第6話 世界樹自身が課す”試練”
(…あれここは死後の世界…。死んだのかな)
周りには何もない空間で、ふわりを浮かぶ自分。
意識も何もかもはっきりとしていない。ただ真っ暗な空間だった。
死んでいった者たちの場所なのか…、何なのかは分からない。
やがて、青白い光が空間に出現する。
(何だろう…これは自分自身の光…)
それは、次第に形を形成していく。
根っこが生えたかと思うと急速に成長し世界樹へと姿を移し替えていく。
(自分自身何が起きているのか分からない)
その世界樹は、少しずつ自分自身に近づいてきた。
青い光は、己を包み込み…男のような女のようなどちらでもない声が響く。
”汝、何かを乗り越える力を得たいならば…目覚めし場所に眠りし獣を倒せ。さすれば我らは汝に力を渡そう”
(どういう事…)
声が終わると同時に世界樹は、心の中へと入っていく…
そして、急速に空間が明るくなっていき…。
意識が戻り目を開けると先ほどまで戦っていた通路ではなく。
青い天井のある小さな部屋であったカプセルのようなものに入っているのが分かる。
(誰が…どうやって)
何が起きているのか、把握できていないが。
助かったという事は事実だ。
カプセル型ベッド…。2人とも無事なのかな。
周りを見渡してみると、すやすやと眠る2人の姿があった。
誰が一体と思っていると…
「おっ目覚めた…。よかったああ。ここが機能してなかったら、君たち死んでたね」
と少女の声がする。(誰だろう)
ベッドから起き上がると。目の前に少女がいた。
背は低いかもしれない感じだけど…チビではない。
服装的には、世界樹周辺では見られない古代の服装とでもいえるスタイルだった。見たこともない素材で作られた鎧の下には白いスタイリッシュな服を着ているような気がするだけだ。スリムな体に…胸はそこそこ。茶髪の長い髪であり、瞳は透き通るような黒色でその瞳の奥にはやわらかいものがある。腰に銃をぶら下げているが、何かよく分からん。その子は、こちらを見つめ
「初めまして…私はメープル。あなた達を助けた。あなたは? 」
「俺か…、アーシュ。助けてくれてありがとな」
メープルは、お辞儀をした後、じっと見つめている。
何だか恥ずかしいけど、状況を整理するためにもう少し情報が欲しいので。
「すまん…、メープル。どうしてこの古代遺跡にいるんだ」
と聞いてみると、メープルはあちゃーという感じで頭をかき話す。
「私、さっき目覚めたの」
「えっ…」
さっき目覚めた…。(恐らく遺跡が俺達を迎えたときに目覚めたのかもしれないな…)そして彼女はこう答える。
「一部の記憶が欠落しているけど、目的は世界樹を踏破するってのは変わらない」
「その世界樹って、この地上に生えているアウシュハーリアの事か?」
と聞いてみると、メープルは大きく頷き
「そう…」
「この施設の事も何も覚えてないのか? 」
と聞くと、彼女は首をそっと傾げ
「確かな記憶では、奥に何かあると思うんだ」
「そうか…。で、俺達をどうやって助けた? 」
「魔物がいたから、銃を手に取り撃ち殺した。それだけだよ」
…俺達が太刀打ちできない存在を、倒した…。
古代から眠っていたとしても、戦闘能力がそれなりにある子がやってきたんだなという認識にしておくか。
「じゃあ、そろそろあなた達の町に私を連れて行って」
「……、俺達が悪い奴とは思わないのか? 」
「そんなの全く思わないよ。元々悪い奴なら、私の事を縛って何処かへ連行していくでしょ? 」
…さすがに悪いように思い過ぎなんじゃないのかな。
と思いつつもこれ以上は何も言わないでおこうかなと思う。
暫くしていると、メリネアとブラストが目覚めたので2人を紹介し…
「よし、出るか」
「もう大丈夫なのかな」
「ああ、元々この遺跡を探索しに来たんだ」
探索をするという事を伝えるとメープルは頷いて。
「じゃあ、私が目覚めた場所に連れていくね。そこで見てもらいたい文章があるから」
という事で俺達は、とことことあるくメープルについて行く事になった。
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