第23話  キマイラの代理

 私はここ、ライアルに来て、順調に勢力を拡大していった。


 つい先日……この都市に来て二週間で、この都市の二人の頭の両方を配下に置くことに成功した。つまり、今は生後十か月。

 この街では、アドベンチャラーが一番力を持っているから、そいつらの頭に立てば話は早かった。

 王国や貴族は何をしてるんろうな。まあ、そんなだからここを選んだわけだが。


 ちなみにだが、二人目の頭――キマイラ男と呼んでいる――は配下にするつもりはなかったのだが、互いの配下が勝手におっぱじめてしまった。


 結果はもちろん、圧勝。 

 そして、私の元には暫しの平穏が訪れたのだった。




 ……そんなはずがなく。





 その翌日、私はキマイラ男――本名、ケメ・ライマ――に呼び出されていた。朝早くに。

 

「大変だ、レスク!」

「……だろうな。ふぁ……用件は?」

「俺のキマイラが……っ。……ネグロが見つかった! 明日、討伐隊が来る!!」


 ほう。キマイラの名前はネグロか。

 まあ、ハウスにはすでに見つかってたんだけどな?


「で、私にどうしろと?」

「ネグロと、離れた場所にいてほしい。そして、身代わりにキマイラの四肢の一本を……もしくは尻尾を…………」


 キマイラ男……ケメは状況をわかった上で、私に頼る他ないと判断したのだろう。

 しかし、私の方が有力者。安易に頼める相手ではないため、こうして口ごもる、と……。


「……はぁ。わかった。協力してやる。ただ、キマイラは早々見つからない希少な魔獣だ。そして、私には得がない」

「わかっている! だから、俺にできること……で今後一切、協力は惜しまない」

「今や私がこのライアルのトップなのだが?」

「……っ」

「返す言葉もない、か。まあいい」


 ふむ。少し意地悪が過ぎたか?

 というより、こいつとの試合のあと、私は『お前は配下ではなく、友だ』と言ったのだが。

 さすがに、王ならではの孤独感は好き好んで味わいたいものではないからな。

 

「鍛冶の……錬金魔法を教える!」


 ……少しからかったつもりだったのだが、これは予想外だった。

 ふっ……最高だ。まさか、こうなるとはな。思いがけない幸運。今日は最高にツイてる。

 

「……それで頼む。あとは万事、私に任せておけ!」

「ありがとう!」

「それと、私の言葉を忘れたのか? お前は配下ではなく、友だと……」

「いや、忘れてないさ。ただ、お前に逆らえないのも事実だからな」

「……ふむ。それもそうだな」


 私のギャグセンスの失態か。悪いことをしてしまった。


「しかし、なぜお前が直々にキマイラを狩らないんだ?」

「……俺はネグロのいた証拠を隠す必要がある。ネグロは……通常の個体とは違うんだ。念入りに誤魔化さないと……」

「そうか」


 なるほど……。希少種の中の希少種……突然変異か。

 そして、それで普通のキマイラの四肢か蛇の尻尾を使うわけか。


「キマイラの四肢、尻尾を使ってどうするつもりだ?」

「ゴーレムを作って、埋め込む。目撃したのは、キマイラ型ゴーレムだという認識に変える。尻尾さえあれば問題ないはずだ」

「そんなゴーレムが存在するのか?」

「そこは……上手くやるつもりだ。あとは頼んでいいか?」

「ああ、任せておけ」


 私は早速、森に向かった。

 しかし、キマイラは早々見つかるものではないのだが……。かといって、四肢を切断後に〈治癒ヒール〉を掛けても、傷が塞がるだけだ。

 もっと上位の回復魔法を習得できればいいのだが、今は四属性……とりわけ、火と土の解析、応用に忙しい。





 夜遅くまで探して、ようやく一匹見つけた。

 希少種をこの短期間で三匹も殺しては、少しまずいのではと思う。まあ、これから殺すのを自重すればいい話だ。


 ……何も、わざわざこいつを殺す必要はないな。


 私はキマイラの横を通り過ぎ様に尻尾を切断した。

 さすがに足を斬っては今後の生活に差し支えると思ったからだ。

 尻尾もこいつらの切り札的なものであることは思考から外す。


 そして尻尾を回収し、ライアルに戻った。





 ライアルに入ったところで、ケメと落ち合った。


「遅くなってすまないな。約束の品だ」

「ああ、ありがとう。それじゃ……見ていけ、ゴーレム作成」

「ああ。……それが今回の報酬か?」

「その通りだ。一部の人間にのみ伝わる秘術だ」


 ゴーレムの生成は……夢が広がる。

 ゴーレムは人の手によって作られる人形だ。つまり、魔改造が可能な代物。

 作り手によっては攻城兵器になるし、子供の遊び相手にもなる。





 私たちはケメと、キマイラの住む洞窟に来ていた。

 入り口の地面には、人が掘った跡があった。


 ケメはその穴に手をかざし、


「――〈土操作コントロール・グラウンド〉」


 ふむ、波長が二つ……中級か。

 なるほど……覚えた。土を操作する魔法か。


 地面に穴が開き、その中には紫色の鉱石が入っていた。

 含んでいる魔力量は……まあまあ多いな。

 こんなところに隠していたのか? だいぶ不用心だと思うんだが。


「これが錬金系魔法の要となる魔鉱石の一種――パプリエル鉱石だ。じゃあ、見てな。――〈自動人形創造クリエイト・ゴーレム〉」


 ケメが最後に唱えると、紫色の鉱石――パプリエル鉱石は紫色に輝きながら浮かび上がった。

 大きさは拳大か。思ったより小さいな。

 これがゴーレムになる……わけではなさそうだな。……核か。


「注意点だが、生成するゴーレムの姿を正確に想像することだ。その尻尾は地面に置いていてくれ」

「こうか?」


 私は地面にキマイラの尻尾を置く。


「注意点その二。ゴーレムの姿は細部まで想像し、思いを込めることで強さを得る。ゴーレムの強さは、込める魔力量もそうだが……思いが一番の要因だ」


 徐々に、周囲の土が盛り上がり、核に集まって行く。

 土は徐々にキマイラの形を作っている。しかし……普通のキマイラより大きいな。ゴーレムだからなのか、希少種だからなのか。


「さあ……できるぞ!」


 ――そして、キマイラを模った土の塊が黄金色の光を纏った。




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