やる気は預金残高と上昇値に比例する

 農業は商売の一形態です。当然、野菜を作って、それを売って、懐を温めてこそ、成り立つものです。


 よって、営農口座の資金が増えるとやる気が出て、減るとげんなりします。


 まあ、これはどの仕事においても言えることですが、はっきり言って、脱サラして農業を始めた人間にとっては、特に実感する案件であると思います。


 そもそも、自分は元々調理師でしたが、はっきり言って薄給でした。一ヵ月汗水たらして働いて、ようやく手にした賃金がたったのこれっぽっち。まあ、昼夕は職場で食べれたので、食費はかなり抑えれましたが、それでも薄給であることは変わりません。


 それが積もりに積もって、転職を決めたという流れです。


 つまり、“労働負荷”と“労働報酬”の不均衡こそ、転職の一押しでした。負荷が高かろうが、高収入であればそのまま続けていたかもしれませんが、負荷に対する報酬が少なすぎると感じたため、身を引いたのです。


 文字通りの畑違いな職を選び、農家に転じたわけですが、率直に言うと、“大成功であった”と感じています。


 もちろん、役所の大ポカにブチキレたり、体作りが仕上がるまでは筋肉痛に悩まされたり、軌道に乗るまでは資金繰りに苦しんだりと、それ相応の苦労をしたのは間違いありません。


 ですが、それに見合うリターンは得たつもりです。


 調理師であったころは朝から晩まで働いて、拘束時間は長い上に作業は面倒なものが多い。仕込みから調理、果ては発注まで、色々とやっていました。正直、今思えば、よくあんな劣悪な仕事をやっていたなと思う次第です。


 一方、現在はというと、拘束時間が“実質”ゼロだということです。なぜなら、自分でスケジュールを完全に組めるわけですから、“拘束されている”という感覚がないからです。好きな時に畑に出掛け、好きな時に家に戻ればいいんですから、拘束なんてありません。


 しかし、怠けてばかりいては稼ぎが得られません。“楽しい”から、好き好んで働いているわけです。


 そして、楽しいの根幹にあるのが、ぶっちゃけ“お金”なのです。


 皆さんも想像してみてください。通帳の預金残高がみるみるうちに増えていく状況を。それもかつての一ヵ月の給料が、一週間ごとに振り込まれる感覚を。


 波に乗ってきた就農3年目がまさにこれでした。


 2年目までは資金がカツカツで、どんどん減っていく預金残高を眺めるのが億劫でした。お金が減って喜ぶ人間なんていませんから、当然と言えば当然です。


 しかし、2年目の終わりごろから資金繰りが改善していき、同時に売り上げが伸びてくると、出ていく金と入って来る金が逆転。この辺りで気持ちにゆとりが生まれました。


 気持ちが軽くなると、焦る必要もないのでどっしり構えて物事を見ていけるようになり、日々の作業も安定感が出てきました。


 なにより資金です。以前は肥料や農薬を購入するのに、10万、20万と払わねばならないと、気分が重くのしかかってきました。


 しかし、今は違います。10万くらいポンッと出せるようになり、それでいて平然としていられるようになりました。


 稼ぎが増えると、お金の重みが本当に変化したのです。5年目に突入した現在では、50万“程度”ならサッと出せるくらいに資金は蓄積され、身構えることなく諭吉の軍勢を送り出せる強さを得ることができました。


 預金残高がゆとりを生み、ゆとりが視野を広げ、広がった視野で物事を見つめると、焦ることなど何一つないと感じるようになりました。


 たとえ資金がドサッと出ていくことがあろうとも、すぐに取り戻せるという“実感”と“実績”があるので、落ち着いて何事も対処できるようになりました。


 大阪京都であくせく働いていたのがバカバカしくなるほどに、今の生活は充実しています。


 それもこれも、お金があるからです。預金残高こそ、平穏のバロメーターなのです。


 減ったところで、すぐにリカバリーできる預金の上昇値が、自身が受ける正当なる評価であり、数字となって通帳に記載されていきます。


 さあ、これを見ている“労働者”諸君! 今一度、見つめ直してみよう。


 あなたはは現在の労働環境に満足していますか?


 上司から真っ当な評価を受けていますか?


 受け取る報酬は、労働の対価として満足しうるものですか?


 さあさあ、自分で自分をチェックしてみよう。不満を抱く者なら、きっとそれは転職を志す第一歩となるでしょう。


 このままいくか、道を変えてみるか、それはあなたの判断次第です。


 こちらが成功して、通帳をニヤニヤ見ながら楽しめる生活を送っているからといって、続行する者も成功するとは限りませんからね。


 すべてはあなたの決断一つです!


 などと煽っては見ましたが、「人生で成功するのに必要なのは、勇気と想像力、そして少しのお金」なのです。チャップリンの言葉です。


 さあ、現状に不満を抱くのであれば、何かをやろうと言う一歩を踏む勇気を、まずは手にしましょう。


 その勇気を得たからこそ、今の自分の成功があります。


 戦わない者には、決してチャンスは巡ってこないと思っています。


 もちろん、勇気だけでなく、想像力とお金も忘れずにね! 

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