農家便利スキル『並列思考』

 さて、私は料理の他に創作活動も趣味としているわけですが、かなりハイペースな書き方だとよく言われます。


 現在連載中の作品も、七月から開始したもので、2ヵ月と1週間で40万字に到達しています。


 自分でもかなりハイペースだと思っていますが、なぜそれが可能なのか。


 別に無職と言うわけではありません。何度も言うように、自分は農家で休みなく働いています。


 ならば、なぜこのハイペース投稿を維持できるのか。それが農家の持つ便利スキル『並列思考』というやつです。


 これは言うなれば、“やっている事と異なる思考を行う”というものです。


 皆さんも経験がおありと思いますが、別のことを考える、というわけです。


 農家の場合は、これをやれる場面がかなり多いのです。


 トラクターで耕運しているときなどがそうですね。道路ではないので他に車もないし、ひたすら真っすぐ進ませて、端まで来たらハンドルを切り返して、また真っすぐ進む。これの繰り返しですから、思考する時間はいくらでもあります。


 管理機の畝上げ中もそうですね。畝間に機械をゆっくり進ませて、土を盛り上げていくのですが、これもひたすら真っすぐ進んで、端まで来たらターンですから、ここでも考え事が捗ります。


 あるいは、白ねぎの梱包作業において、皮むきをしているときもそうです。ひたすら皮をむいて、機械的に状態を確認して選別するわけですから、別のことを考えながら作業できるというわけです。


 このように、“考えるだけ”なら日中でも可能で、昼間の内に考えていたことを、夜に家へ帰ってから筆に起こすわけですから、考えながら筆を進めるより遥かに早くなります。


 これが『並列思考』の恩恵です。これがあるから、素早く作品を仕上げることができるのです。


 これと同じ事をやっていたのが『鋼の錬●術師』の作者である漫画家の荒●先生ですね。先生の描いた農業エッセイ漫画『百●貴族』でも、自分のやっていることと同じことやってました。


 先生の実家は北海道で農家兼酪農家を営まれていて、埼玉に引っ越すまでは農作業しながら漫画を描いていたそうです。


 搾乳しながらネームを考え、肥料運びながらコマ割りを頭の中で描き、夜に“寝ないで”漫画描いていたとエッセイ漫画に描いていたのを拝見した時は、思わず笑いましたよ。


 雪に閉じ込められる冬場以外は、こんな感じでやっていたそうです。

 

 農家脳は考えることが一緒なんだなぁ、と妙に納得しました。


 こうした単純作業によって、思考容量キャパシティに余裕があるときに考えておき、夜になってから創作活動に打ち込む。これぞ、ハイペースの秘訣です。


 “晴耕雨読”こそ、あるいは理想的な生き方かもな、と考える次第です。


 日に当たることのなかった調理師時代に比べて、余程健康的ではないでしょうか。


 日の下で体を動かし、思考力も無駄なく利用し、夜や雨の日に読書や創作に時間を費やす。そして、趣味の料理にも打ち込む。


 まさに、理想的な生活を今、私は手に入れたわけです。


 皆さんも農業ライフ、いかがですか?


 では、皆さん、また次回に~。

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