締め切り前はカンヅメ!

奥田啓

締め切り前はカンヅメ!

○菅野宅

編集担当の牧原が椅子に座りながら腕組みしている 牧原進「菅野さん・・・まだ全然原稿できてないんですか?」

菅野亜季「はい・・・」

進「またですか・・・締め切り来週ですよ・・・」

亜季「すいません・・・・・」

進「毎度ギリギリですね。」

亜季「なかなか筆が進まず、へへへ」

亜希は長い髪をなびかせながら笑う 進「へへへじゃありませんよ。笑って誤魔化さないでください。せっかく女子大生作家として今注目 浴びてるんだからいまがんばらないと」

亜希の母清恵が部屋に入ってきて

飲み物を亜季と進むに渡す

清恵「ほどほどにねー」 進「だめですよお母さんあなたがあまやかしてたら娘さんだらだらとやって書きませんよ」 清恵「そんな根気詰めなくてもねえ」

清恵はぶつぶついいながらでていく

進「まったく・・・・」

亜希「すいませえーん」

進「どうせまたゲームやってたんでしょう」

亜希「正解です☆」

進「殴りたいな」

亜希「こわいやめて」

進「じゃああいつものごとくあそこいきますよ」

亜希「えーいやだー」

進は嫌がる亜希を無理やり連れて行く

◯近所のホテル

フロントにいき鍵を受け取り

部屋を案内される

進「ここで締め切りまですごしてくださいね」

亜希「いやだーここ自由じゃないじゃんやだー!」

進「こうしないとやらないじゃないですか。だからカンヅメでやってもらいますよ」 亜季「そんなあー拉致監禁だー犯罪だー若い女の子を閉じ込めるなんてー」

進「僕は仕事でやってるので。あなたもプロなんですから要求に応えないと。できたら解放します から。できればはやくでられますよ」

亜季「そんなこといっても〜」

進「いいですね、とにかくたのみましたよ」 進はそそくさと出て行く

しまったドアを見つめる亜季

するとニヤニヤし始める

亜季「よっしゃー!!!!!!」

亜希は大声を出す。

亜希「やっとこの時がきた・・・・・」

パソコンを開く

原稿データを立ち上げる。

亜希「ふっふっふ原稿なんてとっくにできてんだよね・・・」 亜希は備え付けの電話でフロントにかける


しばらくすると部屋にスーツの女性がやってくる 女性はため息をつく

遠山麻美「毎度置くの場所取るので困りますよ」

亜希「いいじゃないめっちゃお金払ってるんだから」

麻美「あなたのお金じゃないでしょ」

亜希「お金はお金じゃんほらはやく」

おおきめのダンボールが姿を現し それを亜希は受け取る

亜希「ありがとー」

麻美「いい加減倉庫とか借りたらどうですか?」

亜希「それだとばれちゃうんだよ」

麻美は呆れた顔をして出て行く。

彼女が出て行くとたんボールに目が映る。

亜希「へへへ・・・・これこれ!

ダンボールの中にはたくさんの缶詰がはいっている

亜希「この密閉空間の食べ物は外の世界とちがって時間がゆっくり流れている。 それを開け、時間が取り戻される食べ物のタイムカプセル・・・このワクワク これが最高なんだよな・・・・」

亜希「家だと怒られるからこのホテルで閉じ込められてる時だけが缶詰をたくさん楽しめる最高の 至福カンヅメタイム!」

誰かに語るように喋り続ける

亜希「牧原さんにはわるいけどなあ。まさか私が筆がじつは早いなんてしらないだろうなあ。原稿 なんなら言われる2週間前にはできてたし」

亜希は缶詰の箱をみながら目を輝かせている

亜希「今日はなにしようかなあ」

なにげなくテレビをつけてると お昼のバラエティー番組で新しくできたチェーン回転寿司の特集をやっていた

亜希「へーお寿司かーいいなあ・・・・」

しばらくテレビを見つめるとハッと気がつく

亜希「あっそういえば!」

ダンボールの中を探る

亜希「あった!」

取り出した小さな箱。そこにはお寿司の缶詰セットと描いてある。 亜希「まさか缶詰で寿司が食べられる時がくるとはなあー」

亜希は感心している

シャリ缶とかいてあり味は鯛。

開けて見ると鯛の匂いが広がる

亜希「おほほー!シャリは玄米なんだ!白飯より玄米の方が長持ちだもんなあ味つけはどうなっ てるんだろう・・・どれどれたべてみるか」

鯖と玄米を合わせて食べてみる

亜希「おー!シャリに味がついてる!醤油いらないんだ。すごいなーおいしい!」

他の缶詰にはうなぎもある

亜希「おっうなぎもある。うなぎの寿司ってのも新鮮だなあ」

骨がなくて柔らかい・・・ホロホロしてる。缶詰の魚ってなんか缶詰でしか出ない味みたいなのが あっていいなあ普通のうなぎより食べやすい」

亜希「ふー食べたー」

ベットで寝転ぼうとしたらうなぎ寿司缶詰を手に引っ掛けて床にこぼしてしまった 亜希「あっやば!」

床がうなぎのつゆがこぼれてしまった

亜希「遠山さん呼ぶかー」

フロントに電話をかける

麻美「ちょっとなにしてるんですか・・・」

亜希「ごめんなさーい」

申し訳なさそうなポーズをする亜希。

麻美「前もこぼしてましたよね。作家って手元が緩いんですか?」

亜希「そうかもねー♪」

麻美は亜希を睨む

亜希「ごめんなさい」

亜希「おこらないでいいものあげるから」

亜希はダンボールの中をゴソゴソする

麻美「缶詰だったらいいですよ別に・・・・珍しい変な缶詰とかいらないですよ。」 亜希「甘いものすきでしたよね遠山さん」

麻美「はあまあそうですが・・・」

亜希「じゃあこれ!」

亜希は麻美に笑顔を向ける

缶詰を差し出す

麻美「これは?」

亜希「ガトーショコラ!」

麻美「くっ・・・・・」

亜希「ほらー食べたいでしょー」

麻美「いやっ・・・・くっ・・・勤務中だし・・」

亜希「へーたべないんだー」

ニヤニヤしながら缶詰を開ける。 中には黒くしっとりしたガトーショコラが顔を出す。

亜希「あーこんなにおいしそうなのに・・・」

麻美「缶詰にはいったガトーショコラとかしっとりがきーぷできるわけない・・・」 亜希「あったべてもないのにそんなこといってじゃあ私食べちゃうよ」

亜希はガトーショコラを口にはこぼうとしたとき

麻美「たべます!」

亜希「最初からすなおになればいいのに」

亜希は笑いながら言う 亜希にガトーショコラを渡されそれをみながら喉を鳴らす

麻美は一口食べる

麻美「おいしい・・・・」

麻美「ちゃんとしっとりしてる・・・」

亜希「缶詰なめんなよー」

亜希は得意げに言う

亜希「完全に密閉だからここは時間が止まるんだよそれが缶詰マジック」 麻美「悔しい・・・・でもおいしい・・・これうちでも頼もうかな・・・」 亜希「おやお気に召しました?」

ニヤニヤしながら麻美を見る亜希

麻美はハッする

麻美「床を片付ける布巾もってきます」


麻美は外に出て行く。

亜希「へへへ・・・缶詰は全ての人に刺さるものがあるなあ」

○次の日

亜希「やばいもう缶詰無くなった・・・2週間分はあったはずなのに・・・ 買いに行きたいけど牧原さんの許可なく外に出られない・・・・早いけど牧原さんに言うか」 電話をする

亜希「もう原稿おわりましたよ」

牧原「もうおわったんですか!?はやいですね。いつもこんな感じでやってくれればいいのに」

亜希M「わりとこの生活だと買いに行けないから不便だな・・・・」

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