第7話 世界樹料理その味は?

 『ウラフェルカムラ』という宿屋に入った俺達。そこは、夫婦経営の宿屋であった。宿屋にはいると、後ろに背負っているお嬢様を見て目を飛び出していたがすぐにベッドを用意してくれた。図体のでかい上半身の筋肉が優れている人が来たので


「ありがとうございます」


と伝えるとその人は、


「何、そこまで気にする必要はねえ。誰かが困っていれば助けるそういうものだろ」

「あっはい……」


その主人は、お嬢様のベッドの近くに食べ物の入った皿を置く。

その皿には、淡く白い液体に何かの魔物が入った料理だった。


「えっとこれは」

「お嬢様が目覚めたら、これを食べさせてみな。体力に色々なものが回復する絶品料理だ。世界樹ユグドラシル料理ブランチともいってな。それぞれの世界樹の魔物の素材から味を抽出し編み出してるんだ」

「ほへえ」


(何だか凄い宿屋に入ったようだ)

料理を見ておなかの虫が鳴る。

すると、主人は別の机の上に別の料理を乗せた。その料理は、ゼラチンのような何かだった。ゼラチンは青く、プルプルしてるように見える。


「今用意できるもんがこんなものだが食ってみ」

「これは? 」

「スタラスの衣を使って作った料理だ。名前は忘れたな。今日作ったばかりの試作品だ。味見はしてある」


(スタラス聞いたことがない…。それでも、世界樹料理聞いた事はなかったけど美味しそうだな)


お腹がすいて仕方がなかった俺達は、その料理を別けて食べる事に。

もし逆らったら筋肉でぼこぼこにされると感じてしまっていた彼らはスプーンで一口それを食べると……。


「なんじゃこりゃああああ」


とブラストが叫ぶ。

ブラストが好評っぽいので、自分もと一口口に入れると、

(この味わい何、ゼリーかと思えば中からご飯や何か色々なものが炸裂している。美味しすぎない)


「美味しいですね」

「そうだろ? うちは、運びと雑用洗濯などをしてるカムラで。その料理を作り戦闘経験豊富なのがうちのマドンナ、ヴァレッサさ」


ヴァレッサと名のられ、暖簾から顔を出す1人の女性。体格は、カムラより筋肉モリモリではなく痩せているが。

何だか威厳のある女性だった。


「おっと、試作品を食べさせたのか」

「おう」

「美味しかったようで何よりさ」


ブラストは、何も言わずにがつがつとそれを食べ続けている。

ヴァレッサは、アーシュとブラストを見つめた後、カムラを見つめ


「彼らなら良いかもしれないね」

「ああ、勿論俺も思っていた」


というと、2人はこう告げる。


「ようこそ、『ウラフェルカムラ』へ。お前らは今日からこの世界樹での専用宿屋だ」

「あたいの料理を旨いといってくれた君たちは……今日から仲間だ。といっても冒険者の正式登録とギルド名を決めてくれなきゃね」


(まさかの専用宿屋??? どうしてこうなった…。まあ、正式に認められたらか)


「その申出ありがとうございます。じゃあ、正式登録した際は専用宿屋として登録しますね」

「うむ、それでいい。おっと、あたいは夕食の準備をしに迷宮行ってくる」

「行ってらっしゃい」

「ああ」


とヴァレッサは、入口においてあった大剣を背負い鞄をぶら下げ出ていった。


「じゃあ、ごゆっくり」


カムラも部屋を出ていき僕達と眠っているお嬢様だけが残る空間に、

ブラストは鼻で笑うと


「これで、当面の宿屋代食費全部浮いたな」

「何を、見抜かれたのか分からないけど」

「さあ? 何を見抜いたのかは分からないが悪い奴だったら、潰そうな」

「多分それはない。悪い感じはしなかったし」


 料理を食べ終えると、その料理を返却口と書かれた場所へ置き、眠りしお嬢様の目覚めを待つ事になった……。その間に、ブラストは昨日泊まった宿屋に赴き鞄を取りにいったりして時間を過ごす。こっちは、早速暇なので…宿屋の手伝いとして洗い物などの雑務をこなして過ごした。だって、暇だったからな。後はお嬢様がベッドから落ちないかの見守る、それくらいだ。

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