第4話 麗しの問題児「エリアル」
デュエルスクールに入学してから今年で6年目。とうとう卒業まで残り数か月になった。前の世界の貯金もあるから俺のデュエルの経験値はかなり上がったし前の世界では決してまじめにやってなかった勉強もこっちの世界では精一杯やってきた。おかげで成績は常に上位に入っていたし望めば進学することもできた。クロス先生も推薦状を書いてくれると言ってくれている。
だが俺は迷っていた。このまま先生の言うとおりに進学を決めるべきか。ヘヴィメタさんからチームに入らないかと誘いを受けているからだ。俺のことを信頼して一緒に活動していこうといってくれる先輩がいる。ヘヴィメタさんは俺にとっては
「なるほど、こうやって考えればいいのね。ありがとうユーグ君!ユーグ君は勉強教えるのうまいね」
「そんなことないよレイちゃん。わからなかったらまた聞いてよ」
今日もクラスメイトに勉強を教えていた。俺は他のクラスメイトより3歳年下だが、今ではそんなことを気にする人はいない。入学当初は特待生の俺に嫉妬してつんけんした態度をとる奴もいたけど、今では皆と仲良くやっている。確かに成績優秀なだけの奴なら嫉妬されても仕方ないが俺は学校行事には積極的に参加していたし、クラスに勉強を教えたりしている内にいつのまにかクラスの兄貴的な立ち位置になっていた。
「ユーグ、ちょっといいかな?」
「どうしました、クロス先生」
「実は今年入学してきた生徒に手を焼いていてね・・・。レオン先生が受け持ってるんだけどなかなか授業を聞いてくれないし、デュエルのルールもろくに覚えてくれないみたいなんだよ。君は教えるのも上手いし人にも好かれるからもしかしたら彼女もちゃんと聞いてくれるんじゃないかと思ったんだが、もしよければ彼女にデュエルの授業をしてくれないかな?」
「えっ、僕がですか?」
「もちろん無理にとは言わない。でもユーグならできそうだし、君にとってもいい経験になると思うんだ。レオン先生も困ってるし、よかったら頼まれてくれないかな?」
「うーん・・・」
正直厄介事を持ち込まれているみたいであまりいい気はしない。断ってもいいけどクロス先生は俺を信頼してくれてる。日頃先生にはお世話になっているし、その恩に報いたい気持ちもある。それに俺はこの世界で「努力する」と決めた。面倒事から逃げていたら成長できない
「了解しました。僕がその子にデュエルのコーチをしてみましょう」
「ありがとう!君ならきっと彼女も心を開いてくれるよ!」
こうして今日から放課後はデュエルの個人指導をすることになった。先生のいうことを聞かないじゃじゃ馬姫みたいだけど、俺の手にかかればちゃんとデュエルしてくれるだろう。俺は教え方もうまいって褒められてるしな。
授業が終わって教え子との対面の時間がやってきた。名前は「エリアル」という青い髪と青い瞳が特徴の女の子だ。いくら学年は俺の方が上とはいえこっちも態度には気を付けないとな。校庭に向かいそれらしい人物が見えてきた。・・・ん?なんか思ったよりも綺麗な子だ・・・。大きなリボンのついた可愛らしい服も相まってまるでお人形みたいな容姿。とてもこんな子が反抗期真っ盛りのじゃじゃ馬姫とは思えないが・・・。
「えーと、君がエリアルちゃんだよね?僕はユーグだよ、よろしく」
紳士らしく彼女に手を差し伸べようとしたが、
「遅いわよ!!あたしを待たせるなんていい度胸ね!!」
「・・・・・え?授業終わってからすぐ来たと思うんだけど・・・」
「あんた何様のつもり!?レディーを待たせて謝罪もないわけ!?」
「・・・ごめん、なさい」
「あんたがユーグね。なんかぱっとしない顔してるね」
なんだこの子・・・。こっちがほんの少し遅刻しただけでブチギレてきた上、年上の男の顔にまでケチつけてくるなんて・・・。やべぇ久々にキレそう。この顔はこっちの両親が授けてくれた宝だし俺も気に入ってる。
「エリアルちゃん、あんまり人の顔悪く言っちゃだめだよ」
「何よ!説教でもするつもり!?あのハゲもあんたみたいに偉そうだったわ!」
「あのハゲって・・レオン先生のことか?だから人の見た目悪く言っちゃだめだよ」
「あたしに命令するな!!」
蹴られた。年下の女の子のミドルキックとはいえ、それなりに破壊力があった。こんなじゃじゃ馬姫なら人参でも用意しとくんだったぜ・・。
その後彼女とマンツーマンでデュエルの授業をしていたが・・・
「あたしのターン!《珠玉竜ールビー》を召喚!」
「さっきモンスターを召喚したじゃないか。通常召喚は1ターンに1回しかできないよ」
「うるさいわね!どうせならたくさん出せたほうがいいじゃない!」
確かにそう思うけど・・・
「ドロー!!」
「エリアルちゃん、2枚ドローしてないか?」
「手札が少ないしどうせならたくさんドローできたほうがいいでしょ!」
もうルールの破壊者じゃん!俺が小学生の時でもこんなに自分勝手なデュエルやってなかったぜ!!
こんな感じで結局全然話を聞いてくれることもなく一週間が過ぎてしまった。今更になってコーチを引き受けたことを後悔していた。ここまで重症とは思わなかったぜ・・・。今日も彼女のコーチをしなきゃな~・・・。
「あーめんどくせぇー!!!」
「ユーグ君・・どうしたの急に・・」
「ああ、いや、なんでもないよ・・」
しまった!!スクールの休憩時間で教室にいることすっかり忘れてたぜ・・。ここではお行儀のいい優等生で通ってるんだよ俺!・・・・・。
クロス先生の期待に応えるため、そして「努力する」って決めた俺自身のためにもここで折れる訳にはいかない。・・・でもこのままじゃ絶対彼女も心を開いてくれないな・・・。どうしよう・・・・・。
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