4月

 4月に入り、気温もいよいよ上がってきますが、それは同時に病害虫の発生の合図でもあります。


 そのため、防除、すなわち農薬の散布が必要になってきます。冬の間は眠っていた病原菌や害虫を、寄せ付けないように薬を撒きます。


 農薬は多種多様。液体から粉末、砂粒など、形状も様々で、水溶性や土壌混入、そのまま散布するものなど、薬の撒き方まで違ってきます。


 もちろん、どの病気にどの薬剤を使用するか、あるいは有効な殺虫剤はどれか、どの除草剤を使うべきか、それらの全パターンを把握し、最適解を常に選択し続けなくては、よりよい白ねぎはできません。


 また、回数制限もあります。苗を畑に植えて収穫するまでに、この農薬は何回使用できる、という制限が設けられています。


 そのため、この病気にはA薬が一番良く効くが、回数制限があるので温存しておいて、効能は薄いが回数制限に余裕のあるB薬でこの場は切り抜けよう。などと考えながら薬の配合や配分を考え、収穫までのスケジュールに組み込んでおきます。


 病気の具合も天候次第と言う点もありますが、おおよそパターン化されており、一度覚えてしまえば楽なものです。


 もう一つ、農薬使用で気を付けねばならないのは、『収穫前日数』です。これは「この農薬を散布した後は、収穫までに規定日数を空けること」を定めた仕様です。


 例えば、薬品の注意書きのところに、「収穫前日数7日」と書いていれば、散布したその日から7日以上空けてから収穫する規則になっています。これが守られていないと、残留農薬等の問題になりかねないので、注意が必要です。


 たまに出てくる新薬や、既存薬の仕様変更などの情報には、当然目を光らせておかねばなりません。使用できる回数や収穫前日数に変更があったり、使用できる範囲が広がったりするからです。店やメーカーから情報が下りてきますので、割とすぐに気付きます。


 また、この頃から、農耕トラクターも大活躍します。植える前には当然土を起こして栄養と酸素を行き渡らせ、植え付けに適した状態にしていきます。冬の間は雪や雨で邪魔され、なかなかトラクターをかけるタイミングがありませんでしたが、春の訪れとともにその機会が巡ってきます。


 そんなこんなで4月は過ぎていきます。無論、この間も、収穫、出荷、畝上げ、植え付け、この作業も行っています。


 農家に休みなんかないんだよ~。この時期はね。



             ~ 5月に続く ~

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