「忘れたか?パラドックスの効果発動!ガトリングドラゴンを破壊!」

「読めてるぜ!!トラップカード《七星の首飾り》発動!レベル7のモンスターに装備され、装備モンスターは相手モンスターの効果を受けない!こいつをガトリングドラゴンに装備してパラドックスの効果は不発に終わるぜ!」

「パラドックスの効果を無力化してきたか・・・」

「バトル続行!《七星の首飾り》のさらなる効果!装備モンスターがレベル5以上のモンスターと戦闘する時、バトルフェイズ終了時まで攻撃力を700上げる!これで攻撃力は3500だ!パラドックスは撃ち抜かせてもらうぜ!」

ガトリングドラゴンが放った弾丸がパラドックスに命中し爆散する。ガトリングドラゴンの攻撃力は3500でパラドックスは2400。その差の1100がフロイのライフから削られる。


フロイLP4000→2900


「《背徳の血統》でユーグの攻撃は封じられたように思われましたがとんでもない奇策です!」

会場も歓声が響いて沸いている。さっきの試合でヘヴィメタさんがアウェイだったとは思えない程に。ガトリングドラゴンがこれだけの脚光を浴びる所をヘヴィメタさんに見せてやりたかったぜ・・・。










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