第6話:英霊と謎の潜水艦
「敵潜水艦の魚雷が三笠に向かっています!!」
絶叫に似た悲鳴がP-1対潜哨戒機内に響き渡る。
イージス艦“あたご”でも息を呑んで見守っていたが一切の行動をするなとの厳命にて何も出来なかった。
「命中まで……後一分を切りました……ええっ!?」
「どうした?」
「レーダースコープに四本の魚雷を新たに探知しましたが速度が……三五〇ノットの超高速ででも先程の魚雷に向かっています!」
その魚雷はしかも自動で方向を変えていき海上自衛艦の針路上でも勝手に迂回して魚雷へ向かって行く。
「い、一体……何が起きているのだ!?」
対潜哨戒機内でオペレーター員は??? 状態で機長の方へ顔を向けて説明を求めるが彼も首を横に振るだけであった。
そんななか、四本の魚雷はロシア潜水艦から放たれた魚雷に命中して高々と水柱を上げる。
「!? んな、馬鹿な!? 何が起きたのだ? ヤポンスキーの魚雷か? いや、米国製なのか?」
ロシア潜水艦艦橋内で艦長以下発令所にいる者達は驚愕するが艦長の命により再度、魚雷攻撃を命じて今度は六本同時発射を命じる。
魚雷を装填中、海上では護衛艦がアスロック対潜ミサイルの発射許可を申請するが相変わらず本土からは拒否である。
地団太踏んでいる護衛艦艦橋内で、偵察ドローンによる三笠監視を実施している部署で誰かが叫ぶ。
「おい、戦艦“三笠”の後部砲塔が旋回したぞ?」
「何だって!?」
双眼鏡で確認すると三笠の後部砲塔が旋回中で砲身が上下角に動いている。
正に主砲発射態勢である。
「……まさか……撃つのか?」
誰かが呟いた時、突如、三笠から咆哮が聞こえたかと思うと主砲弾が発射されるのを確認する。
そしてその砲弾は海面に追突したが摩擦や引力の概念を消し去った感じでそのままの勢いでロシア潜水艦に直撃する。
一瞬で破壊されたロシア潜水艦は全乗員が苦しみも無くあっという間に天に召されたことだけ彼らにとって幸いであった。
「……三笠の砲弾が……潜水艦を撃沈……」
その数秒後、護衛艦隊から大歓声が沸き起こる。
皆が流石は英霊だ、不甲斐ない俺達の代わりに仕留めてくれたのだ。
大歓声が沸く護衛艦をよそに三笠から南方二百キロ方面海中に一隻の巨大潜水艦が潜望鏡深度で潜望鏡を上げていた。
「艦長、無事に魚雷を破壊することが出来ましたがいらぬお世話だったようですね?」
旧日本海軍の軍服姿で大佐の階級章をつけている男性が潜望鏡を覗いている艦長に声を掛けると艦長も頷く。
少将の階級章を付けていて彼も又、旧日本海軍の軍服を着ている。
「さて、結末は見届けなければいけない! 機関室、熱核融合炉出力を六十パーセントで維持してこのまま航行する」
「こちら、機関室! 了解致しました、核融合炉を六十パーセントまで出力を上げます」
巨大潜水艦は、無音のまま動き始めて三笠を追尾しながら航行していく。
戦艦“三笠”は無事に津軽海峡に入り函館港に向かって行くが函館方面の沿岸に備え付けられている無数の野砲やロシア軍戦車を始めとする火砲の集中攻撃が開始される。
戦艦“三笠”はロシア軍にとって不倶戴天と言うか恨み募る存在だったのでこれでもかというほどの火力集中攻撃を受けたが三笠には何も被害はなく反対に三笠から放たれる主砲弾によってことごとく破壊されていく。
悠々と函館港に到着すると武装満載の状態で続々と英霊達が上陸してきて総合霊数は実に一万五千柱の英霊が函館の地を踏む。
「うん? 確か5万以上の兵力だったのでは?」
偵察ドローンから様子を見ていた護衛艦の艦長の一人が不思議そうな表情をしたが他の艦長から説明を受けて納得する。
「そうか、生き残った者は天寿を全うしたのだからあくまで203高地で戦死した英霊達のみ出現したのか」
乃木希典が最後に上陸するとそこには乃木の息子達が敬礼をして彼を迎える。
「閣下! お待ちしておりました。どうぞ、突撃の命令をお願いします」
息子たちの言葉に乃木は感慨深く二人を見つめていたがゆっくりと笑みを浮かべて頷くと隊列を整えて並んでいる英霊達に突撃命令を出すと出撃を意味するラッパ手が澄んだ音で発すると大歓声を上げて英霊達がロシアや中国軍が築いている陣地に向かって突撃していく。
函館陣地からも想像を絶する火力砲撃がされるが一発も英霊達に命中する事が無く一万五千柱の英霊達がロシアと中国の陣地に雪崩れ込んできて片っ端から軍刀で切り倒していく。
抵抗は受けたが全く損害も無しに函館山に駐留していた三万の露中軍は全滅したのである。
「万歳! 万歳! 万歳!」
銃剣の先に日章旗を付けた兵士が函館山頂上で銃剣を振ると乃木以下全軍から大歓声が沸き起こる。
「素晴らしい景色だな、正に百万ドルの夜景とはよく言ったものだ」
乃木希典は頂上から函館の街を見下ろす。
203高地を奪取した後は旅順港へ砲撃を重ねて旅順艦隊を葬った時を思い出すがあの時はあの時で今はこれから札幌へ向けて進撃を開始しないといけない事を改めて感じる。
「これより、我が軍は引き続き札幌へ向けて進軍開始する!」
乃木希典の命令に英霊達は頷くと再び隊列を整えて進撃していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます