6 錬金術師と猫と触れ合う

「私……弱すぎよね」


 彼女は改めて自分のステータスをみた

--------------

種族:人間

種別:アルティメットヒューマン

職業:大錬金術師

名前:ノルン・フォン・リリシュタイン

性別:女

レベル:1

HP:10 ※不老不死により固定

MP:100〜 ※可変式

攻撃:10 ※不老不死により固定

防御:10 ※不老不死により固定

魔攻:100〜 ※可変式

魔防:100〜 ※可変式

俊敏:10

魔素抵抗:0.000001

理力:9999

称号:大聖女、大魔王、惑星ノエルの支配者

属性:不老不死

スキル:情報が多すぎる為にツリーで折りたたみました


※惑星ノエルでノルンさんから観測した魔素フラッピングエーテル量を基に数値化しました。そもそもフラッピングエーテルに順応済なのでノルンさん達はレベルあがりません!称号はノエル様が面白がって御付けになられました!特に効果はありません

 by開発部アンナ



「大聖女と大魔王は……まあ呼ばれた事はあったような気はするけど……」


「惑星ノエルの支配者ですか?ノエル様が付けたんですけどまあ分からなくもないですよ〜」


「私は森にある村の村長で、兼雑貨屋を営んでただけよ?」


 ノルンはそう思っている。


「ノルンさん?何を言ってるんですか……?村長?」


 本人の認識と周りの認識は違うのかもしれない。でもノルンは本気で村長をやっていたと思っている。


「あ、村長はやりたくなかったけどまあみんな家の近くに迷い込んできて住むって言うし新天地だと慣れないこともあって厳しいだろうしね〜、まとめ役をやってるうちに村長になってたのよね」


「村ですか……世界でもっとも危険な大魔境と言われるあの地が?世界中からその村がなんて呼ばれてたか知ってますか?」


「村に名前なんてないわよ」


「結社『女神の道しるべ』ですよ!世界を良い方向へ導きながらも牛耳っていた組織ですよ!貴方を筆頭に貴方のお弟子さん達が主に動いていましたけど!」


 ノルンの言う通り村には名前はない、しかしアンナの言う通り結社は存在する。


「なにを言ってるのかしら……?弟子なんていないわよ、まあ確かに錬金術教室は開いたりしてたから生徒は居たわね」


「生徒?弟子兼結社員ではなくて?それに各国の首脳に講義してましたよね?」


「あ〜、村の子に社交会をひらいてる子がいてね定期的に研修会するから錬金術の特別講師して欲しいって頼まれたのよね。文明の発展がテーマだったわね。村長として人肌脱いであげたのよ。」


 そんな村あるか!!とツッコミたいがツッコミ役はヤダなと思っているアンナは抑え、会話を拡げる。


「村の子……社交会……世界サミット『道が示す果て』でしたよね?確か主催の名前は伝説の大賢者と呼ばれてる……リノアでしたっけ?」


「賢者なんて呼ばれてたのねあの子、でも支配者なんておかしいわね」


 アンナは察し始めたが主張が噛み合わない会話は続く。


「結社本部だってあったじゃないですか、あんな大きい施設まであるのに」


「村の大きい施設?あれは村の集会所よ?町内会合や錬金教室で使ってたのよ?結社ってどこから……」


 アンナは察した。ホンワカマイペースなノルンは村長をして村の集会所で錬金術教室を開き、町内会の会合をひらき、たまに村人の相談にのったりしていただけで本人は惑星ノエルを支配していたつもりは無かったのだと。


「もういいです……なんかノエル様がおかしな称号付与してすみませんでした」


「それにアルティメットヒューマンってなんなの〜?なんなのこれ〜えへへへ」


「嬉しそうですね……それはですね〜」

「おねえちゃん、そろそろ着くみたいだよ」


 会話が盛り上がったのも束の間、シャロの案内でようやく目的地へ到着した。

 だが場所には何も無く、誰もいなかった。


「シャロ、ここで合ってるの?」

『おかしいですね……そんなに時間も経ってないし……』

 血の跡も消えているし、仲間の気配もない。とシャルロッテは呟く。不安な表情かはどうかはわからないが尻尾はしょんぼり垂れ下がっていた。


「詳しくは聞かなかったが何があったんだ?」


『クーフィー様……ここには人間が来て……』

 飼い猫だったころの希薄な記憶をもとに、じゃれつこうと近寄ったはいいが剣を向けられ魔法を放たれた。と言う。


「傷はその時に負ったのかしら?」


 シャルロッテは横に首を振る


『敵意を向けられ悲しかったのですが……』


 人間の刃は自分には通らず、魔法も無効化できた。それでも自分からは一切攻撃を加えず耐えていたらしい。シャルロッテも猫であった頃を思い出し人間には手を出したくなった。


 それでも人と触れ合いたい。

 クーフィーは痛いほどに


『攻撃しなければ撫でてくれるかな?って思ってたんですけどね……ずっと待ってダメだなって仲間と撤退しようと思ったんですよね……』


「まあ今の地球人にとってシャルロッテさんが怖かったのかもしれませんね……」


『そうしたら……奴が現れて……』

「奴……?」


 その直後、異常な魔素フラッピングエーテルの渦が空中に出現し禍々しい光と共に形を成していく。


「あ、クーちゃんにシャロ……今のフラグだったみたいね……アンナ、これって……」

「あ〜、これは惑星ノエルでも発生していたアレと同じ現象ですね……」

「地球でも発生するのね、まあ仕方ないか」

「でもノルンさん、これ今の地球人類からみたら災厄級ですよ……ポップのし方が異常ですもん」


 シャルロッテが唸り声をあげ、禍々しいソレを威嚇する。


 やがて光から影が現れ徐々に色味を帯びて実体化する。


 グルルル……


 とシャルロッテと同じ様な唸り声をあげ、ノルン達を睨む。


『くそ!今度は我の偽物か!本当に一体なんなのだ!』


 本来の威厳ある口調に戻るシャルロッテ。

 自分の偽物と言い表す対峙したソレは……


「おい、あれシャロだよな?」

『はいクーフィー様……前は仲間の偽物が現れました。異常に力が強く傷を負わされました』


「まあでも今のサイズになる前のただのスカーレットパンサーだな」

『ええ、その様ですね』


「鑑定しちゃうわね〜」

「え!?ノルンさんなんで地球の鑑定魔法使えるんですか?」

「鑑定魔法じゃないわよ、ま、まあ錬金術式よ。」

「……はぁ〜、もういいです……」


-------

種族:スカーレットパンサー

種別:魔モノ

名前:無し

性別:女

レベル:385

HP:170000/170000

MP:200000/200000

攻撃:15000

防御:8500

魔攻:20000

魔防:30000

俊敏:10000

魔素抵抗:560

理力:N/A

称号:N/A

-------


「やっぱりネームドになる前のシャロね……魔モノって書いてるけど」


「なんで鑑定魔法の内容と同じ?いやそれ以上の表示なんですが……?」


「いや、ハッキングというか……でも惑星ノエルあっちと同じでやはり魔獣のコピーなのね……でもこんなに忠実に再現するのは初めてね」


 惑星ノエルあっちでは人間の魔モノはゴブリン、狼ならケルベロスなどどこかしら変異していた。混ぜられたりとどこかしら劣化したり改変されていたのだ。


ですらハッキリとこの現象を把握出来てないんですよね」


「下っ端、そうかこれ魔モノモンスターポップなのか」



 魔モノモンスターポップ、文字通りゲームかの如く魔モノがポップする現象を差す。惑星ノエルでも発生し人類や魔獣を脅かしていた現象だ。


「まあ今のシャロなら大丈夫だぞ、がんばれ」

『え、本当ですか?』

「多分、自我なんぞないからリミッターもなんも無しで力が強いだけだ」

『は、はい……がんばります』

 

 困惑しながらもピンチになれば助けてくれるだろう……覚悟を固め離れた場所から爪を振るうシャルロッテ。

 その瞬間、対峙したスカーレットパンサーは3つに切断される。


『え!?』

「ワンパンだなあシャロ!」

『え!?え!?』

 シャルロッテは小手調べに斬撃を飛ばした。だがアッサリと終わり拍子抜けと同時に困惑していた。


「まあクーフィーさんの眷属なら当然ですね」

『あ、ありがとうございます……でも自分の死体見てるみたいで複雑な気分です』

「よーしよし、偉いぞシャロ、あれは偽物だ」

 姉が昔、自分にしてくれた様にクーフィーもシャルロッテを撫でて褒めて安心させる。


『まあそうですよね、あれは偽物ですもんね』


「でもお前の仲間、どこに行ったんだ?索敵にも引っかかってないぞ?おねえちゃん、わかる?」

「私の方でもわからないわね。言うなれば……」


 惑星ノエルあっち魔素フラッピングエーテルの質の違いで自分たちも地球の魔素とまだ馴染んでいるようで馴染んでいないノルン。例えばこの世界のステータスシステム上、高位の認識阻害魔法の様なものを使われるとノルンでもすぐ見つけるのは無理だった。


「ふふ〜ん、ノルンさんでも出来ない事があるんですね〜では私の出番ですね!私はこの世界ではシステムにある魔法ならなんでも使えますからね〜、私の神話級の索敵魔法であれば認識阻害だろう、なんだろうと突破できます!」


 アンナがここぞとばかりに、索敵魔法を披露しようとする。


「なんか癪ね……」

 でもそれでシャルロッテの仲間が探せるならばとアンナに注目が集まる。


「では、神話級索敵魔法『エーテルソナーExtra』」

 派手な紋様が空中に現れ、即座に雲散する。


「で、わかったのかしら?索敵するのにちょっとこれじゃ派手ね、敵に見つかっちゃうわよ」

「ダメ出しされた!?あ、あの……いや」

「下っ端、シャロの仲間の居場所わかったか?」

「あの……その……なんでか発動しませんでした……」

「下っ端、期待させるなよ」

「いや、なんかおかしいんですよ!この身体、魔素が通らず魔力が練れないというか……」

「あ、その義体は仮でアンナを入れた物だしパワータイプの旧式だから魔力抵抗値がちょっと高めだからもしかして……アンナを鑑定してみるわね」


-------


種族:女神/人間

種別:オルタナティブヒューマン(義体)

職業:賢者

名前:アンナ

性別:女

レベル:9999―

HP:156000 ※義体耐久値

MP:999999

攻撃:25000 ※義体準拠

防御:56000 ※義体準拠

魔攻:85627

魔防:75602

俊敏:1206

魔素抵抗:863

理力:6758

称号:墜ちた女神

属性:??

スキル:情報が多すぎる為にツリーで折りたたみました


「あら、やっぱり魔素抵抗値が普通よりは全然低いけど思ったより高めね、他の魔力パラメータに比べ」

 魔素抵抗値は低ければ低いほどに良いとされている。アンナの数値はノルン達に比べ高いというだけの話ではあるが


「だからなんでノルンさんレベル1なのに高位鑑定魔法つかえるんですか?」

「いや、だから錬金術式だって、私魔法支えないし」

「んなわけ……って、わ!!本当に抵抗値高い!他も思ったより低い!これじゃあチート魔法は使えないですね……しかも抵抗値とのバランスの悪さでオルタナティブヒューマンじゃノルンさん達より格下じゃないですか。私女神なのに……せめて同格にしてくれないと」


「オルタナティブヒューマンがなんなのかわからないけど下っ端は下っ端だったな……、どうしよっかおねえちゃん」


「う〜ん、こちらから魔力を垂れ流したら近寄ってこないかしら?」


「じゃあ接待用術式でも使う?」

「そうね、くーちゃん出来る?」

「え〜、久しぶりにおねえちゃんのアレみたい!」

「あら、仕方ないわね〜」

「接待用術式ですか……?なんですかそれ……いやなんでもないです、どうぞ」



 アンナは疲れていた。



「いくわよ!」



――大出力接待術式『七色の光柱レインボースウェル



 ノルンを中心に光の柱が立ち天を貫く

 同時に天から七つの光の輪が色とりどり降り術式紋を描く。一つの輪は横に拡がり、他の輪は複雑に絡み合い、やがてそれぞれ光の柱を生み出す。

 それは世界を作り上げる程に美しく、それは世界を終わらせるくらいに残酷な程に膨大な魔素によって錬られた魔力の塊だ。拡がり続けた輪が地平線の果てまで拡がり、雲散し、やがて光は収束し消えていく。



『ノルン様すごいです……』

「おねえちゃんなんか術式の見え方いつもと違ったね」

「魔素の質の違いかしらね……やりにくかったわね」

「で、これはどんな効果があるんですか?凄い目立ってますが?私にダメ出ししましたよね?」


 見え方から結界の様にもみえ、魔力ゴリ押しの索敵術式にもみえた。もしこれが索敵であれば何も逃げられないだろう……地球の魔素フラッピングエーテルが馴染んでいないから索敵を思うように行使できないノルン。力ゴリ押しで認識阻害を打ち破ったりする、なんてことも考えられる。

 アンナはそんなことをあれこれ予想しながらノルンに聞いた。


「あれ?なんの効果もないわよ、ただ派手に光るだけよ、かっこいいでしょ?」

「…………はあ、そうですね……かっこいいです」


「でも索敵に引っかかったわね」

「結果的にそうなったんですか!?」


 ノルンが放った術式に何の効果はないもののアンナの考えていた通りあの術式、あの魔力に驚いたのか索敵が成功した様だ。


 場所は1km先だ。シャルロッテの仲間かもしれないし、シャロが出会った人間かもしれない。危険な魔モノに襲われているかもしれない。そう考えた彼女達は急いで現地へ向かった。



---------------


 少し時間は遡り

 ノルン達がいた場所から数km先にて


 彼女達は逃げていた――

 黒いドラゴンとデカいチーターの様な『モンスター』数匹と共に。


 彼女達は当初、黒いドラゴンとチーター達に囲まれ死を覚悟し戦っていた。しかし、攻撃が通らず途方に暮れていた。でもモンスター達は反撃もしてこない。

 このモンスター達には敵意はないのだろうか?

 それとも下等な生物と思われ扱われ嘲笑っているだけなのだろうか?

 疲労で自分たちの動きも鈍くなってきた。動けなくなった時に自分たちは捕食対象となってしまうのだろうか?

 極限の恐怖の中、突如、禍々しい光が発生し中から黒いドラゴンと同種のドラゴンが現れた。そして黒いドラゴンとチーターを襲い始めた。

 その隙に、彼女達は逃げようとしたが一匹のチーターに先回りをされた。だが特に襲ってくる気配もなく何故かそのチーターは右前脚を上下させていた。


「……綾乃さん、あれって……」

「招き猫??」


 チーターが近寄ってくる

 よく見ると猫に見えなくもない


「え!?なに?怖……」


 チーターは背を向け腰を下ろした


「…………背中に乗れってこと……?」

 1人は恐る恐る乗ろうと近づくがもし勘違いであれば危険だ。そう考え足をとめてしまう……が


「うわ……!!」

「ひぃ……」



 気づけば二人は別のチーターに襟首をフードを加えられ腰をおろしたチーターに乗せられていた。一匹のひときわ大きなチーターが後から現れた敵ドラゴンに飛びかかる。その隙にドラゴンとチーターの群れは二人を乗せ走り出す。


「え、ちょっと!あの子は?」


 一番大きなチーターがドラゴンを足止めしているが分が悪そうだ。恐らく殿しんがりなのだろう。元からいたモンスター達が何故自分たちを乗せて逃げているのか?それ自体も不可解で情報量から綾乃は頭がパンクしそうだった。


「レイちゃん……わ、私…………スゥースゥー」

「あ、綾乃さん!?え!?寝たの!?この状況で!?」


 怜も困惑しながらひとまず身を隠せそうな場所を探した。ひとまず洞窟の様な岩穴をみつけそこに身を潜めた。

 ひとまずチーターから降り、綾乃を寝かせ、最大限の認識阻害スキルを発動した。


(これでやり過ごせたらいいのに)


「それにしても……」

 指差しでチーターを誘導していたが中々に言う事を聞いてくれる。これはいけるんじゃないか?そう考え、恐る恐るチーターの首元を撫でた。


 最初はむず痒くしていたが、次第に猫の様にうずくまりごろごろしだした。

 その様子を見ていたもう2匹のチーターも近づいてきて何かしらを要求したいがどうしていいかわからない様な雰囲気を出していた。

 2匹も撫でて欲しいのだった。

「ゔにゃ〜」「み゛ゃ〜」


「うはっ、ネコちゃんじゃ〜ん、君たちもおいで〜」


 怜は大の猫好きだった


〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここまで読んでくださりありがとうございます!


ノルンとクーフィーの活躍をもっと見たいぞ!

ノルンかわいい!クーフィーかわいい!


という方は

★評価とフォロー、♡ください!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る