第4話:先輩とお風呂に入る

「あら、やっぱり一緒に入りたかったのね」


 中に入ると、バスチェアに腰掛けた先輩が背中を向けたまま話しかけてきた。


「いえ、ただ時間がもったいないと思いまして」


 僕は裸の背中を見ながら、心にもないことをつぶやいた。裸になったときに隠すのは胸と股間なんだから、背中くらい見てもどうってことないと、入るまでは思っていた。


 しかし、腰からお尻にかけての女性らしい体つきは、それだけで僕をドキドキさせた。


「そんなにじっくり背中見ちゃって、どうしたの?」


 先輩は壁の鏡越しに僕の反応を見ているようだ。


「……別に」


 僕は恥ずかしくて目をそらした。


「そうだ、背中洗ってくれない?真ん中あたりをゴシゴシこすってもらいたいんだけど」


 背中を洗うということは、つまり、先輩の体に触るということ。


「ほら、これ使って」


 先輩はボディーソープを含ませたスポンジを手渡してきた。


「それじゃ、失礼します」


 僕は緊張しながら彼女の後ろにしゃがみ込み、スポンジで背中を洗い始める。少し顔を上や横に動かせば鏡越しに胸が丸見えになるが、見たい気持ちを必死で抑えながら背中を磨く。


 先輩は見られても気にしないと思うが、「僕が胸を見ようとしている」と思われるのが嫌だった。


「ん、もう少し強くても大丈夫よ」


 余計なことを考えていたせいか、ろくに力が入っていなかったようだ。言われた通りに力を込めてみる。スポンジを通して背骨の感触が伝わる。


「先輩の背中、綺麗ですね」

「綺麗って、他の女の子の背中も見たことあるの?」

「もう、からかわないでくださいよ」

「ふふ、ごめんね。それじゃ、私は湯船に入るわ」


 先輩はシャワーで髪と体を洗い流すと立ち上がり、湯船に入った。


「ねえ、最近学校はどうなの?」

「今年で卒業って、まだ全然実感ないんですよねー」

「確かにそうよね。クラスメイトはほとんど同じ中学に上がるんだし」


 先輩は湯船に浸かりながら、僕の背中越しに話しかけてくる。僕からは鏡越しに先輩の顔が見える位置だ。つまり、目を合わせようとするとその下にある膨らみも目に入る。背中を洗っていたときとは逆で、今度は目をそらすほうが不自然になってしまう。


 僕が彼女と目を合わせながらも、目線を動かして胸を見ていること、きっと気づいているだろう。でも先輩はそれを指摘してからかったり、恥ずかしがって胸を隠すようなことはしない。僕のエッチな心を受け止めているのか、しょせんは子供だと思っているのか。


「それじゃ、私はそろそろ上がるからね」


 そう言うと、湯船から立ち上がる。曇った鏡越しに先輩のすべてが見える。先輩は、なぜか鏡の方を見ながら、絞ったタオルで体を拭き始めた。


 まるで、僕に見せるかのように。僕が振り返って直接裸を見られるのを待っているかのように。ここで振り向けば、先輩のすべてをこの目で見ることができる。


 逆に、僕のすべても見られてしまう。精通はまだなのにすっかり硬くなって勃ち上がったあそこも……。


 見られるのは恥ずかしい。でも、先輩は見せてくれたのに僕は見せないというのは不公平な気がする。先輩が体を拭き終わったあたりで、僕は思い切って立ち上がり、振り向いた。


 先輩はまず驚いた顔をし、次に恥ずかしそうに腰をくねらせ、一息ついてから僕の股間に目線を落とした。


「先輩、すごく……綺麗です」


 僕は、頭の先から足元まで、濃いピンク色の先端から茂みに覆われた秘密の場所まで、先輩の体を隅から隅まで見てからそう言った。もっと言葉を知っていれば少しは別の褒め方もあったのかも知れないが、今は「綺麗」としか言えなかった。


「ありがとう……それじゃ、私はご飯の支度もあるから、上がるわね」


 ずっと余裕だった先輩の声に、少しだけ照れが見えた気がした。堂々と振り返るという僕の行動が意外だったのだろうか。なぜか、先輩に勝った気がして嬉しくなった。


 それっきり、僕の体については何も言わずに振り向くと、形のいいお尻を揺らしながら風呂場を出ていった。


 僕は湯船に浸かりながら、洗面所の先輩をくもりガラスのドア越しに見ていた。バスタオルで体を拭く。横を向いているので胸の膨らみがわかる。正面から見た印象より少し小さいかも知れない。いや年齢的には普通なのかも?


 そのまま着替えも見る。最初に身につけるのは意外にもパンツではなくブラのほうだった。薄いピンクのタンクトップ型。スポーツブラというやつだろうか。クラスの女子のシャツから透けていたのを見たことがある。


 パンツを履く。色はグレーのボクサーパンツかな? 僕も似たようなのを持っている。意外と男子のパンツとあんまり変わらないんだな。


 結局、服を全部着て、ドライヤーでショートヘアを乾かすまで、僕は先輩の体に釘付けになっていた。

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