第三話

偶然、再会したんだ。

僕をいじめていた女に。

驚いたのは声をかけてきたことだった。

「久し振りね。

元気にしてたの?」

昔のことを忘れてしまったのだろうか?


『…本当に久し振りだね。

まあまあかな』

僕は戸惑いながら答える。


「そうなの?

あっ、この子、私の娘」

と笑顔で足元にいる小さな女の子に顔を

向けた。

目元が彼女に似ているな。

初対面だというのに僕にニコニコしている。

人懐ひとなつっこい子なのだろう。

彼女の何事もなかったような態度に驚きはしたが、今はお互い大人だ。

昔のことは許そうと思う。

そう、思っていたのに……彼女はちっとも

変わっていなかったんだ。

その後、人伝ひとづたいに聞いたのだが、社会人になった今でも同じようなことをしているらしい。

職場で気に入らない人がいると僕にしたようなことをしているらしいんだ。

人間はやっぱり簡単に変わることはできないんだな。

残念だよ…せっかく許そうと思っていた

のに。


僕は車を運転しながら助手席に座っている

女の子へ話しかける。

『今日は晴れてよかったね。

お出かけにはいい日になった』


「うん!お日さまキラキラであったかいね」

嬉しそうな顔でそう言っている。

これからちょっとドライブに行こう。

車を走らせていると女の子は話し始めた。

「今日ね、わたしの誕生日なの!

5歳になるんだよ!

ママにケーキ作ってねって約束してる

んだ。

プレゼントも早くほしいなぁ」

そうなのか、今日は誕生日か。

僕は少し寄り道してから目的の場所へ向かう

ことにした。


「なにここ?こわい…」

着いた場所は草が生い茂る空き家だ。

『そうだね。ちょっと怖いね。

でも、大丈夫。

一緒に探検しよう』

そう言って彼女の子供と家の中へ入る。

さっき誕生日プレゼントとして買ってあげた

ウサギのぬいぐるみを大事に抱えて 怯えた顔で家の中を見ている。

痛くないようにしてあげるからね。

僕は包丁で心臓を刺し、小さな命が消えていくのを見ていた。

ごめんね、全部、君のママが悪いんだよ。

ママが誰かを傷つけるようなことをしていなければ君も死ななくてすんだんだ。

全部、ママのせい。

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