ビターな味わいが楽しめる王道ファンタジー

【良い所も気になる所も書く】ルールで読む企画【読専歓迎】より来ました。
以前に小説紹介企画でお世話になったこともあり、今回ささやかながらお返しになればと思い、レビューをさせていただいた次第です。

さて前置きはこれぐらいにして本題の方ですが、まずは良いと思った部分から。本作の題材は親しみやすく王道である一方で、内容はビターに仕上がっていたのが面白い部分でした。良い意味で裏切られたといいますか。作中に登場する思考実験や偉人の言葉なども物語の向かう先を暗示しており、読み進めるほどに緊迫感の増していく構成だったのではないでしょうか。また伏線に関してもしっかりと回収されていて、「やっぱり」や「そう来たか」と楽しめる要素だったと思います。地の文は装飾過多に陥らず、簡潔で明快な印象でした。そうした点が、かえって作品の余韻を上手く引き立てていたように感じます。

気になった点は二点あり、一つはライカンの謎です。これは他の方の指摘にもありますが、もう少し詳細な補足がほしいと思いました。この部分は伏線から入れ替わりが匂わされている反面、読者の想像力への依存が強いようにも見受けられました。

二つ目はライトノベルの特徴なのかもしれませんが、全体的に良くも悪くも漫画をノベライズしたような印象を受けました。回想や、突飛な展開の繰り返しなどが要因でしょうか。加筆修正を検討されているようなので以下の内容は余計なお世話かもしれませんが、現段階ではスピード感を重視するあまり場面や説明を端折り過ぎているイメージです。なので、展開のスピードをもう少し落としてみてもいいのかもしれません。あくまで個人の感想なので、他に寄せられる感想なども参照したうえで判断していただければ幸いです。

素敵な作品をありがとうございました。今までと一味違った読書体験になりました。