君が死んでしまった暁に

プロローグ

 何度も。何度も、何度も何度も何度も……何度繰り返したって、その結末に変化はない。


 先輩の――二階堂にかいどう玲央れおの死から逃れられない。


「言ったろ、もう諦めたらどうだ?」


 神様が視界の歪んだ僕に問う。

 これで何回目だろうか。好きな人が無残にも似たような死を迎えるのは……。


 高校二年に進級する最後の日曜日、四月四日。


 僕、田沼たぬま隼人はやとは永久にこの日をループしている。起床して、目先の彼が何らかの形で不幸が訪れるまで。


「せんぱっ……せん、ぱい。どうして、どうしたら……」


 どうしたら助かる、どうしたら悔いを残さないでこの想いを伝えられる? 玲央先輩のことが恋愛的な意味で好きだと。


「ふんっ、くだらない。情など湧くから悲観に溺れる。いい加減気付くのだな、人間」


 ヨヒト、神様は容赦なく一蹴する。子供のような見た目に反して態度と口調が強い。当然だろう、彼もまた僕の我儘に付き合わされている身なのだから……。


「ヨヒト……もう一回、お願い」

「馬鹿め、その状態でまだ挑むつもりとか、正気か?それともお前はボロ雑巾に生まれ変わりたい願望でもあるのか」


 嗤っている、でも同時に口は悪くても心配しているように聞こえた。


 縁切りの神様、ヨヒト。

 おそらく、僕を除くこの世界の理に気付いている人物で同じく囚われている者。その目的は不明だけど、敵ではない。根拠はどこにも存在しない、だがそんな予感がした。


「変えなくちゃ……こんな未来、僕は、嫌だ」


「……悔いても知らんぞ」

「ありがとう、ヨヒト」


 何度目かの挑戦、何度も繰り返す未来と失敗。そして手前には出さないが進捗を望む、感謝と願い。



 ――今度こそ、僕は。


 視界が白く染まっては揺らぐ。それは過去に戻ると言わんばかりの合図のようで、何度も経験した【始まり】の前兆である。

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