第7話 目覚め

肌寒さを感じ目を覚ました。目を開けると、自室では無い天井があったがどこか見覚えがあった。

一瞬混乱するも、名前も知らない少女に看病されたこと、若いイケメンのお医者様らしき人に診察されたことを思い出した。

自分が吐いた吐血のことも。

思い出すだけでゾッとする。なぜあんなに血が出たのだろう。少し考えただけで背筋が凍りつき、体温が下がっていくのを感じた。


「んぅ…」


不意に横から甘い声が聞こえ、心臓がドキンと跳ねた。

声のする方へ首を動かすと可愛らしい少女が眠っていた。長い黒髪はカーテンの様に広がっていて、腰の辺りまで伸びている。肩にはブランケットが羽織られており、彼女が寝息を立てるのと同時にブランケットが小刻みに動く。

ベットに両腕を置き、枕のようにして眠っている彼女はどこか疲れているのか少し顔色が悪い。机の上には空になったサンドイッチの袋と半分ほど中身の入ったカフェオレが置いてあった。

窓の外を見ると、まだ薄暗いが朝日が昇り始めていて、少しずつ周りが明るくなっていた。

もう一度彼女の方をチラリと見る。彼女は先程と一緒で一定のリズムで可愛らしく寝息を立てていた。

もしかするとずっとここに居てくれたのだろうか?朧気おぼろげな記憶しかないが、確かに彼女から手厚い看病を受けていたはずだ。看病してくれたのが本当に彼女だと断言は出来ないが、こんなに綺麗で可愛い女の子を見間違えるはずは無い。と思いたい。

すぅ…すぅ…と寝息を立てる彼女に見惚れていると、無意識のうちに右手が動き…


彼女の頭を撫でていた。

彼女の髪の毛はサラサラで指を通すと絡みつくことなく流れていった。

「んっ…」

頭を撫でられたのが気持ち良かったのか、もっと撫でてと言うように幸せそうな顔をした。

そんな彼女を見ると微笑ましくなり頭を撫で続け彼女が起きるまでじっくり堪能した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る