1月

 新年明けましておめでとうございま~す!


 しかし、白ねぎ農家の新年は早い。


 だいたい3日には動き出すところもあります。


 初出荷が4日に設定される市場が多く、そうなるとその前日には梱包作業をしておかねば、間に合いません。


 なお、白ねぎは年末に収穫しておき、倉庫に放り込んでいるのが主流である。


 この時期は気温が低く、抜いたねぎも1週間くらいなら普通に持つからだ。


 そもそも、白ねぎはかなりタフな野菜であり、他の葉物野菜とは一線を画すると言ってもいい。根部を切断しない限りは、かなり持つ野菜なのである。


 ついでであるから、ここで白ねぎの梱包作業について話しておこう。


 なお、同じ白ねぎといっても、産地によって形状が異なり、それによって出荷規格も多種多様であるため、あくまで筆者のいるエリアでの規格であることを、事前に断っておこう。


 まず箱詰めの前に、白ねぎを奇麗にしておく必要がある。なにしろ、畑から抜いてくるのであるから、土に埋まっている部分は泥だらけだ。


 根を切り、葉を切りそろえておく。箱のサイズに合わせ、根から葉先までの長さが58㎝になるように調節します。


 そして、エアーコンプレッサーで圧縮した空気を当て、ねぎを外側から剥いていく。この際、何枚剥いても構わないが、最低3枚分の緑の葉を残しておかねばならない。


 皆さんも店頭の白ねぎを思い浮かべれば分かると思うが、緑色の葉頭部が3枚以上残っているのが思い出されるのではないでしょうか?


 それと、軟白部、すなわちねぎの白い部分の長さが27㎝以上になるようにしておかなければならない。あまり軟白部が短すぎるとみすぼらしく感じるため、これには既定の長さが設けられています。


 そして次に結束です。要はねぎをテープで巻いて束ねる作業です。


 ねぎの束は1束300gと規定されており、10束で1箱となり、この箱が出荷の単位となります。


 1束300gが基本ですが、その束が2本で1束ならば2Lサイズ、3本で1束ならLサイズ、と束ねる本数によってサイズが異なってきます。


 これが非常に重要で、サイズによって値段が違ってきますし、出荷箱数にも影響が出ます。


 例えば、2Lサイズでの出荷の場合、1束2本で10束ということで、ねぎは1箱当たり20本必要ですが、これがLサイズだとねぎは1束3本の10束ということで、ねぎは一箱当たり30本必要になります。


 つまり、2Lサイズの方が少ない本数で箱を作れるため、その方がお得なのです。


 ただし、2Lの規格に合うねぎならば、1本150g以上にせねばならず、よく太ったねぎでなければならないというわけです。


 つまり、白ねぎ農家としての腕前の良し悪しがねぎの太さに現れ、それが出荷数に影響し、最終的には売上そのものに反映されるというわけです。


 畑の同じ本数のねぎを植えたとしたら、ねぎを太らせた方が出荷量が増えるというわけである。


 ここで上手い農家と下手な農家の差が出てくるのだ。


 おおよその目安ではあるが1反(1000㎡)で900から1000箱出せれば、一人前のねぎ農家としては合格、と考えてもらえばいい。


 季節によって出来高に差が出てくるが、おおよそそんなもんである。


 ちなみに、筆者の自己最高記録は1反1322箱だ。


 知り合いの農家には1500箱を超えた人もいるので、上には上がいますよ。


 そして、仕上がった箱詰めされた白ねぎは、JAの集荷場に持ち込みます。ちなみに、自分は収穫した白ねぎは全部JAに持ち込みます。


 自分で販路を持った方が儲かることには儲かりますが、販路を探す手間や細々した事務処理のことを考えたり、あるいは無制限での引き取りもあるので、JAでの出荷にしています。


 たとえ、手数料を取られようが、手間を考えると、JAに頼るのが一番というのが自分の結論です。


 出荷の箱数とサイズを確認してもらい、それにて出荷は終了。出荷した分の売上金は、口座の方にだいたい2週間後に振り込まれます。


 このガンガン増えていく預金残高を確認するのが、最高に楽しい時間である。


 想像してみてください。毎週何十万と言う金が振り込まれてくるのですよ。増える預金残高を眺めるのは、これ以上にない喜びです。


 これ以上の元気の出る処方箋はございませんよ。


 ちなみに、大阪や京都で調理師をしていた頃の何倍も稼いでいます。


 もちろん、リスクは負いますけどね。実際、洪水にやられてかなりの損害を出したこともありますし、その時は赤字でしたよ(涙)


 それらを乗り越えて、今があるのです。貯蓄が心のゆとりを生み、ゆとりがいい仕事を生み出す活力にもなります。


 以上が梱包と出荷の流れです。自分の農園は年中収穫でき、出荷もできるため、これを1年通して行っています。


 そして、話は1月の農作業に戻りますが、結局やることは収穫と出荷作業以外には特にこれと言った作業はありません。


 強いて言えば、降雪時の雪かき程度でしょうか。


 自分が関西から北へ引っ越して一番困ったことと言えば、やはり冬場の降雪です。


 そこまで雪深いというわけではありませんが、ひどい年には膝くらいまで積もったこともあるので、そうなったら畑には入れませんし、軽トラを走らせるのにも雪かきがいります。


 そんなときのためにこそ、天気予報であれそうな日を予想し、先んじて畑からねぎを掘りまくり、倉庫に入れておくのです。


 そうすれば、ストックがあるうちは畑に掘りに行かなくてもいいので、真っ白な畑から、真っ白なねぎを抜いてくることもなくなります。


 あと、この時期から皆さん大好きな『確定申告』の準備に取り掛かりますが、そちらは後述の金銭に関する章でご説明いたしますので、この場では割愛させていただきます。




            ~ 2月に続く ~

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