第14話 スイッチ押したら不幸が爆発しそう

「ああああ!! どうしよう? 私はこういうのが一番苦手なんですよ! くそっ! 分かるはずがない! これは未知だ! 知らなくて当然だ!」

「えっと、先生、どうしたんすか?」

「見えないかい六股君。私の目の前にあるんだ。謎のスイッチが……はくしっ!」

「へぶしっ! スイッチすか。試しに押したらどうっすか? はぶっ!」

「私も、状況から判断するに、押せという事だと思うのだけど、ど、どわっくしょん!! その後の結果が、まるで想像出来ないし、責任も取れる気がしない。だから押すのを躊躇ためらってるんだ」

「難しく考え過ぎじゃないっすか? へっくし!」


 ――く、くしゃみの音が邪魔過ぎる!

 先生と六股君の声が聞こえてくる。何やら謎のスイッチを見つけて、取り扱いで意見が割れているようだ。

 僕もスイッチを見てみたいと思うと、その思いに答えるように頭の中に映像が浮かびあがった。

 ――おんや?


「はぁ、はあっくしょん!! な、何これ? スイッチの頭に、あ、【兄】て書いてある!」

「靴下君にも見えたかい? へぶしっ! ず、ず、この場合【兄】って何だろうか?」


 先生が戸惑っている理由が良く分かった。まるで最終兵器を発射するためのような、もしくは、非常事態に押して緊急停止を促すような、赤くて大きなスイッチだった。押せば何かが起きるのは間違いない。そんな雰囲気がプンプンするスイッチ。どうせ手詰まりの状態だから、一か八かで六股君が押せと主張しているが、スイッチの頭にゴシック文字で、【兄】と一文字書いてある。これが判断を迷わせた。

 ――兄って何?? なんで兄?

 僕は頭を抱えて悩みに悩んだが、そんな男性陣をみかねて、オハナさんが痺れをきらす。


「早くしないと……くしゅん! カティアも私達もやられちゃうわよ! もう押したらいいんじゃない!」


 カティアがスイッチを押せと命令したわけじゃない。僕達は自然に、そうすることが、事態を打開する方法だと思い込んだ。


「さぁ~てと、こちらもいくぞ!! 気持ち悪い人形め!! この世界に、おのれの様な醜悪の居場所は無いぞぉ!」


 神木の精霊ハイ・エントが吠えると、腕が急に圧力を増して来た。巨人の膝が力に屈して曲がり始める。このまま潰されてしまいそうだ。いよいよ時間がない。僕は腹を決めた。


「先生、スイッチを押して下さい!」

「よし、分かった! 押すよ。皆は構えて! せえ~の! はっくしょん! ああっ!」

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