02
「ねえ、ハンクは私がへクセでなくても護りたいと思った?」
「…昨夜も伝えたが、初めは確かに同族だから…と思ったが、今は違う。エマ……俺はキミという存在だからこそ、傍で守りたいと思っている。不安ならば何度でも言うぞ…」
熱意を秘めた孔雀色が、ひたりとエマの目を貫いて光る。
「え…っと…」
視線に貫かれた一瞬、ふい心臓が跳ねて身体が熱を持つ。いざ言葉として言われると酷く胸が疼いて、エマは動揺を誤魔化して車窓の外に視線を投げた。
「それとも、やっぱり俺と一緒は嫌か?」
「ち、ちが…っ、違うの」
困り顔で眉を下げるハンクに、エマは罪悪感を覚えて握り合わせている手を強く握り返した。
「気を悪くさせたわね、ごめんなさい…貴方を疑ったのではなくて、その…最終確認で訊いたの」
「最終確認?」
「うん。……自分で言うのも烏滸がましいんだけど、整った容姿をしてるでしょ?」
「ああ、確かに」
彼女自身の言うとおり、確かに(元の顔に変えていても)エマは秀でた容姿をしている。
色素が薄く色白で、整って高い鼻梁。しっとりとなめらかな紅茶色の髪に、紅い唇。
そして、猫の眼のような瞳孔をもつ孔雀色の
…今となっては意味がないが、そもそもエマは日仏のハーフなので、どこから見てもハーフ顔で目の醒めるような美人である。
「…キレーな顔と体目当てな男に、よく言い寄られたりしていたの…だから…」
隣を許可されたハンクは鼻高々だが、次いでエマの口から漏れた言葉にギョッと目を瞠った。
「かかかか身体?!ならんっ、それだけはならんんっ!」
確認と言い終わる前に猛るハンクにガクガクと肩を揺らされて、エマは慌てて云い募る。
「ハンク、しーっ! しーってば! バスの中だから抑えて…あと、それは昔の話よ」
「ああ、昔か…そ、そうか…取り乱して済まない…」
「解ればよし」
漸く落ち着いたハンクに溜息を落とし、窓の外に目を遣る。車両は、賑かな駅の沿線を離れると二股に別れた内の左方に曲がろうとしている。
そして、しばらく真っ直ぐ道なりに行くと、寂れた雰囲気を醸す住宅街が見えてきていた。
「エマ、道沿いに家がたくさん並んでいるが…」
「住宅街よ…通称、ガーデンヒルズ。私を縛り付けている奴らの家がある所」
車窓から見える家並みは通称【ガーデンヒルズ】といい、エマの生家がある閑静な住居区画である。
車窓から外を見つめるエマの瞳には、濃密な憎悪が点っていた。
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