第6話 幼竜(メス)が美少女だった件

とんでもなくフザけた通販サイトだ。


子供を送り届けてくるなんて、どうかしている。


とにかく、返品だ!


いや、クレームの一つも入れてやらないと!!


『返品は商品が破損している等の理由がない場合はお受け出来ません。ご了承下さい』


ふざけるな!


こういうときは、カスタマーセンターに……。


『龍神様へチャット』


なんだ、これ?


とりあえず、押してみよう。


入力バーが現れた。


ここに入力すればいいんだな。


『子供が誤って送られてきました。すぐに返品の手続きをして下さい』と。


すぐに返事が来た。


『子供ではない。幼竜じゃ』


随分と軽い返事だな。


だが、訳がわからない。


なんだよ、幼竜って。


『意味が分かりません。とにかく返品をお願いします』と。


『イヤじゃ』


このやろう!


『幼竜を飼うつもりはありません』と


『すでにお前さんと繋がってしもうたから無理じゃ』


本当に何なんだよ。


クイクイ……。


なんだ?


「どうした?」


「お腹、空いた」


……くそっ!!

 

ピコッ!


『食べさせたら、絶対に返品不可じゃよ(笑)』


フザケたことを!


「ねぇ、お腹、空いたよぉ」


……なんなんだよ、これ。


そんな顔で見られたら……。


ちくしょーーーっ!


「何が食いたいんだ!! 言ってみろ」

「お肉」


ちくしょーーーーっ!!


いい肉、あるぜ!!


「ステーキでいいんだろ?」

「ぺっこぺっこ」


くっそぉーーーなんて、可愛い顔をしやがるんだ!


子供を抱き上げて、厨房エリアへ。


すぐに鉄板に火をおこした。


冷蔵庫には……ブロックの牛肉がある。


結構、奮発して手に入れた肉だ。


ドラゴンさん用に取っておいたものだが……。


まぁ、他のものでも喜んでくれるからな。


まな板の上にブロックを乗せる。


特上の国産牛だ。


通販サイトで手に入ったのは本当に運がいい。


すっと包丁を入れると、脂身がプチプチと潰れていく。


「サシがいいな。これは食ったら、美味いぞ」


いい肉は塩、胡椒だけで十分な気もするが……。


相手は子供だ。


焼いただけのステーキだと食べないかも知れない。


そういえば、ビーフシチューのルーがあったはずだな。


肉が上等だから、煮込まなくても十分に柔らかいはずだ。


細かく刻んだ玉葱をルート一緒に煮込む。


添えつけはジャガイモ……。


「人参は食べられるか?」

「なに、それ?」


知らないのか……。


まぁいい、食べられなかったら、俺が食えばいいんだ。


子供は栄養を取らないとな。


グリルでじっくりと焼いた人参とジャガイモを用意した。


うん、十分に柔らかいな。


大きめの皿にビーフシチューを流し入れ、サイコロ状にしたステーキを入れる。


最後に焼きめの付いたジャガイモと人参を添えれば、完成だ。


「ビーフシチューだ。熱いから、ゆっくり食べるんだぞ!!」

「うん」


はぁ?


一気に流し込みやがった。


「どうだ?」

「おかわり」


お?


なんだか、ドラゴンさんと同じ香りがする食べっぷりだな。


「あいよ」


……全部、食っちまいやがった。


「美味かったか?」

「もっと、食べたい」


……。


「リンゴでも食べるか?」

「うん。食べる」


うさぎの耳になるように包丁で細工を入れた。


喜んでくれるかな?


ああ、見もせずに食べちゃうんだな。


「美味しかった」

「そうか。それは良かった」


ん?


なんだか、運転席のほうが賑やかだな。


……。


すごいチャットの量だな。


『これで幼竜はお主のものじゃ!!』

『可愛がってやるんじゃぞ』


……。


くそっ!!


俺は幼竜を手に入れてしまった。


くいくい……。


「お腹、空いたぁ」


こいつ、どんだけ食うつもりなんだよ。


「なぁ、お前の名前を教えてくれないか?」


これから一緒になるんだから、名前くらいは……。


「名前、ない」


……そうか。


「じゃあ、これからは……ソラだ。どうだ?」


青い髪がまるで青空のように感じた。


「うん……」


どうして、俺をじっと見て……。


ああ……。


「俺は山川 龍海だ。タツミとでも呼んでくれ。もしくは店長……でもいいんだぞ?」


憧れだよな。店長って呼ばれるのは……。


「分かった。タツミ……」


そうだよな……。


「ねぇ、タツミ」

「なんだ?」


すぐに名前を覚えて……結構、賢いのかな?


「お腹空いた……」


そればっかりだな。


朝食をソラと一緒に摂りながら、これからの事を考えていた。


犬や猫ならなんとかなると思うんだけど……。


幼竜って言っても、人だろ?


子供なんて、どうすればいいんだよ。


そもそろも俺は一人っ子だし、独身だから、子供なんてずっと相手にしたことなんてないんだよな。


見れば見るほど、可愛い顔しているなぁ……。


将来はきっと凄い美人になりそうだ……。


「まだ、食うか?」

「うん」


ずっと食べているなぁ……。


本当にドラゴンさんからもらった金貨がなかったら、どうなっていたことやら。


あとで改めて、お礼を言ったほうが……


ドスン!


いいタイミングだな。


「すみません、まだ、仕込みが終わっていなくて……ちょっと待ってもらっても?」


ドラゴンさんの様子がいつもと違う。


なんというか……怖がっている?


「な、な、な……」


なんだろう?


「なぜ、ここにこれがいるのだァァァァァ!!」


何が、どうなっているんだ?


尻もちなんてついて……腹でも壊しているのか?


まぁ、毎日、あんだけ食ってんだ。


体調の一つくらいは崩すよな。


「なぁ、ドラゴンさん。今日はハーブティーを飲んでいくといい。整腸作用があるからな」


「何を言っているんだ? こいつだ!!」


ソラを指差して……。


大の大人が……。


「あのドラゴンさん。子供が怖がるので、そういうのは止めてもらってもいいですか?」


ドラゴンさんでも、こういう事は許せないかな。


最初にちゃんと言っておかないと。


「暴竜王の娘がなんで、ここにいるんだ!」


……は?


「わ、我は帰る!!」


行ってしまった。


一体、何があったんだ?


「ソラ?」

「ん?」


そりゃあ、ぽかんとした顔になるよな。


僕はその日、『商品注文』の検索バーに入力した。


『暴竜王』


『条件に合致する商品は100件です』


めちゃくちゃ品揃えがいいな。


大抵はフィギュアだったり、カードだったりしたが……。


その中に『暴竜王大全』なる本を見つけることに成功した。


早速、注文確定と。


翌日、届いた本を読み耽った。


「なるほど……そりゃあ、逃げるわな」


そこには信じられないことが書かれていた。

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