第11話 彼が夢見た景色
次の日にチームドランカードの三人は集まりお互いに昨日の暴言を謝りヘヴィメタさんとハーピィさんは仲直りすることができたが、ハーピィさんは考えたいことがあると言ってチームでの活動をしばらく休止することを提案した。確かに今のままがむしゃらに試合をしていてもいい結果がでるとは思えないし、また喧嘩になってしまうかもしれない。ここは俺もヘヴィメタさんも賛成した。今日で活動休止になってから5日が経った。ハーピィさんについては俺にはどうにもできない。付き合いの長いヘヴィメタさんに任せるしかない。今頃二人で旅行にでも行ってるはずだ。チームドランカードが結成されてからほとんど休みなんか取らずにずっとデュエルに明け暮れて、たまに休みがあってもチームでミーティングをしたり練習試合をしていて忙しい毎日を送っていた。時にはリフレッシュも必要だろう。
「あーあ暇だなぁ」
いつ活動が再開するかもわからない宙ぶらりんな状態。普段なら一人でいるときはデッキの調整をしたりカードの勉強をしたりするけど、今やっても身が入らないので一旦やめた。スクールを卒業して3年経つけど一度も地元に帰っていない。たまに両親とエリアルに手紙でやり取りする程度だ。スクールの皆とクロス先生元気にしてるかなぁ・・・。
よし!久しぶりに地元に帰ろう!せっかく時間があるんだし俺にも気持ちを整理する時間が必要だ。エリアルやクロス先生に会って相談すれば何かが変わるかもしれない。
でも今は夕方だ。明日朝一の汽車に乗れば3時間くらいで到着するはずだ。遠出の準備をしないといけないけどひと眠りしてからにするか・・・。
「フツツカモノですが・・ど、どうか・・ユーグ・・さんを・・よろしくお願いします!」
「エリー、そんなに緊張しなくていいよ」
「フツツカモノって結婚のあいさつ?」
ヘヴィメタさんとハーピィさんがゲラゲラ笑っている。エリアルはただでさえ慣れない挨拶をしているのに二人にからかわれて恥ずかしくて顔が赤くなっている。
「二人とも笑いすぎですよ!」
「あぁ、ゴメンゴメン」
「でも羨ましいわぁ。ユーグ君にこんなかわいい彼女がいるなんて」
「「・・・・・」」
俺もエリアルも恥ずかしくなって黙ってしまった。
「キャーーエリアルちゃんかわいいー!!」
ハーピィさんが思いっきりエリアルに抱き着いた。
「HA☆NA☆SE!・・いや離してください!エリアルが苦しそうです!」
「えーだってかわいいんだもん」
「ていうかハーピィさん僕の実力見るためにテストデュエルするって言ってましたよね?まだやらないんですか?」
「うーん、それもしたいけど・・・ねぇ、このデュエルにエリアルちゃん賭けない?」
「・・・何言ってるんですか?」
「だって私もエリアルちゃんと付き合いたいんだもん」
「付き合いたいんだもん、って・・・ダメです!エリアルは僕の恋人です」
「おお、やったらいいじゃねぇかラブデュエル。俺も二人の本気が見たいしな。応援してるぜ」
「ヘヴィメタさん、変に焚きつけないで下さい!」
「よーし、エリアルちゃん嫁にするために私頑張る!見ててねエリアルちゃん!」
「・・・・・はい。頑張ってください」
エリアルがはにかみながらハーピィさんを応援した。俺は呆れながらもエリアルを取られまいとデュエルを承諾する。
「あーもうテストデュエルでもラブデュエルでもいいや。やるからには絶対勝ちます!」
「「デュエル!!」」
「私は《
キャットの攻撃力は1300、パンサーは1400だが《
「僕のターン、ドロー!《
「早速出てきたわね、ユーグ君のエースだったよね」
「ええ、僕の新たなエースです」
「《孤高の誓い》はそのモンスターを召喚するための伏線ね。いいわね、見せてちょうだい!あなたの実力!」
「行きます!オーバー・ザ・レインボーでパンサーを攻撃!」
「いいのかなー?パンサーは攻撃力2600であなたのエースの攻撃力は
2500だけど」
「僕の狙いはこれです!速攻魔法 《孤高のプライド》を発動!自分のモンスターが自身より攻撃力の高い相手モンスターと戦闘する時攻撃力を倍にする!さらにオーバー・ザ・レインボーはカードの効果で攻撃力が上がった時攻撃力を倍にする効果があります。これでオーバー・ザ・レインボーの攻撃力は10000になる!」
「甘いわね!
《孤高のプライド》は自身より攻撃力の高いモンスターとバトルしない限り効果が適用されない。キャットとオーバー・ザ・レインボーの攻撃力は共に2500。《孤高のプライド》の効果は適用されず攻撃は相打ちに終わる。エースモンスターのオーバー・ザ・レインボーを失ったが向こうもキャットがフィールドから消える。
「だが、これで《
「それはどうかな?パンサーの効果発動!1ターンに一度このカード以外の《
《幻惑の舞》は攻撃対象を変更するか攻撃を無効にする効果のどちらかを選んで発動する。もし攻撃を無効にすれば互いのモンスターは破壊されずオーバー・ザ・レインボーがフィールドに温存されていた。オーバー・ザ・レインボーの攻撃を受けてキャットが破壊されてもパンサーの効果でキャットは復活できる。つまりオーバー・ザ・レインボーを破壊するためにあえて攻撃を受けたということ。ここまでの計算を瞬時にできる判断力・・・。
「さすがですね。アフターケアも万全ですか」
「ええ、《
これがプロのデュエルか・・・ハーピィさん強いぜ!これで再び相手のフィールドには攻撃力2500と2600のモンスターが並んだ。俺のクリアナイトの攻撃力は1500。到底太刀打ちできない。
「僕はカードを二枚セットしてターンエンドです」
「二人ともいい調子だ!」
「ありがとうヘヴィメタ!絶対勝って見せるわ!」
エリアルが不安そうに俺の方を見ている。俺は微笑みながら彼女に目配せする。「大丈夫、策はある」と言うように。
デュエルの途中で目が覚めた。どうやら夢でもデュエルしていたらしい。確かチームに入った直後にこんなデュエルやったが、結局どっちが勝ったんだっけ?寝ぼけていて記憶がはっきりしない・・・。
外はもう明るくなっていた。しまった寝過ごしちまった!今日は実家に帰ろうとしていたのになんの準備もしてない!とりあえず朝食でも摂ろう。朝食のパンを齧りながら急いでるはずなのになぜかいつもの習慣で新聞に目を通す。まだ寝ぼけているからなんとなく流し読みしていたが・・・。
ある記事を見た瞬間俺の眠気は一気に醒めていた。何度か読み返してそこに書いてある不都合な事実が読み間違いじゃないことを確認すると俺は実家に帰る予定をキャンセルして家を出た。
その新聞の見出しには「稀代の天才デュエリスト ヘヴィメタ逮捕」と書かれていた。
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