王国最強の女
「この俺より強いだ。今の俺よりもか。自分で言うのもアレだが。今の俺に勝てる存在はいないと思うぜ。俺はこの状態で今まで様々な敵を倒して来た。ある時は他国から攻めて来た万の軍勢を、ある時は反乱を企てた領主の城を丸ごと破壊し、ある時は魔物暴走によって暴れ狂った何万と言う魔物を、またある時はあの最強と称されている魔物・ドラゴンさえもだ。そんな俺よりも強いだ。ハハハハハ。ハハハハハ。ハハハハハ。そうか、そうか、ならば見せて見ろ。マリアンヌ、お前の力をおおおおおおお」
「ええ。お望み通り見せてあげるわ。神器解放・来なさい・グリモワール」
そして現れるわ。一冊の本。
しかし、その正体は神器・グリモワール。
300年前に活躍したとある大賢者が使用していた神器であり、その大賢者の死後、行方不明となっていた神器であった。
その効果は多岐に渡るが。こと戦闘面においてはグリモワールはたった一つの効果しか持っていない。
魔法の威力上昇のみである。
たったそれだけ。
たったそれだけであるが、この威力上昇が最強なのだ。
その上昇倍率は驚異の1000倍。
10倍でも100倍でもなく、1000倍である。
その威力たるや、グリモワールに認められる程の大魔術師が持てばもはや一種の兵器となる。
ひとたび魔法を放てば地形を変えて、最大火力で放てば島を消し炭に変えることすら出来る。
それこそが神器・グリモワールの力であった。そしてそのレベルの威力となると防御力最強とまで言われているアキレウスの鎧すらも貫通させる程の威力であった。
「ハハハハハ。神器・グリモワール、行方不明になっていたが、まさかマリアンヌ、お前が持っていたのか。流石だよ。流石過ぎるぜ。ハハハハハ。それならば俺に攻撃が通じそうだな。でも、防御面はどうするんだよ。その程度でこの俺を超えられると思ってるのか、喰らいやがれ。雷切・雷鳴斬翔」
雷鳴斬翔・それは飛ぶ斬撃。
一定上の技量の魔力を持った、剣士であれば比較的に容易に出来る技。
しかしながら遠距離攻撃となる為に威力は非常に弱い。
だけどそれが雷鳴という神器を非常に高い技量と魔力を身に纏っている守護者・バルバッセロが放つのならば話は別であった。
その威力は地を割き天を割き、文字通り海を割く。
当たれば最後、全てが塵とかすような威力を持った飛ぶ斬撃。
それこそが雷切・雷鳴斬翔である。
「闇魔法・闇盾」
マリアンヌの放った魔法によって生まれるわ、1枚の盾。大きさにして2メートルと少し、厚さは数センチ程度の見るからに禍々しい紫色の盾である。
そんな闇盾は雷鳴斬翔をの攻撃を全て吸収した。
そう受け止めるではなく吸収したのだ。
周りには一切の被害が出ていない。
「闇魔法、それは禁術の中の禁術、使用が発覚した時点で即処刑ないし、魔法を使うために必要な魔力丹をぶっ潰される。なのに闇魔法を使えるだぁ。しかもそんな練度で。ハハハハハ。ハハハハハ。ハハハハハ。ハハハハハ。俺の俺の想像以上だよマリアンヌ~~~~~~~~、いや。マリアンヌ様~~~~~~~~。そしてそれでこそ俺が仕えるに相応しい」
「あら、私が闇魔法を使えることに疑問は抱かないのですね?」
「ハハハハハ。神器・グリモワールを持ってんのに、そんなもの今更過ぎるだろ。それに俺様は別に闇魔法に対する苦手意識とかはないからな」
「あら。それは嬉しですね。でも、もっと闇魔法を見せてあげましょう。闇魔法・闇弾×1000。闇の怒りを喰らいなさい」
禍々しい紫色に輝く1000の弾丸が守護者・バルバッセロに向かって噴出される。
その威力たるわ、1発の闇弾が、さっきの雷鳴斬翔に勝るとも劣らないレベルであり、実質雷鳴斬翔1000発分の威力であった。
そしてその闇弾を守護者・バルバッセロは自らの体で全て受け止めた。
その上で無傷であった。
「なあ、俺が何で、闇魔法に対して苦手意識がないか、教えてやろう。それはな、俺の神器・アキレウスの鎧は闇の力に対しての絶対的な優位性を持っているからだよ。どれだけ強力な力だろうと闇の力であるのならば、俺は絶対にダメージを負わねえ。流石に俺の勝ちだ。マリアンヌ様諦めな。抵抗してもいいがこっからは一方的な蹂躙だぜ」
「そう、じゃあ打撃系統の攻撃はどうかな。闇魔法・闇纏い・そしてグリモワールよその姿を変えよ。神器変形・グリモワール・モード・ソード」
マリアンヌは闇を纏う。
元々豪華なドレスを身に着けていたマリアンヌ、そんなドレスに豪快かつ華麗に闇が纏われ、豪華な飾りも宝石も全てが闇に塗りつぶされて紫色のシンプルなドレスになる。
しかし、そこに感じるのは圧倒的な魔力・魔力・魔力であった。
余りの強すぎる程の闇の魔力によって周囲の空間が悲鳴を上げる。
そしてそんなドレスよりも注目をするべきは手に持った剣である。何の装飾もない、刀身がむき出しとなっている60センチほどの片手剣。
色は透き通るようで飲み込まれるような黒であった。
そんな剣は本の形をしていた神器・グリモワールが剣へと姿を変えた姿である。
神器・グリモワールの能力の一つとして魔力を注ぐことで所有者の思い描いた通りの形へと変化するのだ。
ただし、あくまで変化するだけであり、剣の形をしているが、よく切れるという訳ではない。剣としは失敗品である。到底戦いで使えるものではない。
それでもその本質は神器であることには変わりない。
神器とは神が作り上げし人智を超えた道具。そんな神器は全てに不壊が付与されており、グリモワールもまたその例外ではなかった。
剣としてはなまくらも良い所だが、絶対に何があっても破壊されない剣、それこそ神器・雷切と打ち合っても問題のない剣がそこにはあった。
そして、マリアンヌにとって。否、雷切を持つ守護者・バルバッセロと剣を交える場合はこの絶対に壊れない剣というのが凄く重要であった。
「風魔法・ブースト」
マリアンヌは風を使い縦横無尽に駆け回りながら守護者・バルバッセロに攻める。
キ~~~~ン
不壊である神器がぶつかったことにより。何とも耳障りな激しい音が鳴り響く。
「闇魔法・闇触手」
闇魔法・闇触手・闇を使って紫色の禍々しい触手を生み出して相手を拘束する技。
もちろん、守護者・バルバッセロに近づいただけで触手は雷の魔力によって焼かれる。
しかし、闇魔法によって生まれた闇の触手、雷の魔力で焼かれた程度でどうにかなる程弱くはなかった。
アキレウスの鎧という闇に対して絶対的な力を持つ神器の効力がまだ少し薄い、鎧で覆われていない、手足や鎧の中の方を狙って闇触手は蠢く。
「しゃらくせえ、邪魔な触手だな。アキレウスの鎧よ。悪しき闇の触手を滅せよ。魔力解放」
アキレウスの鎧の闇に対する絶対優位性が守護者・バルバッセロの言葉によって一時的に大きく強化されて、闇の触手が全て吹き飛ぶ。
「まあ、そうなるよね。でも、よそ見をしちゃ駄目でしょ」
マリアンヌの剣が守護者・バルバッセロの頬を掠めた。
マリアンヌは決して剣が上手いという訳ではなかった。剣の才能があるという訳でもなかった。
ただ、油断をついただけであった。
それでも、アキレウスの鎧という最強の防御力を持った神器を身に着けている状態なのに傷をつけられたことに守護者・バルバッセロは大きく動揺した、否、大きく興奮をした。
「いいねいいねいいねいいねいいね。流石だよ。流石過ぎるぜ、マリアンヌ様~~~~。この俺様にアキレウスの鎧を付けた俺様に傷をつけるとは、じゃあ、乗ってきたしもう一段ギアを上げるぜ。唸れ、雷切・雷鳴落雷」
雷切からマリアンヌに向かって高威力の雷が飛ばされる。
「闇魔法・闇盾」
マリアンヌは雷を全て闇盾で吸収する。
「さて、御返しよ。さっきの雷鳴斬翔も込めてね。闇魔法・闇返し」
放たれるは闇と雷が混ざったことのよって生まれる黒色の稲妻。
その姿は怒れるブラックドラゴンの様であった。
ギャアアアアアアアアア
ブラックドラゴンの威嚇のような音を立て、黒き稲妻が守護者・バルバッセロに襲い掛かる。
自分の魔力の籠った一撃、いかにアキレウスの鎧という神器があるとはいえ当たれば致命傷は免れない、しかも都合の悪いことに、先ほどアキレウスの鎧の魔力解放をしてしまっていた為に、もう一回アキレウスの鎧の魔力解放をするまでに後数分の時間が必要であった。
否、マリアンヌはそれをセリカから教わっていた為に、闇魔法・闇触手を使い、アキレウスの鎧の魔力解放をするのを待っていたのである。
全てはこの一撃を当てる為に。
そんな黒き稲妻に対して守護者・バルバッセロは真正面に立つ。
真正面に立って、目を開け、雷切を両手で持ち高く上げてからゆっくりと言葉を紡ぐ。
「雷切よ。目の前にある悪しき稲妻を切り裂け。一閃」
と。
黒き稲妻は、ブラックドラゴンのような稲妻は、綺麗に真っ二つに切断されて、そのまま、勢いを大きく落として、床に落ちる。
ドンガラガッシャン
激しい音が鳴り、合金で覆われているはずの床は大きくへこみ、中には地面が見えている所もあるが、守護者・バルバッセロは無傷であった。
スパ
黒き稲妻を一刀両断し、無傷であった守護者・バルバッセロの右手首から血しぶきが舞う。
「よそ見は禁物だよ。だからこうして斬られる。もう少しこの剣に切れ味があれば右手首を落とせたのにね、残念ですわ」
マリアンヌは黒き稲妻を囮に風魔法を使い音を完璧に消して、守護者・バルバッセロに近づき、一閃を放ち油断した瞬間に襲い掛かったのだ。
完璧なる不意打ち。しかし、マリアンヌの持つ剣が剣としてはなまくらであったのと、守護者・バルバッセロのアキレウスの鎧の力によってその不意打ちはそこまでの効果を持たなかった。
「ハハハハハ。そうだな。でも、まだ勝負はついてないぞ。雷鳴斬翔×10」
「その技を使ったところで私の闇盾によって、吸収されるのに懲りないですわね。闇魔法・闇盾」
マリアンヌは雷鳴斬翔を全て闇盾で吸収させる。しかし、吸収させた後に気が付いてしまう。
守護者・バルバッセロの姿が自分の目の前にいないことに、風の動きを読み慌てて右に飛ぶ。
スパン
神器・グリモワールを持っていた右手首が飛んだ。
本来であれば激痛で叫んでもおかしくないような状況。
しかし、マリアンヌは冷静に今の状況を分析して、雷鳴斬翔を囮に自分に近づき、攻撃を仕掛けたのだと理解する。
「まあ、なんだ。マリアンヌ様、よそ見は禁物だぜ。にしても右手首切断だぞ、普通はもっと痛がってもおかしくないはずなのに顔色一つ変えないとは、流石マリアンヌ様だぜ」
「この程度の痛みで悲鳴を上げては、王になる資格なんてのはないですわ」
「ハハハハハ。言うねえ。でもこれで神宮・グリモワールは持てなくなっただろ。さあ、降参しな。といってもマリアンヌ様の力は認めたし、マリアンヌ様に忠誠を誓うってのは本当のことだから安心しな」
「何を油断してるのですか」
ヒューン
風を切る音と共に、マリアンヌの斬られて右手首が剣の形をした神器・グリモワールをしっかりと握った状態で守護者・バルバッセロに襲い掛かった。
慌てて雷切で応戦する守護者・バルバッセロ、その目には確実な動揺が見られていた。
「おいおい、斬られたはずの手首が動くって、マリアンヌ様、本当に人間ですか?」
「失礼ね。人間なんて矮小なくくりに入れないでくれる。私は国王になる選ばれた人間ですわよ」
「いや、それ種族としては人間じゃないですか。何処に自分の斬られた手首を動かす人間がいるんですか?」
「あら、別にこれくらいは普通よ。セリカも出来るわ。まあ、それはいいわ。それよりも、まだ勝負はついてないわよ。闇魔法・闇触手・闇魔法・闇刃×1000・闇魔法・闇弾×1000・闇魔法・闇剣創成×10、あの男に襲い掛かれ」
守護者・バルバッセロに向かって襲い掛かるわ。
禍々しい闇の触手。高威力の闇の刃、高威力の闇の弾丸、そして闇の剣10本であった。
それは、圧倒的な物量であった。
そしてそのどれもが当たればクレーターを簡単に生み出す程の莫大なエネルギーを持っていた。
「マリアンヌ様、素晴らしい攻撃です。ですが、問題はありません。アキレウスの鎧・魔力解放」
アキレウスの鎧が激しく光輝きマリアンヌの闇魔法を全て消し飛ばした。
「う~ん。相変わらず出鱈目な力ね。ハア、まあいいわ。闇魔法・闇操作・私の腕よ戻りなさい」
自分の腕をずっと闇魔法で操作して攻撃させていた、マリアンヌはアキレウスの鎧の輝きによって腕が消滅するのを恐れて自分の手首に戻し、もう一度繋げ直す。
「それよりも、マリアンヌ様、魔力の残量の方は大丈夫ですか?」
「ああ、やっぱりバレてるわね。ええ当たりよ。大丈夫じゃないわ」
マリアンヌの魔力量は常人を遥かに超えていた。
その魔力量は実に常人の数千倍以上。
元々の圧倒的な才能にセリカから教わった特別な魔法訓練法、そして、公爵家としての力を使い、金にモノを言わせた集めた魔力増強薬によって、マリアンヌの魔力量はある意味で化け物と呼べるレベルまで上昇していた。
しかしながら、今までの戦いでその魔力のほとんどを消費してしまっていた。
無理もない、高威力の闇魔法をあれだけ連発したのだ、魔力も枯渇するというものだ。
「まあ、そうでしょうね。いくらマリアンヌ様といえど、あれだけの大魔法を連発して魔力量が空にならない訳がないですよね。さて、今度こそ本当に私の勝ちですね」
「いいや。私はまだ本気を出してないわ。せっかくだから最後に私の本気を見せてあげる」
「本気、これだけ盛大に戦って、まだ本気を見せてないと。ああ、駄目だ、マリアンヌ様に敬語とを使おうと、喋ってたけど、駄目だ。なんてそそるんだ。まだ上があるのか。マリアンヌ様。ああ、マリアンヌ様。その本気私に見せてください」
「ええ。もちろんそのつもりよ」
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