ブリーフィング

「助けに行くんだ。2週間だ。2週間で、ニールとヴィンティアは完全に死亡する。あと1週間以内なら、まだ、助けられる」


 ニールさんとヴィンティアさんはまだ死んでいない。ふたりは特別頑丈な『コアガード』で守られていて、虫が食いちぎることは難しい。生き埋めのような状態になっている可能性が高い。そのコアガードの有効期限が、およそ2週間。あと1週間以内に助けにいくことができれば、まだ間に合う。

 それがリンピアの説明だった。


 正直、耳を疑った。これまでのリンピアが苦しむ姿から、ニールとヴィンティアは当然死んでいると考えていた。常識で考えればあの虫の化け物たちに襲われて助かるわけがない。俺も運が良かっただけだ。

 リンピアは幻想にすがっているのか? 責任感の強すぎる人間が作り出した、儚い希望。これだけの努力をすれば、これだけの努力をしたんだから、なにか救いがあるはずだ、という自己暗示。それならそれでもいい、とも思う。葬式のようなものだ。忙しさで大切な人間を喪った悲しみを紛らわせる。自分の気持ちに区切りをつける助けになるだろう。


「また、勘違いしているようだな。救助が間に合うというのは事実だ」

 リンピアは俺の心を見抜く回路でも持ってるの?

「ごめん。俺の常識ではそう思ったんだよ」

「うむ、実際、容易くはない。しかし無謀でもない。信じてくれ」


 もちろん、本気で協力するつもりはある。

 俺はすぐ答えた。


「わかった。じゃあ、今すぐ行こう」

 

 リンピアは少し驚いたようだが、苦笑して首を振った。


「おまえの気持ちは嬉しいが、まだ燃料代が足りない。戦闘モードで片道分しか無いんだ。いや、おまえの機体も用意するなら……さらに金が必要か。またキメラ虫の大群に襲われたら、逃げ切れない。おまえの幸運も、二度は通じないだろう」

「いや、片道ぶんで充分だ。それに俺は身一つでいい」


 怪訝そうなリンピアに、俺は言い切った。


「──虫どもは俺に任せてくれ。次はあいつらを全滅させてやる」


 ↵


 リンピアはため息をついた。

 俺がキメラ虫を全滅させてやると言うと、彼女は悲しい顔になって救急箱を持ってきた。そしてベッドに寝るように言った。


「いや、俺は大丈夫だって」

「ジェイ、今はゆっくり休んでくれ」

「俺は正気だ!」

「ジェイ、お前には休息が必要のようだ……」


 救急箱の中には薬や包帯といっしょに、見覚えのあるスキャナーがあった。リンピアはそれで俺を検出すると、黙ってしまった。「その問題があったな……」と小声でブツブツつぶやいている。

 そっちこそ大丈夫か? 子供の見た目が深刻に悩んでいる様子は心が痛くなる。心配になってきた。おまえも寝るか?

 リンピアはスキャナーを睨みながら口を開いた。


「ジェイ、おまえは正気か?」

「だから正気だって」

「本気でアーマーも無しに、キメラ虫の群れと戦えるつもりだと?」

「うん、いける」


 あの無様な敗北から、リベンジの方法をずっと考えていた。今はまだ頭の中だけのプランだが、地下でも似たことはやってきている。いけると思う。


「……『侵食銀』、『鎖からの逸脱』、『月喰いの獣』……これらの言葉に聞き覚えは?」

「え? 聞き覚えは、無いけど」


 なんかやたらカッコイイ言葉だな。


「……わかった。信じよう」

 リンピアは眼を閉じ、一考してから口を開いた。

「アマルガム、という忌まわしき者たちがいる。『儀式』と称して人外のナノメタルを接種し、力を手に入れることを目的とする過激思想家集団だ。人間のナノメタルに手を出すこともあるため危険視されていて、街には出入り禁止。ほぼ犯罪者扱いで、そうだと分かると拘束される」

「ふうん」

「ジェイ、おまえはそれに近い」

「ふぁっ?」

「このスキャナーは発掘品を複製した市販品だ。健康状態を簡易検査できるものだが、体内のナノメタルも検出できてな。アマルガムは文字化けして見えるから、それで判別できるんだが……おまえからも文字化けが出た、それも大量に。非常に怪しい」


 スキャナーの画面を見せつけてきた。 

 

【メインシステム】 修復中88%

【血中銀量】 -error- mg

【銀電周波数】-error- hz

【回路深度】 -error-

【傾向スコア】

・元素転化  □ロ□ 点

・肉体管制  □□□ 点

・錬銀術   □/,□ 点

・機械信号  牧 野 点


 なんだこりゃ。牧野点ってなんだよ。


「修復中ってなんだ。俺は故障してるのか?」

「それは気にするな。無意味な数値だ」

「はあ」

「問題はその他の……ぜんぶだ。血中ナノメタル濃度、処理速度、回路数、測定不能。傾向スコアは文字化けだらけ」


 傾向スコアとやらは、平均を百点としてナノメタルの性能を表してくれるらしい。すごい便利アイテムだなスキャナー。俺の回路も増えすぎたし、この項目でフォルダ分けのように整理しておこうか。

 だが、文字化けは問題だ。


「マジか。じゃあ俺危険人物だってバレバレじゃん」

 これ、隠せないのかな。スキャナーですぐ調べられると不便だ。

「もういっかい、スキャナーで調べてくれない?」


 リンピアに機械をかざされると、その部分がなんか……くすぐったい。ナノメタルがザワザワしている。こういう感覚か。


「……ごまかせそうだな」


 俺はナノメタルを地下で飲みまくった。そのせいか、ちょっと思考しただけで回路について実現可能かどうかが分かる。重要なのは明確なイメージ。


「もっかい、調べてみてくれ」


 体内のナノメタルを適当に鎮静化させた。冷たくゆっくり淀んでいるイメージ。

 ……数値がすべて平均点以下のヘッポコで表示された。


「おいおまえ、ますます怪しいんだが? なにをした?」

「俺は完全に安全な一般人だ。大丈夫だって、この街に来た時、ガンマンみたいな衛兵の人もスルーしてくれたし」

「ガンマン? ……壁外にまでわざわざ出てきたのか?」


 リンピアは目を白黒していたが、最後には納得した。


「おまえ……信じるぞ……私の信頼を裏切るなよ……」


 裏切り。それはカッコイイ言葉。甘美な誘惑。でもさすがにしないって。

 リンピアが困っていると子供をいじめているみたいな気分なので、安心させたい。


 まっすぐ見つめて言う。

「リンを悲しませることは、しない」

「……信じるぞ」


 リンピアは自分の髪を抱き寄せて顔を埋めた。その隙間からうらめしげにこちらをにらみがら、深呼吸している。落ち着いたようだった。


 ↵


 俺の力をテストしたいということで、荒野に出ることになった。

 俺が本当にキメラ虫の群れに対処できるなら、ふたりの救助に行ける。外でいくつかテストをして、問題無さそうならそのまま出発したい。

 リンピアがダークレッド機に乗り込む。

 食料や弾薬は積み込み終わっているらしい。燃料も補給済み。


「じゃ、俺は肩のあたりに乗せてくれ。そこがいちばん眺めが良さそうだし」

「この機体は窮屈だが……無理をすれば二人くらい乗れるぞ?」

「わかってないなあ、ここがいいんだよ、ここが」


 肩だとアーマーの頭と腕が見えるし、高くて視界が広い。

 つまりこれは、TPSゲーム視点というわけだ。本物のアーマーでだ。興奮してきたな。


「……絶対に、振り落とされると思うのだが」

「大丈夫だ、錬銀で足場つけるし。いやもう俺をまるごとくっつければいいか。大丈夫大丈夫、機体には影響無いようにするから」  

「……はあ」


 リンピアは「こいつ一回痛い目見せてやろうか」という感じで肩に乗せてくれた。

 俺が流体金属を出して肩に張り付くと、驚いていた。


「そのレベルで制御するのか」 

「まずい?」

「あの偽装スコアでできることではないな。ジェイ、これも秘密にしろ」

「了解」


 そのうち、うまくごまかせる使い方でも考えよう。

 ガラガラガラ──とガレージのシャッターが巻き上げられ、朝の日光が入ってきた。

 出撃ってかんじだ。うっひょ~

 まあ、ただ屋内から歩いて出るだけなんだけど。


 走るアーマーの肩は、最悪の乗り心地だった。一歩進むたびに1メートルは上下するのだが、落ちないように装甲に体を固定したせいで、衝撃がダイレクトに襲って来る。

 まあ俺のスーパーマッチョボディにとってはそこまで辛いことではない。むしろ最高だ。ブースターを使わない移動でも自動車くらいの速度が出るし、高さ8メートルくらいあるから景色も良い。うっひょ~


「うっぷ」

「言わんこっちゃない。ほら、着いたぞ」


 やってきたのは街に着く前、アーマーの胴の残骸と工業アーム製ムカデマシンを乗り捨てた場所だ。いちおう荒野の岩陰に隠していた。ああ、俺の初めてのアーマーちゃん。何かに再利用できたらいいんだが。戻ってきたらまた会いに来てあげるからね。


「これが、おまえが街に帰れた理由か。これで戦闘も行うと?」

「そうそう。これをブンブン振り回したら、キメラ虫もほとんどはバラバラになるだろ」


 俺の対キメラ虫軍粉砕作戦のやり方は、こうだ。

 工業用アームを竹とんぼのようなカタチに連結して、回転させる。

 巻き込まれた虫はバラバラになる。 

 結果→勝利!!

 作戦名、地獄のタケコプター……ヘルコプター作戦だ。

「……ここにある物だけで、足りるのか? だいたい、どうやって運ぶつもりだ?」

「それはまた俺の不思議回路の出番になるな」

 俺は体内からデータクリスタルを取り出し、2本の工業アームを空中に出現させた。

 時空解凍クロノスくん……適当に名付けて構築した回路だが、機械信号系ということになるのかな。解凍と同時に錬銀でT字に溶接する。

 ズシン──と電柱くらいのサイズのアームが地面に落ち、突き刺さった。

 アームは少量充電されているので稼働可能だ。遠隔操作回路でT字の上を回転させると、ブワンブワンと風が舞った。範囲内に入ってしまえば、岩も砕けるだろう。もちろん虫は楽勝だ。あの無様な戦いのあとで、眠れない夜をすごしている間に考えた。


「……もう、驚かんぞ」


 ありゃ。リンピアを驚かせるのが楽しくなってきたところなのに。残念だ。

 ついでにカプセルクリスタル関係について教えてもらった。

 カプセルクリスタル━━圧縮結晶。空間圧縮によって大量の物資を持ち運びできるようにする技術で、経済活動にはアーマーと並ぶくらいで重要で役立っている。

 ただし空間圧縮と解凍には専用機械が必要らしい。かなり大型の発掘品で、街にはそれを置いた工場がある。圧縮・解凍そのものの必要エネルギーは微量だが、機械を起動させておくのに燃料が要る。

 回路で指先ひとつで解凍するのは論外だそうだ。照れるぜ。


「この工業アームのクリスタルが、あと九百はあるからいけると思う」

「……よろしい。おまえの力に頼ろう」


 リンピアが驚いてくれない。しゅーん。

 なんだろう、リンピアの態度が気になる。俺のやることに驚くとか慣れるとかいうよりは、何かに納得しているような、答え合わせを確かめているような感じがしてきた。チェックリストを確認する監督のような、指名手配犯の人相書きを思い出している警察官のような。俺、ぜんぶ終わった後に衛兵に突き出されたりしないよな? まあさすがにそんなことは無いと信頼してるけど。


「わたしも他に策があるわけではない。物資は積載済みだ。救助は早ければ早いほうが良い。……行けるか?」

「おう、行こう」

「よし」


 そういうことになった。


 ↵


 フライトブースト……というのは機体重量を軽減する特殊な力場を発生させながらブーストを全力噴射する飛行だ。ブースタ周りの装甲を開放して冷却しながら最大効率で噴射させるため、アーマーの最速移動方法となる。

 ただし重力軽減力場の発生中に外部から衝撃が加わるのは危険で、おまけに装甲を開放していることもあり、戦闘中には使用できない。

 戦闘中は普通にブースタを噴射する。自由飛行はできないが、大ジャンプや滑るような高速移動が可能。二足歩行を遥かに凌ぐ機動力があり、それがアーマーの強さだ。

 ……ということを、リンピアに聞きながら移動した。


『おい、大丈夫か? ひと休みするか?』

「ヴァイヴォオブダビョ(大丈夫だよ)」

『本当に大丈夫か? では目標手前まで一気にいくぞ』


 フライトブースト中のアーマー表面はものすごい強風だった。周囲を青い電磁波のようなものがバリバリしている。露出している俺の健康に悪そうだ。

 俺はアーマーの肩にくっついているのだが、ものすごい風圧でほとんど喋れない。目も開けられない。リンピアと意思疎通できているのは通話回路のおかげだ。

 通話回路はアプリ回路という誰でも使える回路らしく、通話をかけられただけで使えるようになったのだが、かなり便利だ。音声といっしょに簡単な思念も通じるので、発音が不明瞭でもだいたい伝わる。慣れると言葉を発さないまま会話──念話ができるようになるらしい。

 途中休憩も挟んで、半日以上。夜明け前になってきたころだった。


『見えたぞ、おまえの故郷だ。手前のポイントに着陸する』

「フォンバファボヴァエリダバ(とんだ里帰りだな)」


 ↵


 ニールさんとヴィンティアさんが残った戦場手前で最後の休憩をとる。戦闘機動は起動するためにも燃料が必要なので、切らないままだ。ヴーンという小さな振動が尻に伝わる。

 遠目からは、俺のいた遺跡がある渓谷の隙間に、ウジャウジャしているキメラ虫が見えた。そんなに住心地が良いのか? 

 岩が多数転がっているため、アーマーの残骸がどこにあるかは見つけられなかった。あんなに荒れ散らかした地面だったたか? 近づかないと探せないな。


『栄養補給は済んだか? これからどうなるかわからんぞ』

「おーけーだ。もう食った」


 俺は1食で3日間は活動できる。もらった携帯食料は高栄養だった。コンディションは万全だ。


『生存信号を確認した。我々の目標はあくまでふたりの救出だ。だが、キメラ虫と戦うことは避けられないだろう。やつらは人間を目の敵のように襲ってくる。よく覚悟をしておけよ』


 リンピア、固いな。よく喋っているが、緊張しているからだろう。

 ちょっと落ち着けたほうがいいかな。ほどよい緊張なら良いのだが、この子は気負いすぎてしまうタイプの気がしている。


「リン、ニールさんとヴィンティアさんについて教えてくれないか。どんな人たちか、くわしく聞かせてくれ」

『……ニールとヴィンティアは、私の護衛騎士なのだ。実は私は、故郷の村では姫などと呼ばれる身分でな』

「ああ、うん……」


 知ってる。バレバレだったぞ。なんか誤魔化してるつもりだったっぽいけど。


『私には出来の良い兄がいる。何をしても、私よりもずっとうまくやる男だ。一族の期待は兄にむいていて、私などお飾りにすぎなかった……』


 村が困窮したとき、兄はまっさきに立ち上がったという。村もそれを応援し、旅立つ兄におしみない称賛を送った。

 リンピアもそれに続こうとした。ディグアウターとして出稼ぎに行くと。するとうってかわって村の者たちは反対した。お姫様はそんなことをしなくていい。あなたには村の外は危険すぎると。

 唯一反対しなかったのが、ニールとヴィンティアだった。


『ふたりは村でも随一の戦士であったが、私のような小娘を信じて、護衛騎士に名乗り出てくれたのだ。大事な家臣であり、ディグアウターとしての師でもある。この忠義には応なければならない』

「そうか。俺も短い間だけど、とても世話になった」


 固いだけだったリンピアの言葉に、熱が帯びている。やる気十分だ。

 夜が明け、朝日が荒野を照らし始めた。視界は良好。


「必ず助けよう、リン」

『ああ。やるぞ、ジェイ』

 

 ↵


 荒野の空に、ダークレッド機が光り輝いて跳躍する。

 ブースタを大噴射したジャンプで、いっきに渓谷そばへと近づいた。


「ヘルコプター、投射!」


 俺の殺虫兵器、地獄コプターを空から拡散する。

 圧縮結晶をばら撒き、ばら撒き、ばら撒く。

 空中で解凍されT字連結したヘルコプターが、ズンズンと地面に突き刺さっていく。その時点で串刺しになるキメラ虫もいる。

 ブオーン──起動したヘルコプターがものすごい風をたてる。うかつに寄ってきたキメラ虫たちが粉々になる。ヘルコプターもやや損傷するが、一本で十匹くらいは処理してくれそうだ。壊れてきたらまたバラ撒けばいい。

 いいぞ。あの屈辱からずっと考えてきた作戦だ。存分に味わえ。


『谷からウジャウジャ湧いてきたぞ! あそこを重点的にやれ!』

「よっしゃ」


 地下で作りまくった回路は、様々な運動補助を可能にしている。思考時間強化、距離測定、筋肉デジタル制御。正確に遠投することも簡単だ。

 渓谷そばにヘルコプターの隊列が生え、谷底へキメラ虫をバラバラと落としていった。地表の虫の数はどんどん減っている。よし。

 すでに百本以上を機械信号回路『デウスエクス牧野』で操作しているが、単純な回転運動だけなのでまだまだ楽勝だ。すごいぞ牧野。


『仮設テント跡だ──着地する!』


 機体が逆噴射をかけ、砂埃の衝撃波を広げながら着地した。かなりの大ジャンプだったが、滑らかな制動だ。リンピアの腕の高さを感じる。

 着地したのは俺がお世話になったあの高機能な仮設テント跡。ここの近くで大群を迎え撃ったので、ここを中心に探すのが近いはずだ。

 周囲は虫の足跡やライフル砲の弾痕など、戦闘の痕跡で荒れ果てている。地面のあちこちが掘り返されたかのようにぐちゃぐちゃだ。アーマーの残骸などは見当たらない。


「どこだ? 俺は視認できない!」

『生存信号は近くにある。前方30メートル以内……なぜだ、何もない』


 その時、俺は感じた。地鳴りだ。機体外に出ていたぶん気付くのが早かった。

 パラパラと砂が舞う音。小石がカラカラと転がる。それは予兆だ。

 ガリガリと地面が鳴いた。


「下だ!! 逃げろリン!!」


 地面が爆発した。


 ダークレッド機は撥ね飛ばされ、俺は地面に叩きつけられた。

 ドウドウと土砂が落ちてくる。巨大な何かが動いた余波だ。


『クソ、最悪だ! デッドランドデスワーム! 荒野のヌシだ!』


 見上げると、数十メートルはあろうかという岩の連なりがあった。それはすべてヤツの体だった。岩の皮膚だ。先端の頭にはトンネルを掘る機械やヤツメウナギのような細かい歯が円形状に何層も生えている。

 ガチガチガチガチ──と不快な音。無数の歯が打ち鳴らされる振動だ。

 そいつは明らかに俺たちを敵と認め、襲いかかるつもり満々だった。

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