第6話 落第勇者、妹を仕事場に連れて行く

 俺か遥に連れられてやって来たのは、本当に新そうな外観の『cafe』とだけ書かれた店だった。

 この店はガラス張りだったため中が見えたのだが……完全に子供が来る様なそこらのカフェではなく、通な人とかが来そうな所っぽい。

 だって店の客全員大人だし、大抵がダンディーなおじさんとか如何にもな芸能人オーラみたいなのを纏った美人しかいないもん。

 

「……此処、マジで高い所じゃん」

「だから言ったじゃん。高いって。聞いてなかったのお兄ちゃん?」


 いや勿論聞いていたとも我がマイシスターよ。

 でも俺が思っていたのはス◯バとかくらいなんだ。


「もうっ! いいってお兄ちゃんが言ったんだからね! ほら、早く入るよ!」


 遥が遂に待ちきれなくなったのか、再び俺の腕を掴んで無理やり連れて行く。


 カランカラン。


「いらっしゃいませ」


 店員らしき清楚イケメンが笑顔で「何名様でしょうか?」と訊いてきた。

 俺は「2人です」と言うと、明らかに場違いな俺達でも嫌な顔1つせずにこやかに、


「2名様ですね。テーブルがよろしいですか? 現在はお2人用が空いております」

「あ、じゃあそれで」


 と気遣いまでして貰い、その接客態度に圧倒されながらも何とか返答する。

 若干吃ってしまったのはしょうがないと思う。


 俺達は完璧な店員さんに連れられて、窓側の2人席に案内された。

 店員さんは「ご注文がおありでしたらお呼びください」と言うと新たに来た客の接客に戻っていく。

 その姿すらカッコよく見えてしまうのは顔のせいだけでは無いだろう。


「かっこいい店員さんだったな……遥?」


 俺が遥に問いかけると、気まずそうに身を縮こませていた。

 

「……ぅぅ大人がたくさん……」

「ええぇぇぇぇ自分で入ろうって言ったのに?」


 そう言えば遥は年上に過度に緊張するタイプだったな。

 昔年上に虐められていたから。

 まぁいじめと言っても小学生男子がよくやる、気になる相手にちょっかい出すと言うやつだが。

 俺と光輝が締めた時にそいつらが言っていた。


 しかしそのせいで遥は深い傷を負ってしまった。

 ……気付いてやれば良かった……久しぶりすぎて完全に失念していたな……。


「……よし、これからお兄ちゃんがいい所に連れていってやろう!」

「え? え?」


 今度は俺が戸惑う遥の手を引いて席から立ち、イケメンな店員にお辞儀をしてから店を出る。

 何もせずに出ていく半ば迷惑客の俺達をにこやかな笑みで送り出すイケメン店員には脱帽だ。


「ね、ねぇお兄ちゃん! 今から何処いくの……?」


 不安そうに此方を見る遥に俺は笑って言う。


「———俺のとっておきの場所だ」


 俺がそう言うと、遥は当たり前だが顔にハテナを浮かべて首を傾げていた。









「———と言う事で来ちゃいました」

「ええ!? 隼人君はいいとして……遥ちゃんも一緒に来ちゃったの!?」

 

 俺が代表室にいた優奈さんにそう言うと、大きな声で驚かれてしまう。

 そして遥は優奈さんのあまりの驚き様にポカンと口を開けては受けていた。

 


 


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チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力(スキル)を引き継いで現代最強〜 あおぞら @Aozora-31

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