二章

電気いらずのエアコン



 俺の名前は飯田界人。

 どこにでもいる、ただの社畜だった。


 ある日えん罪で捕まり、会社をクビになる。

 田舎に戻ってきたところで、異世界へ行く扉を発見。


 それをくぐると俺は【まれびと】という称号を獲得。それからたくさんの異世界チート能力を経て、異世界でも現実でも最強の存在となった。


 とはいえ、俺のやりたいことは変わらない。

 働かずに自由気ままな暮らしを、どちらの世界でもする。


 こないだは超越者とか殺し屋とか、妙なことに巻き込まれそうになったけど、基本あまり関わりたくない。


 俺は自由に生きるんだ。


    ★


「うー……ん。朝か……」


 現実の天井がそこにある。


「ふぁー、よくねたや」


 俺はベッドから降りてのびをする。

 今、季節は八月に入った。


 長野の夏は暑い。よく長野って、山の上にあるから夏は涼しいんですね、と言われるがそんなことはないのだ。


 長野は山間の土地。特に、今が俺が住んでいるのは盆地だ。

 お盆をイメージしてほしい。側面がカーブしてるため、熱が真ん中に集まる。


 そう、盆地のため熱がたまりやすいのだ。結果、夏は暑くなる。

 もっとも、山の上にある場所(軽井沢とかな)は涼しいが、長野の夏は基本的に暑いのだ。


 ちなみに冬はくそ寒い。夏暑くて冬寒いとか、ほんと住むのに不便するとこである。


 だが、俺の家はとても快適だ。クーラーいらずである。


「ふぁー……」


 あくびまじりに、俺は居間へ向かう。時刻を確認したら11時過ぎていた。午前だ。会社に居た頃は完全に遅刻で怒られていただろう。


 だが、今の俺はどこにも所属しないでいる。怒られることなんてない。なんて楽なんだ。


 ここは、俺のばあさんが所有する屋敷だ。武家屋敷みたいな、古風な外観をしてて、中身も広く和風テイストだ。


 居間のテーブルの横に、誰かがいる。

 フェンリルのフェリだ。


「おまえこんなとこで何してるの?」

『涼しくて暗くて快適だ……』


 にゅ、と身体を出してくるフェリ。異世界にいたフェンリルだが、すっかり現実での生活に味を占めてしまい、こっちで暮らすことの方が多い。

 

『主よ、おぬしの発想はすごいな』

「急にどうしたよ?」

『まさか、付与魔法を屋敷全体にかけて、温度を下げるとはな』


 俺は数多くの魔法を習得してる。付与魔法はそのひとつだ。

 氷と風の魔法を、屋敷のなかに付与した。屋敷を魔道具にしたというわけだ。


 結果、屋敷の中には冷たい空気がずっと吹いてくるようになったのである。

 寒くなる前に温度調節とか開発しないとな。


『やはり異世界人は発想が吾輩たちとことなるな。付与魔法を家にかける、という発想がそもそも向こうにはない。自由な発想、そしてそれを実現できる実力。両方を備えている、我が主は……すごいな!』


 とまあ、俺はこうして美少女とフェンリルと楽しくらくーに暮らしてる。

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異世界を行き来できる俺、現実でも無双できるけど田舎でスローライフする~異世界チート能力でいつの間にか【長野の神】になっていた件~ 茨木野 @ibarakinokino

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