仕掛けられた罠

義母ンヌと初めて会話したのは、私たちの結婚のあいさつの時


私はあいさつの手土産に「手作りクッキー」を焼いていった

気持ちが伝わるように・・ってね


ココアクッキー・チョコレチップクッキー・プレーン・・・


子供の頃から好きだったお菓子作り。趣味程度だけど、業務用の材料やラッピング材も頻繁に使っているくらいハマりようだった。

焼き菓子専用袋に焼いたクッキーを入れて、シーラー(熱で袋の封を止める道具)で封をして、ラッピング


100均で買ってきたかわいい箱に綺麗に並べて…

手作りの手土産でも喜んでもらえるようにと力が入った



「よし、我ながらいい感じ!!」


きっと喜んでくれる


なんの自信か知らないけど

根拠もなく、そう信じていた 





結婚のあいさつ当日

義理の両親は笑顔で私を迎えてくれた


義母ンヌかつみ「あら、ゆかりちゃん、いらっしゃい。さあどうぞ、あがって」


ほぼ初対面という状況にガチガチにこわばっていたけど、ほんわかした義理の両親のムードに少しだけ緊張がゆるむ


緊張の空白を埋めようと私は早速、心を込めて作った手土産のクッキーを差し出した



ゆかり「あ!あの!これ・・・私、昨日クッキーを作ったので・・・よかったら召し上がってください!」




義母ンヌかつみ「あら、ありがとう~。自分で作ったの?すごいじゃない~」





喜んでくれた!!!

成功だ!

義理の両親が手作りの食べ物を食べられる人かどうかは事前に夫に確認済みだったし(潔癖症の人もいるもんね)

そして、義母ンヌに関しては、健康志向で市販のお菓子はあまり好きじゃないというのもリサーチ済!


手作りのクッキーで家庭的感をアピールしつつ

「こんな嫁なら安心ね~」と、思わせる!

私の評価としては、スタートは好調



結婚のあいさつもスムーズに済み、みんなで食事をしながら何気ない談笑が弾む

和やかな雰囲気と、義理の両親の優しい表情


これはもしや…両親に気に入られたか?

なんて期待も膨らんでいった



食事が終わって一段落したら、私の手作りクッキーでデザートタイムかしら?

とドキドキしていたけど、あら勘違い。

あちらはあちらで事前に義母ンヌがケーキを買っていたので・・

残念、結婚のあいさつの当日は、私の手作りクッキーは手にとって見られることすらなく終わりを告げることとなった



せっかく作ったのに見るくらいしてくれてもいいじゃん・・



帰り際、手提げ袋からも出されずに、お膳に寂しげに置かれたままの手土産を横目でチラリ


心の声でわずかな小言を吐いた




しかし!

そんなガッカリ気分を吹き飛ばすいい知らせが!なんと、またも義理の両親から食事に呼ばれたのだ!


もお~~、すっかり私のこと気に入ってくれてるじゃ~ん!と、得意顔な私

気分はもう、立派な「嫁」


この間食事したばかりなのにまた早々にお呼ばれされちゃうなんて

「嫁」として認められた気がして、顔が自然とにやけてしまうのも仕方ない



でも、この日の『お呼ばれ』に義母ンヌの企みがあったことは、後に知ることになる

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