第27話 集団行動になると行先を中々決められない。

校外学習目的地、神社のある離島————————


 何事もなく無事に目的地へと付いた敬欄高等学校の面々は、フェリー乗り場を出て目前に広がる露店に、神社のトレードマークである浅瀬に立つ鳥居に、自分達が旅先に来たことを実感する。

 港に着いたフェリーはその神聖な地と自身を繋げるために収納していた乗車口を降ろす。

 生徒は皆、スタートを待つマラソンランナーのようにそれが完全に下りるのを待っていた。

「着いたね。じゃあ行こうか」

 佐伯さんの言う通りに俺達のグループもフェリーを下りた。

 浜辺に沿って植えられている木々はまるで壁のように、海より吹き込む風から街を守る。

 本当ならその役目の方がらしいのかもしえない。神をまつる島だ。であれば、慈悲深い事この上ない。

 だが両助には、それが獲物を閉じ込める檻のように見えた。

「影峰さん?」

 立ち止まっていると、背後より声をかけられた。

 しまった、彼女の道を塞いでしまったらしい。慌てて彼女の側面に回り共に歩む。

「ごめん、楠木さん。…ああっと、ちょっと啓介達と離れちゃったね。すぐに追いつこう」

 そう言って彼女と共に前方に見える啓介達と合流した。

 考え事は後だ。まずは旅を楽しもう。

 両助は改めてその景色を楽しむ。

 神社のある島だから当たり前だが、全体的に和の雰囲気を保っている。

 景観を出来るだけ残そうとしているのだろう。緑も豊かだ。

 平日であるため観光客は少ないと考えたが、それなりにいた。

 見るに本日暇である大学生が親睦を深めるために訪れたのだろうか。

 その他にもこの島の商店街の住人、老齢な観光客によって決して殺風景な街でなかった。

「私、到着!どうする?昼間で自由行動だったよね?啓介君達一緒に回る?」

 まさかの女子からのお誘い、これには啓介は時間を待たずに回答した。「良いよ良いよ!」と言った啓介は、俺達の顔を見て確認を取る。順序が逆だと思うんだけどね。

 まあ、不肖、影峰両助、女の子とイチャイチャしたいので断りません。啓介殿、義により助太刀いたす。

 そう言って俺も「いいね!」と親指を立てる。

 淳也も了承して、同行することになった。

 そうして佐伯さんの要望から六人で商店街を巡ろうということになった。

啓介も「島のモノ食いたい!饅頭と串焼き!」と言って商店街めぐりに賛同した。

 そうして一行はその島の商店街へと赴いた。

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